就業規則による労働条件の変更の効力~役職定年制の導入

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就業規則とその変更

就業規則は、労働条件を統一的に定める職場のルールですので、その変更によって働く人は大きな影響を受けます。

「就業規則の変更によって労働条件が切り下げられそう」「切り下げられてしまった!」という場合に知っておきたい知識についてご説明したいと思います。

就業規則の変更と労働契約法

まず、就業規則の変更については労働契約法に大切なルールが定められています。

労働契約法9条本文

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

つまり、使用者(会社)といえども、就業規則を一方的に変更することによって労働条件を切り下げるということはできないのが「原則」なのです。

ただし、この原則には例外があります。

労働契約法10条

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

法律の条文を見ると、ごちゃっとして分かりづらいかもしれませんが、要するに

①変更後の就業規則を労働者に周知させていること
②就業規則の変更が「合理的なもの」であること

という条件を満たす時には、例外的に、たとえ労働者の合意がなくても、就業規則によって労働条件の切り下げを行うことが認められているのです。

したがって、「合意もしていないのに、就業規則の変更によって労働条件の切り下げがされそう」「切り下げられてしまった!」という場合には、上の二つの要件に照らして、それが許されるかどうかを判断することになります。

就業規則の変更による役職定年制の導入

例えば最近の裁判例(平成26年1月24日熊本地裁判決)で見てみます。

このケースは、役職定年制を導入する就業規則の変更が有効かどうかが争われました。

新たに導入された「役職定年制」は、役職ごとに定められた年齢に達すると以後は「専門職」として役職手当に代わる専門職等手当が支給されるようになり、その結果、55歳到達時以降、毎年10%の割合で給与を削減され、60歳で定年を迎える時には削減率が50%になるというものでした。

このような労働者に不利益を与える制度の導入を一方的に就業規則の変更で行うことが可能かどうかが問題となったのです。

不利益の程度が非常に大きい場合

裁判所は労働者の不利益の程度について、この制度の導入は

「役職定年到達後の労働者らの生活設計を根本的に揺るがしうる不利益性の程度が非常に大きなもの」

と評価した上で、このような不利益の大きさを考えると、就業規則の変更について合理性があると認められるためには、

「相当高度な経営上の必要性があり、かつ原告らが被る不利益を相当程度緩和させるに足りる代償措置が採られていることが必要」

としました。

その上で、裁判所は、職員の賃金を削減する必要性が一定程度あったことは認められるものの

①近い将来における破綻や合併等の危機が具体的に迫っているような状況であったとはいえないこと
②本制度は55歳以上の職員にのみ著しい不利益を与えるものであって、変更の相当性はあるとしても低く、不利益を緩和しうるだけの代替措置その他労働条件の改善がされたと認めることもできないこと

を指摘して就業規則の変更について「合理性なし」、したがって同意のない一方的な変更は無効と結論づけました。

労働者の受ける不利益の程度が非常に大きい場合は、就業規則の変更に合理性が認められるためには、経営上の必要性や代償措置について厳しく評価されることを示した判断といえます。

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