長期間経過後になされた諭旨退職処分に効力は認められるか

7年後の諭旨退職処分

上司に対する暴行事件を起こしてから7年後にこれを理由に行われた諭旨退職処分(退職届を出さなければ懲戒解雇とする旨の処分)が、権利の濫用にあたるか。

こんな問題が争われた事例(平成18年10月6日最高裁判決)をご紹介します。

まず、少しややこしいですが、そもそもなぜ7年も経過してから処分が行われることになったか、事実経緯をご紹介します。

会社は暴行事件後から目撃者に報告書を提出させるなどして調査をおこなっていました。

しかし、上司が警察や検察に被害届の提出・告訴を行ったことから、刑事処分結果を待ってから処分を検討することにして、直ちに処分はしなかったのです。

そして、暴行事件の発生から約6年後になってようやく不起訴処分が決まったため、改めて処分の検討を始めたところ、今度は、暴行事件を起こした従業員の1名が、いったん退職届を出しながらその翌日に撤回するという出来事が起こり、この退職の有効無効が裁判で争われるようになりました。

会社はこの裁判の間処分を再度見合わせ、裁判の決着がついた(会社の言い分が認められました)後に、ようやく、懲戒処分として「退職願が提出されないときは懲戒解雇とする」旨の諭旨退職処分としました。

しかし、その時点では暴行事件が発生してからすでに7年が経過していました。

そのため、問題となる行為が起きてから、これだけ長期間が経過してからの処分が果たして有効なのか、という点が問題となったのです。

権利の濫用

原審は、会社はいたずらに懲戒処分をしないまま放置していたわけではないから解雇権の濫用があったということはできないと判断しました。

しかし、最高裁は、これを破棄して、本件諭旨退職処分は権利の濫用として無効というべきと判断しました。

その理由としては以下のような点が指摘されています。

① 問題となった事件は、職場で就業期間中に上司に対して行われた暴行事件であって、被害者以外にも目撃者が存在したのであるから、警察の捜査の結果を待たなくても処分を決めることは十分に可能であり、これ
ほど長期間にわたって懲戒権の行使を留保する合理的理由は見出しがたい

② 捜査の結果を待って処分を検討する場合には、捜査の結果が不起訴処分になったときは懲戒解雇処分のような重い懲戒処分は行わないのが通常と考えられるのに、不起訴処分となったにもかかわらず諭旨退職処分
という重い懲戒処分を行うのは一貫しない

秩序維持の観点からの実質的必要性

懲戒処分が企業の秩序維持の観点から認められるものなのであれば、長期間の経過によってその実質的な必要性は薄れていきます。

合理的な理由もないのに懲戒処分を保留にし、長期間が経過して秩序維持の観点からは実質的な必要性がなくなったにもかかわらず懲戒処分を行うことは認められないということができます。

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