解雇に至る過程における具体的な指導・注意の有無などを理由に解雇を無効と判断した事例

従業員の勤務態度不良を理由とする解雇が行われることがありますが、その場合、解雇の効力を判断する上での一つの観点として、解雇に至るまでに具体的な注意が与えられ、改善の機会が与えられたのかどうかという点があります。

解雇せざるを得ないというほどの勤務態度不良があるというのであれば、会社としては当然、改善に向けた何らかの行動をとっているはずであるし、逆にそれがないと、解雇するほどの問題があったのかについて強い疑問が投げかけられます。

一例として、アルバイト従業員に対する勤務態度不良を理由とする解雇の効力が争われた例(東京地方裁判所平成20年1月25日判決)を見てみます。

事案の概要

この事案では、カプセルホテルのフロント補助業務を行うアルバイトとして雇われた労働者に対して行われた解雇の効力が問題となりました。

解雇理由として会社から主張されたのは、「原告が勤務中に度々宿泊客とトラブルを起こし、宿泊客からのクレームが多いこと、他の従業員ともなじまず、従業員の和が乱れること、原告のこれまでの勤務態度からして、ホテル従業員としての適格性に著しく欠けていること」などでした。

裁判所の判断

解雇の効力

これに対して、裁判所は、「原告の接客態度に穏当を欠く不適切な言動があった形跡はうかがわれる」としながらも、

  • ・ほかの社員(正社員)らが原告に対して、面と向かって注意なり指導をした形跡がないこと
  • ・原告がフロント業務なりラウンジ業務をことさらに行わなかったりした様子はなく、むしろ原告なりに業務を全うしようとしていること
  • ・業務の過程でクレームが生じているとしても、カプセルホテルの営業が大きく混乱したり、営業上の具体的な損失が大きく生じているわけではないこと
  • ・ホテルの支配人から解雇に先立って、原告に対して明確な形で面と向かって注意した様子もなく、原告における勤務中の言動が解雇をしなければならないほど深刻かつ喫緊なものであったとは認められない

ことを指摘しました。

そして、会社が主張する「他の従業員との関係や原告の従業員としての適格性」についても

  • ・不満が社員から上がったのは本件解雇の半年前くらいからで、それ以前には問題があまりなかったこと
  • ・会社なり支配人から原告に対してこのままでは解雇せざるを得ないなどの事情を具体的に説明するなり注意した上で原告に勤務態度や考え方の修正を迫ったり要求した経緯がないこと

を指摘して、解雇事由としては不十分であり、解雇は無効と結論づけました。

損害賠償請求

本件で、原告は、本件解雇によって精神的苦痛を被ったとして、慰謝料請求も行っていました。

しかし、裁判所は、会社がなした解雇が全く理由のないものであるとまでは言えず、原告が解雇により被る不利益は従業員としての地位確認や賃金債権の保証によりある程度までは補填できているとして、慰謝料請求までは認めませんでした。

不当な解雇をされたときに知っておきたいこと

2017.07.27

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