パート従業員に対して行われた整理解雇が無効とされた裁判例

会社が経営不振に陥ったとき、打開策の一つとして人員削減が行われることがあります。

解雇のうち、こうした経営不振による人員削減・部門の廃止など、経営上の必要性を理由に行われるものを整理解雇といいます。

整理解雇は、労働者の成績不良や適格性の欠如を理由とする解雇や、労働者の非違行為を理由として行われる懲戒解雇とは違って、労働者側の責任とは無関係に行われることから、これが有効と認められるためには、より厳格な要件を満たす必要があります。

整理解雇が有効と認められるためには、まず当然のことながら、人員整理の必要性があることが必要です。会社の業績不振の内容、程度が具体的に問われます。

また、会社が、解雇を回避するための努力を尽くしていることが必要です。

解雇により人員削減を行うというのは、ある意味もっとも簡単な方法です。しかし、解雇が労働者及びその家族の生活に重大な影響を与えるものであることを考えるならば、安易にこれを選択することは許されません。解雇以外の手段を追求する努力がされていることが必要です。

また、やむなく整理解雇を選択せざるを得ないという場合も、労働者のうち、誰をその対象とするのかのが、客観的合理的な基準によって選定されていることが必要です。整理解雇を口実にして、実は特定の社員を恣意的に狙い撃ちにするなどということは許されません。

さらに、解雇に至るまでの経過も重要です。労働者に対して事前に説明をし、納得を得るように誠実な協議を行うことが求められます。

これらの判断にあたっては、会社の規模や解雇される労働者の職務内容、立場等も関わってきますが、ここでは、小規模の会社で行われたパート従業員に対する整理解雇について判断した裁判例(東京地方裁判所平成20年5月16日判決)について採りあげたいと思います。

事案の概要

本件は、宣伝・広報、イベントプロデュースなどを業とする株式会社で、期限の定めのないパート従業員として勤務していた労働者に対して行われた整理解雇の効力が争われました。

解雇当時、被告会社に属する従業員数は12名程度で、他に代表者を同じくする関連会社が2社ありました。

被告会社は、解雇の理由について、被告会社の経営状態の悪化に伴う経営合理化の一環と説明したため、整理解雇としての効力が認められるかどうかが問題となったのです。

裁判所の判断

人員削減の必要性

被告会社は、解雇に至るまでの5年間にわたって売上がほぼ横ばいであるのに対して、仕入れが約2割増加した結果、粗利が約3割減少しており、しかも、これは、公的団体が発注を競争入札で行うことになったという構造的な要因によるものであるから、人員削減の必要性が認められると主張しました。

しかし、裁判所は、粗利の減少は認められるものの、営業利益については5年前から増加傾向にあることに照らすと、人員削減の必要性があるとは認めがたいとしました。

解雇回避努力

裁判所は、被告会社が積極的な希望退職募集や退職勧奨を実施しなかったことを指摘し、真摯な解雇回避努力をしたとは認められないとしました。

被告会社は、数年前から、退職従業員の欠員補充を制限するなどして4年前に17人であった正社員数を12人に減少させるなど一般管理を減少させる努力をしてきた旨主張していましたが、この点について、裁判所は、従業員数の減少は関連会社2社への分社化の結果に過ぎないとし、また、被告が解雇を行った時期にも新たに正社員を募集して増員し、その後も社員の募集を行っていることから、やはり解雇回避のための努力をしていたとは認められないと結論づけています。

人選の合理性

裁判所は、原告労働者の担当職務が、名刺の整理や書籍の発送、データ入力作業等であり、単なる雑用とはいえないものの、他の従業員で代替が十分に可能な業務であるから、解雇の対象として原告労働者を選定したことに一定の合理性があることは否定できないとしました。

また、原告労働者の雇用形態がパート従業員であった点については、「正規従業員との雇用形態の差異は、人選の際の理由の一つとなりうる」としました。

手続きの相当性

裁判所は、被告会社が解雇に際して事前の説明、協議を一切行っていないことを指摘して、「手続きの相当性を欠くことは明らか」としました。

また、特に原告労働者が家庭が生計を維持する上で原告の収入が欠かせない状況にあったことを被告会社は認識しており、事前の説明、協議を一切行っていないことは、解雇によって原告が被る経済的打撃について全く配慮していないことを意味し、「手続きの相当性を欠く程度は著しい」と述べています。

解雇は無効

以上の検討を踏まえて、裁判所は、被告会社の整理解雇は、解雇権を濫用したものであって無効と結論づけました。

なお、原告労働者は、被告会社の代表者と同じマンションに居住し、被告会社の代表者の妻と顔見知りでその雑用を手伝ったことがきっかけで被告会社に雇用されたという経緯がありました。

この点を捉えて、被告会社は「このような家族的・親睦的関係だったという特殊性を考慮せずに、通常の解雇規制を当てはめるのは相当ではない」と主張しましたが、これに対して、裁判所は「そうであればなおさら両者の合意の下に退職に至るよう努力すべきであって、被告会社の態度は、近隣のよしみに甘えて最低限の信義則すら忘れていると言わざるをえない」と厳しく批判しています。

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