精神的疾患に基づく解雇の有効性が争われた裁判例




精神的疾患に基づく解雇

先般、厚生労働省から「平成23年度の脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」のまとめが発表されました。

これによると、うつ病などの精神障害の労災請求件数は3年連続で過去最高、支給決定件数も325件と過去最高だったということです。

高まる職場でのストレスを背景に精神的な疾患に陥る人の数は着実に増加しています。

そのような精神疾患後の解雇の効力について判断した近年の裁判例として、東京地裁平成22年3月24日東京地裁判決を紹介します。

2度の休職と復職→解雇

この事案では、うつ病を発症した学校の教員が、数年間にわたって通院治療をしながら勤務していましたが、症状が悪化したため、約9カ月間の休職をした後にいったん復職をしました。

ところが、数日しか出勤することができずに間もなく再度の休職をせざるを得なくなり、さらに約2ヶ月後に再度の復職を果たしたものの何度か欠勤をする状態であったため、学校側は「専任教員の業務に堪えられない」という理由で退職勧奨をしました。

これに対して、この教員が退職を拒否し、あらためての休職を希望したところ、学校側は休職を認めず「心身の故障のため職務遂行に支障がある」いう理由で解雇をするに至ったのです。

実は、教員が2回目の復職を急いだ事情として、学校側が休職可能期間について就業規則を間違って解釈して教員に通知していため、教員としては、早く復職しなければ退職しなければいけなくなると思っていたという背景がありました。

回復可能性があるか?

裁判では、原告に回復可能性が認められるのかどうか、という点が争点の一つとして問題となりました。

この点について裁判所は、原告のうつ病が軽いものではなく、また学校側が無理なく復職できるよう相当慎重な配慮をしていたにも関わらず円滑に復職することができずに欠勤によって生徒に迷惑をかけることがあったことから、

「学校が、これ以上業務を続けさせることは無理と結論づけて退職させるとの意思決定をしたのはやむを得ない面もある」

としながらも

① 休職前に投薬治療を受けながら選任教員として業務をこなした時期が数年あること

② 教員としての評判がよく、学校への貢献をもたらした実績があること

③ 病院の診断書に「症状が安定すれば復職も可能と思われる」と記載されていること

④ 学校側が就業規則の解釈を間違っていなければ、原告は復職の時期を遅らすことができたこと

⑤ 原告の症状が、解雇後に、かなり回復しており、医師も復職の可能性を肯定する証言をしていること

を指摘して、原告には回復可能性が認められるとしました。

使用者に求められる慎重な配慮

その上で、裁判所は、

原告は、教員としての資質等には問題がなく、うつ病を発症しなければ解雇されることはなかったのであるから、学校としては、解雇にあたって、「回復可能性について相当慎重に考慮した上で行うべき」であった

としたうえで、就業規則を誤って解釈して休職期間について誤った通知をした上、原告の回復可能性が認められるにも関わらず、主治医に問い合わせることもしないまま(裁判所はこの点をメンタルヘルス対策の不備と批判しています)、回復可能性がないものと断定して解雇に踏み切ったことからすると、

本件解雇は「やや性急なものであったといわざるを得ず、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」

として、無効と判断しました。

裁判所も指摘する通り、就業規則を誤って解釈して休業期間について間違った通知をしたり、主治医に治療経緯や回復可能性について問い合わせをしないというのは、やはり大きな不備と言わざるを得ません。

回復可能性の判断にあたって求められる使用者の配慮のあり方を考える上で参考になる裁判例です。

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