有給休暇をとれない!有休の妨害について損害賠償が命じられた例

有給休暇は、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度で

  1. 6ヶ月間継続して勤務していること
  2. その期間の全労働日の8割以上出勤していること

という条件を満たせば、法律上当然に取得が認められます。(有給休暇の詳細についてはこちら▼パートでも有給休暇はとれる!条件や日数について

有給休暇を使って休むのに会社の承諾や許可は必要なく、有給休暇を使って休むためには、日付を指定して「有給休暇を使って休みたい」ということを申し出れば足ります。

これに対して、会社は、労働者が有給休暇を請求した時には、原則として、これを与えなければならず(労働基準法39条5項)、例外的に、どうしてもその日に当該労働者に休まれると業務に支障が生じるという場合には、休みをとる日を別の日に変更するように求めることができるだけです(これを時季変更権といいます)。

ところが、上司あるいは会社が何だかんだといって、労働者が有給休暇を使って休むこと自体を妨害することがあります。このような会社の妨害行為について、違法行為であるとして損害賠償が命じられたケース(平成23年10月6日神戸地裁判決、平成24年4月6日大阪高裁判決)について見てみたいと思います。

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有給休暇の申請と取り下げ

この事案では、進学教室を営む会社の従業員が有給休暇を申請したのに対して、上司が、評価が下がることになるなどとして、有休申請を取り下げるよう要請するメールの送信や発言をし、申請を取り下げさせた行為が違法行為になるのか等が争われました。(有給休暇の件以外の争点については説明を省略します)

裁判所の認定によると、この従業員はある月の下旬にリフレッシュ休暇と所定の休日をあわせて10日間の連休を取得することになっていましたが、その月の初旬にも1日の有給休暇の申請をしました。

そうしたところ、上司が「リフレッシュ休暇をとる上に、有給休暇をとるのでは非常に心証が悪いと思う」「どうしてもとらないといけない理由があるのでしょうか」といった内容のメールを送り、さらに、会議室で面談をして、「リフレッシュ休暇を申請しているのに,その上休むのか。相当に心証が悪いけれどいいの?」、「こんなに休んで仕事がまわるなら,会社にとって必要ない人間じゃないのかと,必ず上はそう言うよ。その時,僕は否定しないよ。」、「そんなに仕事が足りないなら、仕事をあげるから、出社して仕事をしてくれ。」等の発言をしました。

これを受けて、当該従業員は有給休暇の申請を取り下げるに至ったのです。

違法性の有無

第1審の神戸地裁も、第2審の大阪高裁も、このような上司の発言について違法行為となることを認めました。

その理由として、裁判所は

  1. 法律上の要件を充足する場合に、労働者は法律上当然に有給休暇をとる権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うこと
  2. 労働者が、いつ休むかを具体的に指定したときは、有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合であって、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしない限り、その指定によって有給休暇が成立すること
  3. つまり、有給休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」やこれに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないこと

を指摘した上で、本件では、会社が時季変更権を行使した事実は認められないので、申請によって法律上当然に有給休暇が成立するにも関わらず、従業員は上司の上記発言によって取り下げるに至っており、有給休暇を享受することを妨げられたとしています。

違法性の程度

また、第二審の大阪高裁は、会社や上司らが「違法性は極めて低い」と主張したのに対して、

  1. 当該上司は過去にも有給休暇の申請を撤回させたことがあること
  2. 第一次考課者であるという地位を利用して取り下げを強要したものであること
  3. 実際に、過去においても有給休暇申請と評価を関連させることがあったこと

等の事情を指摘して、「違法性の程度は極めて高い」と判断しています。

損害賠償額

第二審の大阪高裁は、その他に有給休暇を申請したことに対する嫌がらせとして業務指示が行われたことについても不法行為に該当するとした上で、取り下げの強要と嫌がらせの業務指示の両者あわせて60万円の損害賠償を会社と上司に命じています。

「有給休暇がとれない」「とりたくても上司がとらせてくれない」という状況は残念ながら多くの会社で散見されますが、実際にこうして裁判にまで争われるというのはごくわずかです。

しかし、こうした有給休暇の妨害行為は、法的な理屈でいうと、こうした損害賠償の問題にまでなるということを頭に入れて頂ければと思います。

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