後で付け加えられた懲戒理由に効力はあるか

懲戒処分理由の「後だし」

懲戒解雇の有効性が裁判等で争われることになった際に、会社側が(いわば「後出し」的に)その懲戒処分を行った当時は認識していなかったものの、後になって新たに発覚した事情を持ち出して、懲戒解雇の有効性を主張する場合があります。

例えば、勤務態度不良を理由に懲戒解雇を行ったのに、裁判等で争われるようになってから「実は競業避止義務違反もあったことが判明した」として、これを懲戒解雇の有効性を基礎づける事情として追加して主張し始めるようなケースです。

最高裁判決

このような主張が許されるのかについては、裁判上でもいろいろと争われてきましたが、平成8年9月26日に出された最高裁判決は明確にこれを否定する判断をしています。

この判決の中で最高裁は、懲戒処分は企業秩序に違反したことを理由として罰を課するものであるから、懲戒が有効かどうかというのは、「その理由とされた非違行為」との関係で判断されるべきものであるとした上で、

「懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り当該懲戒解雇の理由とされたものではないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠づけることはできないというべきである」

と判断しました。

つまり「後出し的な理由の差し替えはダメですよ」ということです。

このように「理由の差し替えが許されない」という観点からも、懲戒処分がなされる際には、一体どのような行為を理由にして懲戒処分がなされるのかを、具体的に明確にするように会社に求めることは大変重要となってきます。

懲戒処分をする際に使用者がなすべき手続き

なお、これに関連して平成23年1月21日東京地裁決定は、懲戒処分が行われる際に使用者がなすべき手続きについて以下の通り述べています。

「使用者が労働者に対する懲戒処分を検討するに当たっては、特段の事情がない限りその前提となる事実関係を使用者として把握する必要があるというべきである。」

「特に懲戒解雇は、懲戒処分のもっとも重いものであるから、使用者は懲戒解雇をするに当たっては、特段の事情がない限り、従業員の行為及び関連する事情を具体的に把握すべきであり、当該行為が就業規則の定める懲戒解雇事由に該当するのか、当該行為の性質・態様その他の事情に照らして、懲戒解雇以外の懲戒処分を相当とする事情がないか、といった検討をすべきである。」

懲戒解雇の前提として使用者がなすべきことを理解する上で参考となる指摘です。

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shita


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