「突然、“明日から来なくていい”と言われた…」
即日解雇は、精神的にも大きなショックを受ける出来事です。何が起きたのか理解できないまま、頭が真っ白になってしまう方も多いでしょう。
ですが、慌てる必要はありません。
たとえ突然の解雇であっても、労働者には法律で守られた権利があります。会社側に正当な理由がない場合、解雇は無効とされる可能性もありますし、「解雇予告手当」や未消化の有給休暇についても重要なポイントです。
この記事では、即日解雇を受けたときにとるべき対応や確認すべきポイントについて、詳しく解説します。
慌てて行動して後で後悔することのないようよくお読みいただき、適確な行動につなげていただければと思います。
即日解雇を口頭で言われたら?まず確認すべきこと
即日解雇を書面で告げられる場合もありますが、単に口頭で「明日から来なくていい」とだけ言われる場合もあります。
そんなとき真っ先に口にすべきなのは次のセリフです。
「それは、解雇ということですか」
「明日から来なくていい」といわれて、「はい、分かりました」とだけ言って帰り、翌日から出社しないというパターンの場合、後日、解雇の効力や解雇予告手当の支払いが問題になった段階で、会社から「自分で辞めていっただけ」と主張される危険性が非常に高くなります。
したがって、まずは、解雇なのかどうかをきちんと確認するのです。
会社が「解雇ではない」と答える場合、あるいは解雇かどうかをはっきり言わない場合には、「では、今までどおり働きます」と言って、そのまま働き続けましょう。自分で勝手に「これは解雇」と判断して出社しなくなるのが一番危険です。
会社が「解雇ではなく、自分から辞めてほしいということ」と言うのであれば、きっぱりとNoと言いましょう。このような退職勧奨も限度を超えれば違法な行為になります。(退職勧奨については、退職勧奨を断っても大丈夫?違法になるケースと正しい対処法を解説で解説しています)
一方、会社が「解雇」と答えるのであれば、さらにこう言いましょう。
「では、解雇通知を書面で下さい。解雇理由も書面で出してください。」
つまり、あとで、会社が「解雇などしていない。自分から辞めただけ」と主張することがないように書面を出させることで明確にしておくのです。
解雇理由について書面で説明することは法律でも義務づけられています。(詳しくはこちら≫解雇理由証明書とは何か~請求方法からもらえない場合の対応まで)
「書面を出せ」といわれると、「いや、そういうことではなくて・・・」と途端に弱気になる会社もあります。その場合は、上と同じで、「では、今までどおり働きます」と言って、そのまま働き続けましょう。
解雇予告手当はもらえる?即日解雇と支払いの関係
解雇予告手当という言葉が一般にも知られるようになり、「解雇でも1ヶ月分は給料が保証されるらしい」→「それなのに、突然解雇されて給料ももらっていない」→「不当だ!」という形で、お怒りになられる方がいます。
しかし、一番の問題はそこではありません。
そもそも解雇自体に効力がない(無効である)可能性が十分あるのです。
解雇は会社の一存で決められるものではなく、客観的合理的理由や社会的相当性がないと無効となります(詳しくはこちら⇒その解雇、無効かも?許される解雇理由と認められないケースを徹底解説)
解雇自体に効力がないのであれば、「働けないのは、働くことを拒んでいるの会社の責任」→「働いていない期間も給料は全額払うべし」という理屈で、1ヶ月分どころか、働けない全期間の給料を会社は払い続けなければならないのです。
例えば解雇に関する争いが1年続き、1年後にようやく職場復帰したというのであれば、その1年分の給料を会社は払わなければならないことになります。
したがって、解雇予告手当について考える前に、まず考えなければならないのは、解雇が有効なのかどうかです。
会社に請求して出してもらった解雇通知と解雇理由証明書を持って(出してもらえないのであれば、無くても構いません)、解雇が有効かどうかを知るために速やかに弁護士のところに相談に行きましょう。
相談先については、こちらでも解説しています。
⇒不当解雇されたらどこに相談すべき?労基署・弁護士・労組の比較と注意点を解説
解雇の効力については争わず、これを受け入れるというのであれば、ここでようやく解雇予告手当の問題になります。
解雇予告手当とは、予告無しに解雇を行う場合に、原則として会社が払わなければならない手当です。
どのような場合に解雇予告手当が必要となるのかや、具体的な請求方法については、次の記事を参考にしてください。
⇒解雇予告・解雇予告手当とは?|必要な場面・例外・計算方法・請求手順を弁護士が解説
即日解雇と有給休暇|残っている有休は使える?
「即日解雇されたが、残った有給休暇は使えないのか」というお尋ねを受けることもあります。
残念ながら、有給休暇は雇用契約が継続していることが前提で使うことができるものですので、即時解雇が有効で雇用契約関係がすでに終了しているのであれば、当然のことながら、いくら有給休暇の日数が残っていてもこれを使うことはできません。
もっとも、ここでも「解雇が有効ならば」ということですので、大事なのは解雇の効力、すなわち、解雇の客観的合理的理由と社会的相当性の有無です。(なお、たとえ解雇予告手当が支払われていなくても、解雇予告手当が支払われていないことだけで即日解雇が無効になるわけではありません)
そして、解雇が無効の場合は、上で説明したように、会社は労働者が働けなかった全期間の給料を払わなければなりませんので、有給休暇を使う必要はいずれにしてもないことになります。
したがって、残った有給休暇が気になるという場合には、そもそも解雇自体を争う余地がないかをよく考えていただく必要があります。
不当な解雇でお困りの方へ
不当な解雇に対してどう対応すべきかは、具体的な事情によっても変わってきます。ご自身の状況に照らして、今何をすべきかを知りたい方は、一人で悩まず弁護士にご相談ください。
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解雇の効力が争われた具体的な事例を知りたい方へ
「解雇されてしまった」「解雇されるかもしれない」
そんなとき、今後の行動を考える上では、実際の裁判例で解雇の効力についてどのような判断されているのかを知ることは大変役立ちます。
近年の解雇裁判例を解雇理由等から検索できるようにしました。ご自分のケースに近いものを探して、参考にして頂ければと思います。
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