契約社員は途中退職できるのか

雇用契約には、期間の定めのある契約と期間の定めのない契約とがありますが、このうち期間の定めのある契約を結んで働いている方のことを一般に契約社員と呼びます。

契約社員は、期間が定められている以上、期間途中で会社から解雇することは、一般の解雇の場合と比べても厳格な制約を受けます。(≫契約社員と解雇~契約期間途中での解雇は許されるか

一方で、契約社員の方が、契約期間の途中で自ら退職したいと考える場合があります。

定められた期間に反して退職することにはなるため、そもそもこのような退職が可能なのか,会社から文句を言われたらどうすれば良いのか、気になるところだと思います。

ここでは、契約社員が期間の途中で退職することが可能かという問題について解説していきます。

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合意解約による終了

期間の定めのある雇用契約で労働者は途中退職できるのでしょうか。

期間が定められている以上、その期間については、雇用契約が継続し、労働者は働かなければならいないのが原則ではあります。

しかし、契約が期間途中で終了するいくつかの例外もあります。

まず、当然のことではありますが、労働者と使用者との間で、雇用契約を期間途中で終了させることについて合意が出来るのであれば、問題なく契約は終了することになります。

つまり、労働者の側から退職を願い出て、会社が「分かりました」と了解さえすれば、契約は期間途中で終了し、労働者は途中退職できることになります。

途中退職を考える状況は千差万別ですので一概にはいえない面はありますが、期間途中で退職したい場合には、通常は、まずこの合意解約を目指す、つまり、率直に退職したいという希望を伝えて会社の了承を得る努力をすることになります。

一方的な退職は可能か

問題は、会社が「分かりました」と言わない場合に、労働者の側から一方的に辞められるのかという点です。

この点については、民法628条が、期間の定めのある契約でも「やむを得ない事由」があるときは直ちに辞められると定めています。

具体的な条文を見てみましょう。

民法628条 (やむを得ない事由による雇用の解除)
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

つまり、雇用期間の定めがある場合でも、「やむを得ない事由」があるときには、労働者の側から契約を一方的に終了させることが可能なのです。

どのような場合に「やむを得ない事由」があるといえるのか

そこで、どのような場合に「やむを得ない事由」があることになるのかということになりますが、例えば、労働契約締結の際に明示された労働条件と実際の労働条件とが異なる場合が考えられます。

この点については、労働基準法15条でも、こう定められています。

労働基準法第15条 
1 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。(以下省略)
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

したがって、働き始めた時に会社から労働条件通知書を受領していたり、雇用契約書を作成している場合には、それらに記載されたことが守られていない実態がないか、もう一度読んで確認してみることが有益です。

なお、労働条件通知書等の意味や、これらをもらえない場合にどうすべきかについてはこちらをご覧ください。
雇用契約書や労働条件通知書をもらえない場合どうするか

また、重大な労基法違反があるというような場合もやむを得ない事由があると考えられます。サービス残業が横行しているような場合がこれに該当します。

さらに、長時間労働などにより業務に従事することで生命や身体に危険が生じうるという場合も、「やむを得ない事由」があるといえます。

また、病気や怪我、あるは、近親者の看護や介護の必要により、相当期間にわたって就労不能であるということも「やむをえない事由」に該当すると考えられます。

「やむを得ない事由」が必要ない場合

上で見たように、期間の定めのある契約において,労働者の側が期間途中で一方的に辞めようとする場合には「やむを得ない事由」が必要になるのが原則ですが、「やむを得ない事由」が不要となる場合があります。

次のように、労働基準法137条によって、契約期間が1年を超える場合には、民法628条の適用が排除され、契約期間の初日から1年が経過すれば、いつでも(つまり、やむを得ない事由がなくても)辞めることが可能とされているのです。

(労働基準法137条)
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者は(略)民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

ただし、高度の専門的知識等を有する方で、その専門的知識等を必要とする業務についている方や60歳以上の方は除かれています。

高度の専門的知識等を有する方とは、例えば以下のような方です。

・博士の学位を有する者
・公認会計士や医師
・特許発明者

こういった例外にあたらない限りは、期間の定めがある契約でも、その期間が1年を超えている場合には、1年が経過すればいつでも、自由に辞めることができるのです。

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