解雇や懲戒解雇されることのデメリットは何でしょうか?という質問を受けることがあります。
例えば、会社から「自主退職をしないなら、解雇(懲戒解雇)にするけれど・・・」と言われ、自主退職すべきかどうか悩んでいるような局面です。
解雇や懲戒解雇になると聞くと、なんとなく不安ばかりが膨らんでしまいますね。
ここでは、そんな解雇や懲戒解雇されることのデメリットは何かという問題を、改めて考えてみたいと思います。
再就職にあたって不利に働く
解雇や懲戒解雇によって退職し、かつその効力を争わない場合に生じる一番大きなデメリットは、再就職の問題です。
前職で解雇された、あるいは、懲戒解雇されたということが分かれば、多くの会社は採用を見送るでしょう。
かといって、退職理由を偽ったり、職歴そのものを隠したりすると、後でそれが発覚した場合に、そのことを理由に懲戒処分を受ける可能性も生じてきてきます。(こうした問題について詳しくはこちら≫懲戒解雇歴を履歴書に記載すべきか)
このように解雇あるいは懲戒解雇された場合には、再就職にあたって不利に働くというデメリットがあります。
退職金の不支給・減額
次に、会社によっては、労働者側の事情による解雇や懲戒解雇の場合には退職金を不支給あるいは減額するという規定が設けられています。
自分の会社ではどうなっているか分からないという場合は、就業規則の退職金規程をよく読んでみましょう。
退職金の不支給や減額規定がないのであれば、こうした問題は生じません。
また、就業規則で、例えば懲戒解雇の場合には退職金を全額不支給とすると定められている場合でも、当然にその文言どおり不支給とできるわけではありません。
なぜなら、退職金は、一般に賃金の後払いとしての性格も持っており、場合によってはこれを全額不支給とすることが不相当な場合もあるのです。
したがって、仮に懲戒解雇が有効だとしても、このような規定に従って退職金を全額不支給とすることが当然に許されるとは限らない点に注意が必要です。(この問題について、詳しくはこちらの記事をご覧ください≫解雇や懲戒解雇時の退職金はどうなるか)
失業保険給付に関する取り扱い
失業保険との関係では、解雇で職を失ったということになると「特定受給資格者」として給付期間等の点で、自ら辞めた場合よりも優遇されます。
ただし、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」の場合には、特定受給資格者としての優遇は受けられず、また、3ヶ月間の給付制限を受けることになります。(この点について詳しくはこちら≫解雇・懲戒解雇された場合に失業保険をもらえるか)
もっとも、だからといって「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」が嫌で自己都合退職をしたとしても、特定受給資格者としての優遇は受けられず、また3ヶ月間の給付制限を受ける点では変わりませんので、この意味ではデメリットがあるとはいえません。
まとめ
こうして見ていくと、やはり一番大きいのは、再就職の問題です。そして、就業規則に退職金の不支給や減額規定があり、勤続期間が長く退職金の額が大きい場合には、加えて退職金の問題も大きな問題となってきます。
解雇や懲戒解雇をちらつかされると、不安ばかりが大きくなってしまいますが、忘れてはならないのは、会社の側も解雇や懲戒解雇に踏み切った場合に、それが後で無効となるリスクを恐れているという点です。
言い換えれば、こうした場面で会社が自主退職を勧めるというのは、リスクを最小限にしたいからです。解雇や懲戒解雇が有効にできると自信があるのであれば、直ちに解雇に踏み切れば足りるのですが、効力を争われ後に無効となることを恐れるからこそ、自主退職をさせようとするのです。
このような退職勧奨の問題については、こちらで解説しています。
⇒退職勧奨を断っても大丈夫?違法になるケースと正しい対処法を解説
解雇や懲戒解雇になる不安から自主退職をしようと考えている場合には、そもそも解雇や懲戒解雇が可能かという観点から、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
どのような場合に、解雇や懲戒解雇が許されるのかについては、次の記事で解説していますので、ご覧ください。
⇒その解雇、無効かも?許される解雇理由と認められないケースを徹底解説
⇒懲戒解雇されそうなときに知っておきたい法律知識と今すぐできる対処法
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不当な解雇に対してどう対応すべきかは、具体的な事情によっても変わってきます。ご自身の状況に照らして、今何をすべきかを知りたい方は、一人で悩まず弁護士にご相談ください。
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⇒不当解雇トラブル完全ガイド|判断基準・対処法・相談先まとめ
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