労働審判とはどのような手続きか

労働トラブルを解決する手段として「労働審判」という手続きがあることについては、まだ、なかなか一般には知られていないように思います。

紛争を解決する方法として、すぐに思い浮かぶのは裁判ですが 「裁判⇒時間がかかる⇒大変そう⇒諦めよう」と考えてしまうのであれば、大変もったいないところです。労働審判手続きを活用することで、あなたの抱えるトラブルは素早く、適切な解決ができるかもしれません。

ここでは、そんな労働審判手続きについて、どのような手続きなのか、実際の流れ、どのような紛争がこの手続きに適しているのか等を解説していきます。

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労働審判とは

労働審判とは、裁判所で行われる紛争解決手続きの一つで、個々の従業員と会社との間で生じた労働紛争(個別労使紛争)を解決するために作られた手続きです。

裁判所を利用した紛争解決手続きとして、他には、いわゆる通常の裁判(訴訟)があります。近年、訴訟で結論が出るまでに必要となる期間は相当短縮されてきていますが、それでも解決までには一定の期間を要します。

これに対して、労働審判は、原則として3回以内の期日で結論を出すことになっており、通常裁判と比べて解決までのスピードが速いのが大きな特徴です。

また、裁判所以外での紛争解決手続きとしては、例えば労働局で行われているあっせん手続きがありますが、あっせん手続きとの大きな違いは、労働審判の場合、話し合いがまとまらない場合に「審判」という形で、一定の結論が示されるという点です。

あっせんの場合には、あくまでも話し合いの手続きですので、話し合いがまとまらなければ不成立ということで終了してしまいます。これに対して労働審判の場合、話し合いがまとまらなくても「審判」が出され、双方に異議がなければ、それが結論となるのです。

「審判」に対して異議が出された場合には、自動的に通常裁判に移行しますが、審判は裁判所の考え方を示すもので通常裁判でどのような結論になるのかを一定見通すことができることから、異議が出されて通常の裁判までもつれ込むケースは比較的少ないのが現状です。

労働審判の対象となる事件とは

労働審判の対象となる事件は、制度上、一定の限定がされています。

まず、労働審判は、労働紛争の解決のための手続きですので、労働紛争とはいえない一般の紛争の解決(例えば、事業者同士の争いなど)には利用できません。

また、労働審判は「個別」労使紛争を扱う手続きですので、労働組合と会社との間の紛争(団体的労使紛争)の解決には利用できません。

さらに、労働審判は「労使」紛争を扱う手続きですので、例えば、上司からパワハラやセクハラを受けたという場合に、その上司個人を相手にして申し立てることも出来ません。(もっともパワハラやセクハラの紛争でも、これを放置した会社の責任を問うという場合は可能です)

このような条件を満たすのであれば、広く利用することが出来ます。

例えば、解雇や雇い止めを巡る争い、退職を巡る争い、労災を巡る争い、未払い残業代等給料を巡る争いなどです。

ただし、このような制度上の限定以上に重要なのは、原則として3回以内の期日で結論を出す手続きであることから、このような解決にふさわしい事案かどうかという観点からの選別です。

例えば、事実関係があまりにも複雑な事案は労働審判には適さないといえます。(通常の裁判を選ぶべきか、労働審判を選ぶべきかの判断基準については後でも触れます)

労働審判員について

労働審判手続きは、裁判官1名と労働審判員2名によって構成される労働審判委員会によって審理がされます。

労働審判員とは、「労働関係に関する専門的な知識経験を有する者」という基準で最高裁判所から任命された方々です。

実際には、使用者側の労働審判員については日本経済団体連合会(日経連)が、労働者側の労働審判員については、日本労働組合総連合会(連合)が、それぞれふさわしい候補者を推薦し、これを最高裁判所が任命しています。

具体的には企業内で労務分野に携わってこられた方や労働組合で活動をされてきた方が労働審判員になっています。

労働審判員2名のうち、1名は使用者側の労働審判員、1名は労働者側の労働審判員が担当します。

ただ、労働審判の場で、労働審判員が、自分がどちら側の労働審判員かということを明らかにすることはありませんので、審判を受ける側からすると、どちらが労働者側でどちらが使用者側なのかということは、発言内容からなんとなく推測できるだけで、最後まではっきりとは分かりません。

使用者側、労働者側というと、あたかも使用者側の労働審判員は使用者側に立って、労働者側の労働審判員は労働者側に立って進めるかのように思えますが、そうではありません。

労働審判員は、あくまでも中立公平な立場に立って審理に加わります。

実際にこれまでの経験から言っても、使用者側の労働審判員(と思われる人)が使用者側に厳しい指摘をしたり、労働者側の労働審判員(と思われる人)が労働者側に厳しい指摘をすることがたくさんありました。

労働審判員として選ばれている方が、推薦母体にかかわらず公平に職務を行うという意識をきちんと持ち、かつ自分の経験も踏まえた上で発言すると、結果的に、使用者側の労働審判員は使用者側に厳しく、労働者側の審判員は労働者側に厳しくという傾向が出るのかもしれません。

