退職するにあたって気になることの一つとして、ボーナスの支給日前に退職した場合にボーナスの支払いを受けられないのかという問題があります。
特に、様々な事情で支給日直前に退職せざるをえないという場合、「ボーナスの全部または一部でも支給を受けられないだろうか」という思いを持つ方も少なくないと思います。
ここでは、こうした支給日前に退職した場合のボーナスの問題についてとりあげます。
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支給日在籍条件
まずは、就業規則で、ボーナスの支給条件についてどう記載されているかを確認してみましょう。
多くの会社において、就業規則上、ボーナスの支払いについては、支給日に在籍していることが条件とされています。
このような支給日在籍要件が法律上有効なのかが問題となりますが、裁判所は支給日在籍条件が定められている場合に、会社がこれを理由にボーナスを支払わないことを認める判断をしています(例えば、最高裁昭和57年10月7日判決)。
その理由としては、
- 支給日在籍要件は、受給資格者を明確な基準で確定する必要から認められるものであり、十分合理性が認められること
- 退職した者に不測の損害を与えるものとは言えないし、支給日在籍者と不在籍者との間に不当な差別を設けるものでもないこと
などが挙げられています(平成8年10月29日東京地裁判決)。
したがって、就業規則で支給日在籍条件が定められている場合には、支給日前に退職すると、残念ながらボーナスを受けとることはできないと考えておく必要があります。逆に言えば、退職日を決定する際には、この点についても十分に考慮しておく必要があります。
これに対して、支給日在籍条件が定められていない場合には、ボーナス対象期間の在籍日数に基づいて計算した金額を支給するように交渉してみることも考えられます。
とりわけ、ボーナスの金額の決定基準が客観的に明確になっており、会社の裁量の余地が乏しいような場合には、このような主張は比較的しやすいと言えます。
支給が遅れた場合はどうなるか
上で説明したように、支給日在籍条件が定められている場合には、支給日前に退職するとボーナスを受け取ることは困難になりますが、ボーナスの支給が本来の予定日から遅れ、その間に退職してしまったという場合にまで、支給日在籍条件を理由に支払いが受けられないというのは大変不合理です。
したがって、このような場合には、たとえ支給日前に退職をしても、ボーナスの支払いを請求できると考えるべきです。
実際に、賞与の支給が予定よりも約2ヶ月半遅れたことで、その間に退職した従業員が賞与の支払いを受けられなかったという事案(平成12年2月14日東京地裁判決)において、裁判所は
支給が支給予定日よりも遅れた場合に、支給対象者を現実に賞与が支給された日に在籍する従業員に限るとすることは、賞与請求権を取得した者の地位を著しく不安定にするものである
などと指摘した上で、支給日在籍要件にいう支給日とは「支給予定日」を指すとして、支給予定日に在籍していた従業員らへの賞与の支払いを命じています。
このように支給が予定より遅れた場合にまで、形式的な支給日在籍条件を理由に支給が受けられなくなるわけではない、という点に注意が必要です。
似たような問題として、退職時に有給休暇を消化できるかという問題があります。
▼退職時に有給休暇を使うために知っておきたいこと
その他、退職にあたって知っておきたいことを以下の記事でまとめていますのでご覧ください。
▼退職する前に知っておきたいこと
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