解雇・懲戒解雇された場合に失業保険をもらえるか

失業保険(雇用保険)による基本手当の支給は、退職した労働者の求職中の生活を支える給付として大変重要な意味があります。

会社から解雇や懲戒解雇すると言われている場合、あるいは、実際に解雇や懲戒解雇されてしまった場合には、果たして失業保険をもらえるのだろうかという不安を感じると思います。

ここでは、そんな解雇・懲戒解雇された場合の失業保険の問題について解説していきます。

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解雇と特定受給資格者

失業保険の基本手当は、退職した労働者が失業中の生活を心配しないで求職活動できるようにするために支給されるものですが、通常、これを受給するためには、離職の日以前の2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上あることが必要となります(雇用保険法13条1項)。

しかし、「特定受給資格者」と呼ばれる一定の条件を満たす人については、離職の日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば足ります(同法13条2項)。

また、特定受給資格者については、基本手当の支給を受けることの出来る日数についても、一般の離職者と比べると手厚くなっています(同法23条1号)。

そして、この特定受給資格者に該当する場合の一つとして、「解雇等によって離職した者」が挙げられています(同法23条2項2号)。

つまり、解雇された方については、再就職の準備をする時間的な余裕もなく離職するに至っていることから、このような手厚い保護が図られているのです。

自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇の場合の例外

もっとも、ここで重要になるのは、特定受給資格者に該当するための条件として「自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く」とされている点です。

つまり、自己の責めに帰すべき重大な事由によって解雇された場合には、特定受給資格者には当たらないのです。

さらに、もう一つ重要なのは、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合には、3ヶ月間、基本手当の支給が受けられないとされている点です(雇用保険法33条1項)。

このように、解雇によって離職した場合には「特定受給資格者」として手厚く保護される一方で、それが自己の責めに帰すべき重大な理由によるの場合には、特定受給資格者には当たらず、また3ヶ月間の給付制限を受けることになるのです(なお、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇の場合であっても、給付が受けられなくなるわけではない点も注意が必要です。)

そこで、どのような場合に「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」になるのかが大きな問題です。

この点について、厚生労働省が出している「雇用保険に関する業務取扱要領」では次のように定められています。

  1. 刑法の規定に違反し、または職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合
  2. 故意又は重過失により事業所の設備又は器具を破壊したことによって解雇された場合
  3. 故意又は重過失によって事業所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによって解雇された場合
  4. 労働協約または就業規則に違反する次の行為があったために解雇された場合
  5. ・極めて軽微なものを除き、事業所内において窃盗、横領、傷害等刑事犯に該当する行為があった場合
    ・賭博等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす行為があった場合
    ・長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
    ・出勤不良または出欠常ならず、数回の注意を受けたが改めない場合
    ・事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合
    ・事業所の名をかたり、利益を得または得ようとしたことによって解雇された場合
    ・他人の名を詐称し、または虚偽の陳述をして就職をしたために解雇された場合

このような場合に、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇とされるのです。

したがって、解雇あるいは懲戒解雇された方は、上のような場合に当たらないかをチェックしてみてください。

解雇あるいは懲戒解雇されたら・・・

結局、冒頭の「解雇・懲戒解雇された場合に失業保険をもらえるか」に対する答えとしては、「もらえる。ただし、一定の場合には、特定受給資格者としての手厚い給付が受けられなかったり、3ヶ月の給付制限を受けることがある」ということになります。

なお、このように離職理由については、所定給付日数や給付制限(待機期間の長さ)に大きく影響を与えるものですので、会社からもらう離職票については、漫然とそのままハローワークに提出することのないように、内容をよく確認するようにしてください。

そして、会社が記載した離職理由に異議がある場合は、異議を記載する欄にきちんとその旨を記載し、また離職理由についても該当するものに正確に○をつけることが大切です。

そもそも解雇や懲戒解雇が有効かという問題ももちろんあります。
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