副業・兼業禁止規定違反となるのはどのような場合か

厚生労働省のガイドラインとモデル就業規則の改定

サラリーマンを勤めながら、他に副業・兼業による収入源を持つ場合があります。

厚生労働省が作成したかつてのモデル就業規則では「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という兼業禁止の規定が置かれていました。

しかし、平成30年1月に、副業・兼業の促進に関するガイドラインが出され、「原則副業・兼業を認める方向とすることが適当である」とされました。あわせて、モデル規則からも兼業禁止規定が削除されています。

もっとも、多くの会社の就業規則では、まだ兼業禁止の規定が置かれています。

私がこれまで扱ってきた相談事例でいうと、実際上問題視されてこなかったささいな副業や兼業でも、他で何かトラブルが起きたときに、兼業禁止違反として持ち出されるようなケースがあります。

また、在職中の競業行為との関係で、この兼業禁止違反が問題となるケースもあります。

このような兼業禁止規定を巡って争われたいくつかの裁判例を見てみたいと思います。

兼業の許可性とアルバイトの不許可

まず採り上げるのは、運送会社でトラック運転手として働く労働者が、他にアルバイトをすることの許可を複数回申請したにもかかわらず不許可が繰り返されたことから、会社に対して損害賠償を請求した事案(平成24年7月13日京都地裁判決)です。

この労働者は、許可なくアルバイトをしたことを理由に減給や出勤停止の懲戒処分を受けたことから、アルバイトをすることの許可を求めるようになったのですが、これを会社は全て認めなかったのです。

裁判所は、まず兼業禁止について

  1. 労働者は、雇用契約の締結によって一日のうち一定の限られた勤務時間のみ使用者に対して労務提供の義務を負担し、その義務の履行過程においては使用者の支配に服するが、雇用契約及びこれに基づく労務の提供を離れて使用者の一般的な支配に服するものではない
  2. 労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許さなければならない
  3. もっとも、労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許される
  4. としました。

    そして、兼業を許可性とすることは許されるが、

  5. (兼業の許可にあたっては)使用者の恣意的な判断を許すものでないほか,兼業によっても使用者の経営秩序に影響がなく、労働者の使用者に対する労務提供に格別支障がないような場合には、当然兼業を許可すべき義務を負う

としています。

そして、申請されたアルバイトのうち、午前8時30分から午後0時まで、あるいは、午前1時から午前5時までの構内仕分け作業については、過労防止の観点から不許可にしたことについて合理性が認められるのに対して、日曜日(休日)の午前10時から午後2時までの構内仕分け作業や、同じく日曜日午後6時から午後9時までのラーメン店でのアルバイトについては、不許可としたことに正当な理由はないとしました。

休日に働くことに関しては、労務提供に格別支障が出るかどうかを具体的に検討すべきという点が指摘されています。

なお、本件では兼業禁止違反を理由に懲戒処分が出されていますが、懲戒処分がどのような場合に許されるのかについては次の記事も参考にしてください。
懲戒解雇理由~どんなときに懲戒解雇が許されるか

懲戒解雇理由~どんなときに懲戒解雇が許されるか

2012.06.19

競業行為と兼業禁止

もう一つ採り上げるのは、競業避止の観点から兼業禁止規定違反が問題となったケース(大阪地裁平成27年8月3日判決)です。

このケースは、主に医師を顧客とする求人・転職紹介事業を営む会社が、元従業員に対して、退職の前後において従業員の引き抜きや競業行為を行ったとして損害賠償を求めた事案です。

この会社の就業規則では、「会社の許可を得ずに,他人に雇われもしくは他の会社等の役員に就任し,会社に不利益を与えたり,秩序を乱すような行為をしないこと」という服務規律がさだめられていました。

一方、元従業員が退職前に行った行為としては、退職日の約3ヶ月前に同種の事業を目的とする会社を設立して、その代表取締役となるとともに、会社の顧客に対する営業を行う等していました。

裁判所は、兼業禁止について

  1. 労働時間以外の時間をどのように利用するかは、本来労働者の自由であるから、兼職は労働者の自由であるのが原則である
  2. 他方、労働者は、使用者に対し、労働契約上、労働時間外においても誠実義務を負っており、兼職についても一定の制約があることは免れない
  3. したがって、兼職許可制は、使用者の正当な利益を確保する限度で有効であると解すべきであるから、兼職の態様や期間等からみて本来の業務に支障を生じさせる可能性がある兼職や、競業他社で就労したり役員に就任したりするなど企業秩序を著しく乱すような兼職のみが許可制違反に該当するというべきである

としました。

そして、元従業員が在職中に設立した会社は、原告会社と競合関係にある会社であり、しかも、元従業員は、設立当時、原告代表者に次ぐ地位にあったことかから、設立行為及びその代表取締役に就任する行為、在職中に行った営業行為等は、原告会社の企業秩序を著しく乱すものとして兼業を許可制とした就業規則に違反すると判断しました。

なお、本件では、退職後の競業避止を定めた就業規則や誓約書違反も問題とされていますが、これらについては、退職する労働者の職業選択の自由を不当に制限するものとして無効と判断されています。このような退職後の競業避止の問題についてはこちらの記事もご覧ください。
退職後の競業避止義務~誓約書は拒否できるか

また、在職中の競業行為についてはこちらの記事も参考にしてください。
退職の挨拶と在職中の競業避止義務

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