労働審判が行われる場所

労働審判が行われる場所は裁判所ですが、法廷ではなく、ラウンドテーブルといって大きな机が置いてある部屋が使われます。

審判体の3名と申立人側出席者、相手方出席者が一つのラウンドテーブルを囲みます。

期日には、代理人として弁護士を付けている場合でも、本人が必ず出頭します。

時々「会社の社長や関係者と出来れば顔を合わせたくない」とおっしゃる方がおられますが、期日においては、どうしても同じテーブルを囲む形で、会社の関係者の方とも顔を合わせることになります。

もっとも、同じテーブルを囲むと言っても、基本的には、当事者同士がその場で直接話合ったり、言い合ったりというような場面があるわけではありませんので、過度に心配する必要はありません。

なお、労働審判に臨むときにどんな服装をすればいいですかと聞かれることもよくありますが、そう堅苦しい手続きではありませんので、普段仕事に行かれるときのような常識的な格好であれば何でも構いません。

労働審判の流れ

実際の労働審判手続きの進められ方は、審判体の裁量にゆだねられている側面が強く主に裁判官の性格や考え方で大きく異なるのが実情ですが、大まかなイメージとしては以下のような進行になります。

第1回期日

期日は1回当たりおおよそ2時間程度が使われます。

第1回の期日では、まず、それまでに申立側から出された申立書及び証拠、相手方から出された答弁書及び証拠を前提にして、審判体(主に裁判官)から主に当事者に対してさらに詳しく事情を聴く質問がなされていきます。

事実関係については当事者自身の口から答えることが求められる場合が多いです。

この時にポイントとなるのは、裁判官から聞かれたことには「端的に」答えていくことです。

解雇退職をめぐる事件では、いろいろな背景事情も絡んだ複雑な対立がある場合が多く、裁判官から質問をされると、どうしても言いたいことがたくさん出てきてしまいます。

しかし、審判体としては、短時間の間にポイントを確認し解決に向けた落とし所を探る必要があるため、書面に書かれていることを前提にしながら、法的にあるいは紛争の解決にとって重要な点に絞ってさらに質問をしていきます。

質問されたことに直接答えずに長々と話すと、話が分からない人だと思われて無駄に損をするばかりか、場合によっては、端的に話したくない事情があってごまかそうとしているのではないかと思われてしまう可能性もあります。

したがって、あれもこれもと話すのではなく、まず何を聞かれているのかを落ち着いて良く考え、端的に答えていくことが大切です。

話し合いと審判

こうした質問による聴き取りを通じて、審判体は、当該事案をどのような線で解決すべきかという見通しを形成していきます。

その上で、審判体としての考え方を一定示しながら、話し合いによる解決を探る段階になります。この場面では、双方が交互に入室し、審判体と話をするなどの形で話し合いが行われます。

話し合いがまとまれば、その内容を調書にして確認し、終了となりますが、第2回、第3回と期日を重ねても話し合いがまとまらない場合は、最終的には、審判体が「審判」という形で解決方法を示すことになります。

これを両者が受け入れ、異議を述べなければそのまま終結しますが、一方でもこれに不満があるとして異議を述べると、通常訴訟(本訴)に移行することになります。

参考▼労働審判に異議を申し立てることができる期間について

労働審判で代理人をつける必要があるか

労働審判は、代理人として弁護士をつけずに行うことも可能です。

ただし、申立書の作成方法等についてはやはり一定の専門的な知識が必要で、裁判所も、家事調停などととは違って、そう親切に書面の作成方法等まで教えてくれるわけではありません。

また、集中的な審理による短期間での勝負となることから、書面の作成以上に、期日において裁判官の問題意識を読み取りながら、適格に事実を説明していったり、和解交渉上の駆け引きを行っていくことが重要ですが、そのためには手続きになれた弁護士を代理人としてつけるのが望ましいといえます。

労働審判を選ぶか通常裁判を選ぶか

労働審判は解決までのスピードが速い半面、どうしても話し合いによる解決の要素が強くなるため、あまりに複雑な事件、徹底的に双方の主張が対立し妥協の余地がないような事案には向いていません。

そのような案件の場合、仮に労働審判を選択しても、審判が出された後に異議が出されれば通常の訴訟に移行してしまいますので、それならば最初から通常の裁判を選択した方が話が早いとも言えます。

もっとも、労働審判の審理は口頭での質疑応答などが活発に行われるため、訴訟の場で行われる証人尋問手続きのような「構えた」手続きでは出てこないような事実が、ポロっと出てきてしまうということもあります。

そういった意味で、訴訟に移行する可能性が高いという場合も、いったん労働審判で「前哨戦」をやっておくことに意味がある場合もああります。

したがって、決して単純に言えるわけではありませんが、ごくおおざっぱにいってしまえば、スピードを重視するか(労働審判)、徹底的にやりあうことを重視するか(通常裁判)というような判断枠組みになります。

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