普通解雇としては有効?
懲戒解雇は普通解雇とは異なり、「罰」としてなされる処分であることから、これが有効となるためには、一定の高いハードルが科されます。
そのため、会社側が、当初、懲戒解雇として解雇処分を行ったにも関わらず、後で、懲戒解雇では有効性を根拠づけることはできないと考えて、「懲戒解雇としては無効でも普通解雇としては有効である」との主張がなされる場合があります。
このような主張が許されるのかについては、様々に議論されているところですが、これを許さないとした近年の裁判例として平成20年6月10日東京地裁判決をみてみます。
このケースは、合成樹脂加工製品の製造販売等を業とする会社で営業課長として働いていた従業員が懲戒解雇され、その有効性が争われた事例です。
裁判の中で会社側から懲戒解雇としての有効性だけではなく、普通解雇としての有効性も主張されたため、懲戒解雇として行った解雇を普通解雇として有効にすることが可能なのかという点が問題となりました。
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予測機能
この点について、裁判所は、まず、
「懲戒処分,とりわけ労働者から従業員の身分を奪う懲戒解雇においては,懲戒規定の罪刑法定主義的機能は重視されるべきである」
と指摘しています。
「罪刑法定主義的機能」という小難しい言葉が使われていますが、これは、要するに、どのような行為に対してどのような罰が下されるのかを懲戒規定で定めておくことによって、あらかじめどのような行為に対してどのような不利益が課されるのかを予測できるようにしておくことが大切であるということです。
懲戒解雇と普通解雇の違いを考えると・・・
続いて、裁判所は、懲戒解雇の場合は、その有効性が裁判上で争われた際に、解雇時に明らかにされた解雇理由があるのかどうかという点だけが問題となるのに対して、普通解雇の場合は、(特定の行為ではなく)労務を適切に提供できない状態全般が問題となるという点で違いがあることを指摘しています。
そして、このような点に照らすと、懲戒解雇に普通解雇を含むという解釈することはできないとして、懲戒解雇に普通解雇の意味が含まれているという会社の主張を退けました。
懲戒解雇と普通解雇の質的な違いを考えると、やはり、懲戒解雇として解雇しながら後になって普通解雇としての有効性を主張するなどということは許されるべきではありません。
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