懲戒解雇をあとから普通解雇にすることは許されるか?




普通解雇としては有効?

懲戒解雇は普通解雇とは異なり、「罰」としてなされる処分であることから、これが有効となるためには、一定の高いハードルが科されます。

懲戒解雇とその理由~懲戒解雇されたときに知っておきたいこと

2012.06.19

そのため、会社側が、当初、懲戒解雇として解雇処分を行ったにも関わらず、後で、懲戒解雇では有効性を根拠づけることはできないと考えて、「懲戒解雇としては無効でも普通解雇としては有効である」との主張がなされる場合があります。

このような主張が許されるのかについては、様々に議論されているところですが、これを許さないとした近年の裁判例として平成20年6月10日東京地裁判決をみてみます。

このケースは、合成樹脂加工製品の製造販売等を業とする会社で営業課長として働いていた従業員が懲戒解雇され、その有効性が争われた事例です。

裁判の中で会社側から懲戒解雇としての有効性だけではなく、普通解雇としての有効性も主張されたため、懲戒解雇として行った解雇を普通解雇として有効にすることが可能なのかという点が問題となりました。

予測機能

この点について、裁判所は、まず、

「懲戒処分,とりわけ労働者から従業員の身分を奪う懲戒解雇においては,懲戒規定の罪刑法定主義的機能は重視されるべきである」

と指摘しています。

「罪刑法定主義的機能」という小難しい言葉が使われていますが、これは、要するに、どのような行為に対してどのような罰が下されるのかを懲戒規定で定めておくことによって、あらかじめどのような行為に対してどのような不利益が課されるのかを予測できるようにしておくことが大切であるということです。

懲戒解雇と普通解雇の違いを考えると・・・

続いて、裁判所は、懲戒解雇の場合は、その有効性が裁判上で争われた際に、解雇時に明らかにされた解雇理由があるのかどうかという点だけが問題となるのに対して、普通解雇の場合は、(特定の行為ではなく)労務を適切に提供できない状態全般が問題となるという点で違いがあることを指摘しています。

そして、このような点に照らすと、懲戒解雇に普通解雇を含むという解釈することはできないとして、懲戒解雇に普通解雇の意味が含まれているという会社の主張を退けました。

懲戒解雇と普通解雇の質的な違いを考えると、やはり、懲戒解雇として解雇しながら後になって普通解雇としての有効性を主張するなどということは許されるべきではありません。

あわせて知っておきたい

懲戒処分について知る

懲戒解雇とその理由~懲戒解雇されたときに知っておきたいこと

その懲戒処分は重すぎる?~始末書の不提出と出勤停止(停職)処分

逮捕を理由とする懲戒解雇は許されるか

長期間経過後になされた諭旨退職処分に効力は認められるか

懲戒解雇と再就職~懲戒解雇歴を履歴書に記載する必要があるか

懲戒解雇と退職金について知る

解雇や懲戒解雇時の退職金はどうなるか

懲戒解雇事由の発覚と退職金の返還請求

懲戒解雇なので退職金支給しない?私生活上の不祥事と退職金不払い

退職金・自己都合なのか会社都合なのか

解雇理由について知る

解雇と解雇理由~どんなときに解雇が許されるのか~

適格性欠如や勤務成績不良は解雇理由になるか

試用期間と解雇~本採用されずにクビ?!

解雇予告について知る

解雇予告と解雇予告手当

解雇予告手当の計算方法

解雇されたときの行動を知る

解雇通知書を渡されたら何をすべきか?

不当解雇されたときに知っておくと役立つこと

解雇トラブルについて弁護士に相談したいという方に

労働相談@名古屋のご案内


その悩み、相談してみませんか

「会社のやり方に納得がいかない」
「でも、どう行動していいか分からない。」

こんなとき、法的な角度から問題を整理することで、今どんな選択肢があるのか、何をすべきなのかを考える糸口がきっと見つかります。

労働トラブルでお困りの方は、是非、お気軽にご相談ください。