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就業規則の変更と周知のルールについて




就業規則の意味とその効力

職場の労働条件を定めた基本ルール

解雇や退職トラブルなど、労働トラブルについて弁護士のところに相談に行くときに持っていった方がいい書類の一つに会社の就業規則があります。

就業規則については、普段働いているときにあまり意識することはなく、もしかすると読んだこともないという方もいるかもしれません。

しかし、就業規則は、職場の労働条件等を定めたルールとして大変重要な意味があります。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成することが義務付けられています(なお、パート・アルバイトも当然人数に含まれます)。

労働条件の最低基準

就業規則の非常に大事な効力の一つは、もし就業規則に定められている基準を下回る労働条件を労働契約で定めていたとしても無効になるという効力です(労働基準法93条)。

つまり、就業規則で定められた労働基準が、労働条件の最低基準になるのです(なお、これに対して、就業規則の基準を上回る労働契約を締結することは自由です)。

したがって、もし、今まで、自分の職場の就業規則をまともに読んだことがないという方がいれば、現在の自分の労働条件が就業規則に定められている基準を下回っていないか、一度就業規則をよく読んでみることをお勧めします。

解雇事由と就業規則の記載

解雇との関係でいうと、就業規則には、どのような場合に解雇がされるかという事由(解雇事由)が必ず記載されています。

解雇が許されるかどうかの判断は、まずこの解雇事由があるかどうかという観点からなされるため、就業規則は解雇の有効無効を判断する上での出発点としてとても大事です。

(参考⇒解雇と解雇理由~どんなときに解雇が許されるのか

懲戒事由と就業規則の記載

また会社が懲戒処分をしようとするときには、あらかじめ就業規則に懲戒事由と懲戒の種類が記載されていなければいけません。(懲戒解雇とその理由

懲戒解雇の有効無効が争われるときにも、この就業規則に記載された懲戒解雇事由があるのかという観点からまず判断されますので、その意味でも就業規則の記載は大変重要です。

就業規則の周知義務

さて、この就業規則については、法律上、各作業場の見やすい場所での常時掲示もしくは備え付け、または書面の交付により労働者に周知させなければならないとされています。(労働基準法106条)

では、このような周知手続きが採られていな場合、就業規則に効力は認められるのでしょうか。

この点が問題になったのが平成15年10月10日最高裁判決の事案です。

この事件は、化学プラント等の設計、施工を目的とする株式会社で労働者が懲戒解雇されたことから、会社の代表者らに対して損害賠償を求めて提訴した事案です。

このケースで最高裁は

「就業規則が拘束力を生ずるためには、その内容の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていることが必要である」

という判断を示しました。

つまり、周知手続きがとられていなければ就業規則に効力は認められないのです。したがって、就業規則に基づいて不利益を受けるという場合(懲戒処分を受けた場合など)には、そもそも就業規則が周知されているのかをよく検討することが有益です。

就業規則の変更は許されるか

これまで説明してきたように就業規則は、労働条件を統一的に定める職場のルールです。

ところが、その就業規則の変更によって労働条件が不利益に変更される場合があります。
このような就業規則による労働条件の不利益変更がどのような場合に許されるのかについてみていきたいと思います。

就業規則の変更と労働契約法

まず、就業規則の変更については労働契約法に大切なルールが定められています。

労働契約法9条本文

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

つまり、使用者(会社)といえども、就業規則を一方的に変更することによって労働条件を切り下げるということはできないのが「原則」なのです。

ただし、この原則には例外があります。

労働契約法10条

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

法律の条文を見ると、少々分かりづらいかもしれませんが、要するに

①変更後の就業規則を労働者に周知させていること
②就業規則の変更が「合理的なもの」であること

という条件を満たす時には、例外的に、たとえ労働者の合意がなくても、就業規則によって労働条件の切り下げを行うことが認められているのです。

したがって、「合意もしていないのに、就業規則の変更によって労働条件の切り下げがされそう」「切り下げられてしまった!」という場合には、上の二つの要件に照らして、それが許されるかどうかを判断することになります。

就業規則の変更による役職定年制の導入

具体例として裁判例(平成26年1月24日熊本地裁判決)を見てみます。

このケースは、役職定年制を導入する就業規則の変更が有効かどうかが争われました。

新たに導入された「役職定年制」は、役職ごとに定められた年齢に達すると以後は「専門職」として役職手当に代わる専門職等手当が支給されるようになり、その結果、55歳到達時以降、毎年10%の割合で給与を削減され、60歳で定年を迎える時には削減率が50%になるというものでした。

このような労働者に不利益を与える制度の導入を一方的に就業規則の変更で行うことが可能かどうかが問題となったのです。

不利益の程度が非常に大きい場合

裁判所は労働者の不利益の程度について、この制度の導入は

「役職定年到達後の労働者らの生活設計を根本的に揺るがしうる不利益性の程度が非常に大きなもの」

と評価した上で、このような不利益の大きさを考えると、就業規則の変更について合理性があると認められるためには、

「相当高度な経営上の必要性があり、かつ原告らが被る不利益を相当程度緩和させるに足りる代償措置が採られていることが必要」

としました。

その上で、裁判所は、職員の賃金を削減する必要性が一定程度あったことは認められるものの

①近い将来における破綻や合併等の危機が具体的に迫っているような状況であったとはいえないこと
②本制度は55歳以上の職員にのみ著しい不利益を与えるものであって、変更の相当性はあるとしても低く、不利益を緩和しうるだけの代替措置その他労働条件の改善がされたと認めることもできないこと

を指摘して就業規則の変更について「合理性なし」、したがって同意のない一方的な変更は無効と結論づけました。

労働者の受ける不利益の程度が非常に大きい場合は、就業規則の変更に合理性が認められるためには、経営上の必要性や代償措置について厳しく評価されることを示した判断といえます。

持ち出し厳禁といわれているのですが・・・

最後に、就業規則を巡るちょっと変わった問題をとりあげます。

様々な労働トラブルについて解決の道を探る上では、会社の就業規則をきちんと検討することが必要です。そのため、私のところに相談に来られる方には、「会社の就業規則の写しがあったら、持ってきて下さい」といつもお願いしています。

ところが、時々「持ち出し厳禁と言われているのですが良いでしょうか」と相談者に聞かれることがあります。

既にご説明したように本来就業規則は、それが有効となるためには労働者に対して周知をさせなければならないものです。そのルールをきちんと検討するために写しをとる行為が責められるいわれは全くないのですが、会社から強く言われると不安を感じてしまう相談者もいらっしゃるのだと思います。

そこで、就業規則をカメラで撮影することが許されるのかについて触れられた裁判例(大阪地裁平成26年10月10日)をご紹介したいと思います。

この事案は、バスの運転手に対して行われた自宅謹慎処分や懲戒解雇処分が争われた事件ですが、その中で会社側が、労働者が就業規則を無断で写真撮影した上で外部に持ち出した行為を問題として、これを懲戒処分の理由に挙げたのです。

これに対して裁判所は、

①就業規則は,使用者が労働者に対し周知させなければならないものとされており(労働基準法106条1項),労働者がこれをデジタルカメラで撮影したとしても,違法な行為とはいえない。

②労働者が就業規則の撮影データを提供した相手は,本件労働審判の申立てを委任した弁護士であるから,その提供行為も,何ら企業秩序に違反するものと評価することはできない。

③したがって,労働者の行為は,何らの懲戒事由にもあたらないというべきである。

と判断しました。

極めて当然の判断ですが、このような行為が問題視されるいわれは全くないということをご理解頂ければと思います。

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