不当解雇をめぐる裁判~費用や期間、裁判の流れなど

不当解雇をめぐって裁判を起こしたいと考えたときに、真っ先に気になるのは、裁判にどれくらいの費用や期間がかかるのか、そして、裁判を起こした後はどう展開していくのか等だと思います。

行動を起こした先に何が待ち受けているのかが分からないままでは足を踏み出せないのももっともです。逆に、ある程度将来のリスクを見極めることができれば、思い切った行動も可能となります。

もっとも、事件の内容は千差万別です。加えて、相手方となる会社の考え方や対応方法も様々、担当する裁判官の性格や進め方も様々ということになると、たとえ一般論としてでも、裁判にかかる費用や期間、展開等について、こうなりますとご説明することは大変難しくなります。

とはいえ、少しでも見通しを掴む手がかりが欲しいという方のために、公表されているデータや私の取り扱ってきた事例などをもとに、不当解雇を巡る裁判にかかる費用や期間、展開等についてまとめてみたいと思います。

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不当解雇の裁判にかかる費用

裁判にかかる費用は、大きくいって、裁判所に納める費用(手数料)と弁護士費用とがあります。

手数料

裁判所に納める手数料は、その裁判での訴額(訴えの対象となっている金額)をもとに計算されます。

不当解雇をめぐる裁判の場合は通常賃金の請求を伴いますので、賃金額が多いか少ないかが影響することになりますが、多くの場合、数万円~5,6万円程度です。

弁護士費用

これに対して、弁護士費用は、弁護士をつけずに本人訴訟で行う場合にはもちろん必要ありませんが、弁護士を代理人としてつける場合には必要となり、裁判にかかる費用として一番大きな部分をしめます。

弁護士費用の決め方については、以前は日弁連で統一した基準が設けられていましたが、現在は、各法律事務所ごとに基準を定めることになっていますので、実際に依頼をする弁護士に聞いていただくほかないのですが、ここでは概要だけご説明します。

多くの法律事務所は、弁護士費用について「着手金」と「報酬金」の2段階で費用をお支払いいただく方式をとっています。

着手金は、依頼する際に(つまり、裁判を始める前に)支払う費用で、報酬金は、結果が出てから(つまり、裁判が終わってから)その成果に応じて支払う費用です。

着手金は、成果とは関係なく最初に発生する費用、報酬金は、成果に応じて最後に支払う費用ということになりますので、成果が全く無ければ通常報酬金は発生しませんが、その場合でも着手金は返金されないので注意が必要です。

そして、着手金、報酬金とも、その裁判で問題となっている経済的な利益がいくらかを原則的な基準として定めることになるのが普通です。

不当解雇を争う裁判の場合には、通常、①労働者としての地位があることの確認(地位確認)②裁判を行う期間の給料の支払いを請求することになりますので、その方の年収がいくらかという点が大きな考慮要素になります。

参考までに、少し古いデータですが、例えば、日弁連が2008年に全国の弁護士へのアンケートをもとに作成した市民のための弁護士報酬の目安というパンフレットによると、

「10年間勤務し、30万円の月給をとっていた労働者を、会社が懲戒解雇したので、労働者が解雇無効を理由に労働仮処分手続きの申し立てをした。その結果職場復帰を果たした」

というケースで、

・着手金を20万円とした弁護士が45パーセント、30万円とした弁護士が31パーセント
・報酬金を30万円とした弁護士が36パーセント、報酬金50万円とした弁護士が31パーセント

という結果になっています。

これは仮処分手続きという暫定的に結論を求める手続きを利用した場合ですので、本訴訟の場合と全く同じように考えることはできませんが、おおよその目安を知る上では参考になると思います。

不当解雇の裁判にかかる期間

次に、不当解雇の裁判にかかる期間について見てみたいと思います。

データからみる期間

こちらもまずはデータから見てみます。

最高裁が平成29年7月に公表した裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第7回)によれば、労働関係訴訟の地方裁判所における第1審での平均審理期間は14.3ヶ月で、民事事件全般の平均審理期間8.6ヶ月と比べると、顕著に長くなっています。

「労働関係訴訟」という分類ですので、不当解雇の裁判に限ったものではありませんが、不当解雇の裁判にかかる期間を考える上でも参考になります。

このようにいわゆる裁判手続きに持ちこむと、どうしても一定の期間を要することから、同じく裁判所で行われる手続きとしては、スピーディに解決を図ることを目指した労働審判という手続きがありますが、こちらの平均審理期間は79.1日となっています。

およそ7割の事件が、3ヶ月以内に終局に至っており、迅速な解決を図るという制度目的は相当程度実現されているといえます。

事例からみる期間

データからいえば上記のとおりとなりますが、もちろん事案の内容は千差万別ですので、不当解雇の裁判にかかる期間も様々です。

私がこれまで取り扱ってきた事例の中からいえば、例えば、非常に短期間で終結したケースでは、提訴から2ヶ月あまりで終結したような事例があります。

この事案は、当初、依頼者の方が、復職の意思を比較的強くお持ちで、また金銭解決も選択肢の一つと考えられていたものの、労働審判を選択すると、最初から金銭解決ありきの話し合いになってしまうことが予想されたことから、あえて労働審判ではなく裁判を選択したケースでした。

裁判では、不当な解雇であることが相当程度明らかであったこともあって、早期に裁判所の心証が示され、いわゆる相場よりもかなり高い解決金が呈示されるに至ったことから、和解にて終結しました。

これに対して比較的長期にわたって闘った事例でいえば、例えば、当初労働審判を行い、その中では解決がつかずに訴訟に移行したケースで、最終的に完全勝利の判決を得て復職することができたものの、終結までに労働審判の申し立てから3年以上の月日を要したような事案もあります。

私は、訴訟に移行した段階から依頼をお受けしたことから、当初から裁判を選択していれば、もう少し期間を短縮できたのではないかという思いもあるのですが、いずれにしても、徹底的な争いになっていくと、どうしてもそれなりの期間を要することになってしまいます。

このように、不当解雇を巡る裁判にかかる期間は、事案の内容や、担当する裁判官の個性、会社側の態度、会社側代理人の姿勢など、様々な事情が絡みあって決まってくることから、なかなか一概に「このくらいの時期までに終わります」と言えないのが悩ましいのですが、目安を考える上で参考にしていただければと思います。

そのほか、裁判の流れや、不当解雇をめぐる裁判で必要となる証拠、相談先については次の記事をご覧ください。
裁判の流れを知る
不当解雇を争うための証拠とは
不当解雇の相談先と相談する際に気をつけたいこと

そのほか、不当解雇されたときに知っておきたいことについては、次の記事でまとめています。
不当解雇されたときにまず知っておくべきこと

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