1年契約、2年契約というように、雇用期間が当初から定められている契約を「期間の定めのある雇用契約」といいます。
一般に契約社員と呼ばれる方は、この期間の定めのある雇用契約を結んでいます。
雇用契約期間について、下限は特に定められていませんが、上限は原則3年間と定められていますので、たとえ3年より長い期間を定めた場合も契約期間は3年間になります(ただし、満60歳以上など一定の例外に該当する方の場合、上限は5年になります。)
このような期間の定めのある雇用契約について、期間の途中で会社が契約を打ち切って解雇する場合があります。このような解雇が許されるのかについて解説していきます。
なお、期間途中ではなく、期間終了時に契約を終了させる(更新しない)雇止めの問題については以下の記事をご覧ください。
また、契約期間途中で労働者が自主退職する場合については以下の記事で詳しく説明していますのでご参照ください。
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やむを得ない事由があるか
労働契約法17条1項によれば、期間の定める雇用契約で会社が解雇を行えるのは「やむを得ない事由」がある場合に限られます。
また、「やむを得ない事由」がある場合も、やむを得ない事由があることについて会社に過失がある場合は、働く人について生じた損害について賠償をする義務が発生します。
では、どのような場合に、「やむを得ない事由」があるといえるのでしょうか。
期間の定めの「ない」雇用契約においては、会社が解雇を行うためには、客観的合理的理由と社会的相当性が必要となりますが、期間の定めのある雇用契約において解雇が許される「やむを得ない事由」については、これよりもさらに限定的なものになります。
契約期間の途中で解雇するという場合は、本来、契約期間中は雇用するという約束であったにも関わらず、これを反故にして契約をただちに終了させてしまうというのですから、これを認めなければならないように特別に重大な事由がなければならないのです。
例えば、具体的な事例で見てみると、雇用期間3年として採用され、ソフトウェアの開発,保守の業務に携わっていた労働者が、採用から約8カ月が経過した時点で、会社から「景気が悪い,仕事がなくなった」などの説明を受けた後,その月をもって雇用契約を終了すると言われたというケース(平成22年1月14日東京地方裁判所判決)では、裁判所は上記のような事情は「やむを得ない事由」にあたらないという判断を示しています。
そして、解雇は違法であるとして、不法行為による損害賠償を命じています。
具体的な損害額としては、雇用期間が3年であったのだから、少なくともあと1年間は働くことができたはずであるとして、1年分の賃金(基本給)相当額の支払いが命じられています。
「やむを得ない事由」があると認められた例についてはこちらをご覧ください。
▼契約社員の期間途中の解雇について「やむを得ない事由」があるとされた例
整理解雇の場合の具体例
最後に、有期雇用契約の期間途中でなされた整理解雇の効力について争われた裁判例(平成21年12月21日東京高裁決定)も見てみたいと思います。
この事案は、化粧品の製造作業に従事していた複数名の有期雇用の社員に対して、契約期間途中に行われた解雇の効力が争点の一つとなったケースです。
裁判所は、契約期間中の解雇については「やむを得ない事由」があることが必要となるところ、
- 化粧品の製造業務の発注会社からの発注額が前年度と比較してほぼ半減したこと
- 解雇に先だって、上積み条件なしに退職希望者を募集したが応募者がなかったこと
- 解雇の対象者を選定する基準としてⅰ 入社半年以内の者とⅱ 出勤率の低いものから順に合計20名に満つるまでとしたこと
- 解雇対象となった者が上記基準に該当していること
などの事情があっても、これによって「やむを得ない事由がある」とは言えないとして、解雇は無効であると判断しました。
この事案では、第一審の裁判所も、解雇の効力については、やはり「やむを得ない事由があるとは言えない」として、解雇を無効と判断していますが、その理由としては、
- 人員を削減する経営上の具体的必要性が明らかでないこと
- 希望退職の募集期間も短期間で解雇に向けた努力をつくしたとは認められないこと
- 事前に従業員に対して何ら説明がなされていないこと
等が指摘されています。
あわせて知っておきたい
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