即時解雇(即日解雇)が許される場合とは

即時解雇(即日解雇)が許される「労働者の責めに帰すべき事由」とは

使用者が、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも三十日前にその予告をするか、三十日分以上の平均賃金を支払うことが必要です(労働基準法20条1項本文)。

もっとも、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」については、このような解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いは不要とされています(労働基準法20条1項但し書き)。

(なお、そのほかに「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」なども解雇予告手当の支払いは不要とされます。詳しくは≫解雇予告や解雇予告手当が必要な場合とは?

問題はどのような場合に「労働者の責めに期すべき事由に基づいて解雇する場合」として、即時解雇(即日解雇)が許されることになるのかです。

この点について裁判で争われた例をもとに見てみたいと思います。

その悩み、相談してみませんか。名古屋の弁護士による労働相談実施中!
納得がいかない、でもどうすればいいか分からない・・・そんな時は、専門家に相談することで解決の光が見えてきます。労働トラブルでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
詳しく見る icon-arrow-circle-right

金銭の不正取得等を理由とする解雇のケース

まずは平成14年11月11日東京地裁判決です。

この事件は、スクリーン印刷機械の製造等を業とする株式会社で、新規事業開発部長として業務に従事していた原告が、解雇された後に、未払いの時間外手当とあわせて解雇予告手当を請求したケースです。

解雇理由としては、取引先から買付手数料名目で金銭を不正取得したこと、及び会社の設備を不正に使用したことが挙げられました。

裁判所は、まず、即時解雇が許される「労働者の責めに帰すべき事由」の意味について

当該労働者に予告期間を置かずに即時に解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な服務規律違反又は背信行為があること

をいうとしました。

そして、本件では、原告が、取引先から買付手数料名目で30万円を不正に取得した事実や、休日に会社の機械を使用して、会社の業務以外の作業を行おうとしていた事実を認定できるとした上で、これらは

  1. 新規事業を原告に委ねていた会社の信頼を著しく損なう行為であり
  2. 取引先に二重払いをさせる結果を招き,会社の対外的信用を傷つけ
  3. 会社の犠牲において自己の利益のみを追求するものと評されてもやむを得ない背信行為である

として、これらの事実は「労働者の責めに帰すべき事由」に該当し、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いは不要との判断を示しました。

職務怠慢、背信行為を理由とする解雇

保険代理店の営業社員に対する解雇

もう一つ、「労働者の責めに帰すべき事由」の意味について判断した事例として大阪地裁平成11年4月23日判決も見てみます。

この事案は、保険代理店で営業社員として勤務し、解雇された原告が、退職金や解雇予告手当の支払いを求めたケースです。

解雇の理由としては、日報の不作成や保険契約の満期忘れ、集金の懈怠の他、保険契約の締結にあたって勤務する会社以外の第三者を代理店としたことなどが挙げられました。

除外認定を受けていない点

この事案で、原告は、解雇予告手当を支払うべき理由として、解雇にあたって、労働基準監督署長による「除外認定」(解雇予告手当を支払わずに即時解雇出来るとの認定)がされていないことを主張しましたが、裁判所は

除外認定は行政庁である労働基準監督署による事実の確認手続きに過ぎず、即時解雇の不可欠の要件ではない

として、除外認定がされていないことだけで即時解雇の効力が生じなくなるわけではないとしました。

懲戒解雇と記載されていない点

また、原告は、離職票に懲戒解雇と記載されていない点についても問題としましたが、裁判所は、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いが必要かは、本件解雇が懲戒解雇か否かではなく、原告に帰責事由があるかどうかによって判断されるべきものとしました。

「責めに帰すべき事由」に該当するかの線引き

その上で、裁判所は、解雇理由として認められる事実のうち、日報の不作成や遅刻、保険金請求手続きや保険料集金の懈怠については、これだけで、解雇予告や予告手当の支払いを不要とするまでに重大な帰責事由があるということはできないとしました。

他方で、原告が、ある契約者の保険契約を無断で解約してその解約金を着服した行為や、第三者を代理店とする保険契約を締結させた行為は、重大な背信行為であるとして、本件解雇は、原告の責めに帰すべき事由に基づいてなされた解雇であって、解雇予告手当の支払いは不要と結論づけました。

積極的に会社の利益を害したり、自己の利益を図る行為は、ここでも重く評価されており、解雇予告手当の支払いが不要となる「責めに帰すべき事由」の線引きとして参考になります。

解雇予告手当に関する他の問題については、以下の記事をご覧下さい。
解雇予告手当が必要な場合とは
解雇予告手当の計算方法

不当な解雇をされた後の行動を知りたいという方はこちらを参考にしてください。
即日解雇されたらどうすべきか
解雇通知書を渡されたらまず何をすべきか?
解雇理由証明書とは何か~請求方法からもらえない場合の対応まで

どのような場合に解雇が許されるのかについては、以下の記事をご覧ください。
解雇と解雇理由~どんなときに解雇が許されるのか~
能力不足や勤務態度・成績不良は解雇理由になるか
懲戒解雇理由~どんなときに懲戒解雇が許されるか
試用期間終了時の解雇は許されるか

解雇トラブルでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
名古屋の弁護士による労働相談のご案内

その悩み、すっきり解決しませんか


・会社のやり方に納得がいかない
・でも、どう行動していいか分からない。

そんな悩みを抱えてお一人で悩んでいませんか。

身を守るための知識がなく適切な対応ができなかったことで、あとで後悔される方も、残念ながら少なくありません。

こんなときの有効な対策の一つは、専門家である弁護士に相談することです。

問題を法的な角度から整理することで、今どんな選択肢があるのか、何をすべきなのかが分かります。そして、安心して明日への一歩を踏み出せます。

現在、当サイトでは労働トラブルに悩む方の法律相談をお受けしています。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。