付加金はどのような時に認められるか

付加金とは

使用者が、法律の規定に違反して、解雇予告手当、休業手当、時間外労働の割増賃金を支払わなかった場合、裁判所は、労働者の請求に基づいて、未払い金のほか「これと同一額の付加金」の支払いを命じることができる、とされています(労働基準法114条)。

法律に違反して未払いになっている場合には、未払い分だけの支払いでは済まなくなるとすることによって、割増賃金等を定めた法律の規定が守られるようにする趣旨です。

労働者の側からしてみると、未払いとなっている金額の倍額の支払いを受けられる事になります。

これが付加金の制度です。

なお、付加金の請求は「違反のあった時から2年以内」にしなければならないとされている点に注意が必要です。

付加金の額

法律の規定上、「裁判所は、・・・・支払いを命じることができる」とされていることからも分かるように、どのような場合に、どれだけの付加金の支払いが命じられるのかというのは、一概に言えないところで、裁判例でも、未払い額と同額の付加金を認める例、一部についてだけ認める例、まったく認めない例など様々なケースがあります。

例えば、平成21年12月25日東京地裁判決は、付加金について

「裁判所は、法律違反の理由や程度などを総合的に考慮して、支払いを命じるか否か、支払いを命じる場合には、いくらの金額の支払いを命じるかを決定すべきである」

とした上で

「支払い義務の有無について争ってきた会社の態度(管理監督者に該当するという主張や、超過勤務手当の基礎となる金額に含めるべき手当の範囲について争ってきました)がことさらに悪質なものであったとは認められない」

として、未払い額の30%の限度で付加金の支払いを命じています。

一方、平成25年2月28日東京地裁判決は

「裁判所は、諸般の事情を考慮して、付加金の支払いを命ずることが不相当であるとして、支払いを命じないことができるが、支払いを命じる場合には、特別の事情が認められない限り、未払い金と同額の支払いを命じるべきである」

とした上で、当該ケースでは、

「会社は合理的な理由もなく割増賃金を一切支払っていないのであるから付加金の支払いを命ずることが不相当である場合にもあたらないし、付加金の額を減額すべき特別の事情もない」

として、未払額と同額の付加金の支払いを命じました。

その他の具体例

そのほかに、最近の裁判例からいくつかのケースをピックアップしてみました。

未払い金と同額の支払いを認めたケース

特段の理由を示さずに未払い金と同額の支払いを認めているケース(平成25年12月25日東京地裁判決)もありますが、理由を具体的に述べている例としては例えば以下のような裁判例があります。

≪平成25年9月26日横浜地裁判決≫

労基署からの是正勧告を受けるまで,課長補佐を管理職として取り扱い、時間外割増賃金を支払わないこととしたために、課長補佐職以上の者について労働時間の管理を十分に行わなかったという会社の対応が、「使用者として不適切であるといわざるを得ない」と指摘した上で、未払い金と同額の支払いを命じています。

≪平成25年9月24日奈良地裁判決≫

時間外労働、休日、深夜労働が、年平均で1200時間を上回っていたこと等に照らすと、不払いが不法行為上の違法とまで評価できないことや、使用者が従業員からの労働状況の改善要求に対して一定の応答をしていたことを考慮したとしても、付加金の支払いを命ずるのが相当であり、また減額すべき理由も認められないとして、未払い金と同額の支払いを認めました。

≪平成25年3月26日奈良地裁判決≫

会社が、訴訟前及び後に、一部の未払い賃金については支払ったものの、訴訟の中で、根拠を示さないまま不就労時間がある旨の主張をくり返すなどしてきたという点を指摘した上で、未払い金と同額の支払いを命じています。

一部について付加金の支払いを認めたケース

≪平成25年10月9日京都地裁判決≫

①管理監督者にあたるとして原告に対して時間外手当を全く支払っていなかったことは悪質である、としながら、他方で②訴訟前の段階で未払い残業代の一部について支払う旨の通知をしていること、を指摘して、未払い額の約3割の限度で付加金の支払いを命じました。

≪平成25年5月24日長野地裁松本支部判決≫

①会社は、不合理な主張を展開して割増賃金の一部についても支払いに応じようとしないこと②会社規模等に照らしても、被告において労働法の知識が欠如していたともおよそ考えがたいことを指摘した上で、未払い額の7割の限度で付加金の支払いを命じました。

≪平成25年4月17日津地裁四日市支部判決≫

①タクシー乗務員の事業場外での休憩時間を把握するのはきわめて困難であり、裁判所の判断も、唯一絶対の事実認定というわけではない②したがって,被告が、月々の賃金支払をしていく中で裁判所と同様に判断を行い、時間外手当を支給することができたとは考えられない、という点を指摘しながら、他方で③休憩時間の取得について業務命令を発する等の管理が十分になされていなかったこと④割増賃金の算定基礎となるべき賃金の計算方法が適切でなかったことなどの事情を挙げて、結論として未払い額の5割の限度で付加金の支払いを命じています。

訴訟の途中で未払い金を支払った場合

訴訟の途中で会社が未払い金を労働者に支払った場合にも裁判所が付加金の支払いを命じることができるのか、という問題もあります。

この点が争われた近時の最高裁判例(平成26年3月6日判決)をご紹介したいと思います。

この事案では、第1審で労働者からの残業代請求が認められ、未払金と付加金の支払いを命じる判決が出されました。

これに対して会社は控訴しましたが、控訴審の審理が終結する前に、第1審判決で認められた未払い残業代の全額を労働者に対して支払ったのです。

控訴審判決は、その上でなお会社に付加金の支払いを命じる判決を出しましたが、最高裁は、こうした場合に付加金の支払いを命じることはできないと判断しました。

その理由としては

①付加金の支払義務は、使用者が未払割増賃金等を支払わない場合に当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所が付加金の支払を命ずることによって初めて発生するものである。

②したがって、審理が終結するときまでに使用者が未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したときには、もはや、裁判所は付加金の支払を命ずることができなくなる

とされています。

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