懲戒解雇と普通解雇の違い

普通解雇か懲戒解雇か

「会社から解雇されそう(解雇された)!」などというときに、それが「普通解雇」なのか、それとも「懲戒解雇」なのかを意識することはあまりないかもしれません。

しかし、懲戒解雇と普通解雇は質的に大きく異なるものですので、両者の違いをしっかり意識する必要があります。

懲戒解雇というのは、懲戒、つまり特定の行為に対する「制裁」として行われる解雇です。

懲戒には減給や停職など、様々な種類がありますが、その中で一番重いのが懲戒解雇です。

これに対して、普通解雇は、別に労働者に「制裁」を与えるためではなく、成績不良や適格性の欠如等を理由に雇用契約を終了させようとするものです。


制裁として行われることから要請される原則

普通解雇についても客観的合理的な理由や社会通念上の相当性がなければ無効となる(労働契約法16条)という制約がありますが、懲戒解雇も「制裁」として行われるという観点からの制約が働きます。

労働契約法15条は、会社が労働者を懲戒する場合について

当該懲戒が、懲戒にかかる労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする

と定めています。

このように懲戒解雇は、あくまでも「制裁」として行われることから、例えば

・行為の後に制定された就業規則の懲戒事由に基づいて懲戒することはできない

・過去に懲戒の対象とした行為について、重ねて懲戒の対象とすることは出来ない

・処分の重さは、行為の内容、程度に照らして相当なものでなければならない

・処分前に本人に弁明の機会を与えなければならない

といった要請が働くことになり、こうした原則が守られない場合には権利の濫用と判断されることになるのです。

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普通解雇としては有効?

懲戒解雇は罰としてなされる処分であることから、これが有効となるためには、一定の高いハードルが科されます。

そのため、会社側が、当初、懲戒解雇として解雇処分を行ったにも関わらず、後で、懲戒解雇では有効性を根拠づけることはできないと考えて、「懲戒解雇としては無効でも普通解雇としては有効である」との主張がなされる場合があります。

このような主張が許されるのかについては、様々に議論されているところですが、これを許さないとした近年の裁判例として平成20年6月10日東京地裁判決をみてみます。

このケースは、合成樹脂加工製品の製造販売等を業とする会社で営業課長として働いていた従業員が懲戒解雇され、その有効性が争われた事例です。

裁判の中で会社側から懲戒解雇としての有効性だけではなく、普通解雇としての有効性も主張されたため、懲戒解雇として行った解雇を普通解雇として有効にすることが可能なのかという点が問題となりました。

予測機能

この点について、裁判所は、まず、

「懲戒処分,とりわけ労働者から従業員の身分を奪う懲戒解雇においては,懲戒規定の罪刑法定主義的機能は重視されるべきである」

と指摘しています。

「罪刑法定主義的機能」という小難しい言葉が使われていますが、これは、要するに、どのような行為に対してどのような罰が下されるのかを懲戒規定で定めておくことによって、あらかじめどのような行為に対してどのような不利益が課されるのかを予測できるようにしておくことが大切であるということです。

懲戒解雇と普通解雇の違い

続いて、裁判所は、懲戒解雇の場合は、その有効性が裁判上で争われた際に、解雇時に明らかにされた解雇理由があるのかどうかという点だけが問題となるのに対して、普通解雇の場合は、(特定の行為ではなく)労務を適切に提供できない状態全般が問題となるという点で違いがあることを指摘しています。

そして、このような点に照らすと、懲戒解雇に普通解雇を含むという解釈することはできないとして、懲戒解雇に普通解雇の意味が含まれているという会社の主張を退けました。

懲戒解雇と普通解雇の質的な違いを考えると、やはり、懲戒解雇として解雇しながら後になって普通解雇としての有効性を主張するなどということは許されるべきではありません。

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