競業避止の誓約書が有効と認められた裁判例

競業避止義務の誓約書に効力があるのか?

「退職時に誓約書にサインしてしまったけれど、後から“無効”にはできないのか…?」

実は、競業避止義務に関する誓約書については、無効と判断された例もあれば、有効と認められた例もあります。

本記事では、競業避止義務の誓約書に効力を認められ退職金の加算分などの返還が命じられた裁判例をもとに、どのような場合に競業避止の誓約書が有効と判断されるのかを解説します。

なお、そもそも競業避止義務とは何か、有効性の判断基準はどのようなものかを整理してから読み進めたい方は、まず以下の記事をご覧ください。
退職後の競業避止義務~誓約書は拒否できるか?

また、競業避止義務全般について、まずはざっと知りたいという方にはこちらの記事をおすすめします。
早わかり競業避止義務FAQ

紹介する裁判例:平成17年6月27日東京地裁判決

事案の概要

このケースでは、コピー機・OA機器の製造販売を行う会社の営業部長が、会社の「フレックスリタイアメント制度(FR制度)」を利用して退職しましたが、その際、次のような内容の誓約書を提出していました。

  1. 退職後5年間、会社の事業と競合する事業を経営しないこと
  2. これに違反した場合は、支給された援助金および退職金加算分を返還する

にもかかわらず、元従業員は退職から2年数ヶ月が経過した頃に、コンピュータOA機器の販売・保守を行う新会社を設立し、かつて在籍していた会社やその販売店の顧客に対してOA機器等の営業活動を行っていました。

そこで、会社は、退職時に支給した援助金と退職金の加算分(合計で3900万円余り)の返還を求めて訴えを起こしたのです。

裁判所が有効と判断した理由

この事案で従業員が提出した誓約書は、地域や具体的な職務態様などは全く限定しないで、5年間にわたって一切の競合行為をしないことを誓約するという意味では、非常に広範なものでした。

しかし、裁判所は、この誓約の効力を認め、会社の請求を認容しました。

その理由として、裁判所は、

  1. FR制度は,第1次的には社員の自己実現を会社が支援するという趣旨で導入されたものであること
  2. 被告は、FR制度の適用を受けるためには本件誓約書を提出する必要があることを認識しており、原告がFR制度適用者から誓約書の提出を求める手続に問題があったとはいえないこと
  3. 援助金と退職金加算分は、月額給与の74か月分を超えており、相当有利な条件であったこと

を指摘しています。

ポイントは「代償措置」の有無とバランス

この判決では、たとえ競業禁止の範囲が広くても、代償措置が十分であれば、競業避止義務は有効とされうることが示されています。

「退職後の行動を制限するのであれば、それに見合う補償があるかどうか」が、合意の有効性を左右する大きなポイントだといえるでしょう。

まとめ

退職時に提出する競業避止義務の誓約書については、署名したからといって必ず効力があるとは限りません。

ただし、今回の裁判例のように、明確な合意と十分な代償措置がある場合には、有効とされる可能性もあります。

「あとから違反とされて損害賠償を請求された…」ということがないよう、慎重な判断が必要です。

退職後に「競業避止義務に違反している」と元の会社から通知を受けた場合の対応については、以下の記事をご覧ください。
「競業避止義務に違反している」と言われたときの正しい対応法

一方、就業規則による競業避止義務が無効とされた裁判例もあります。あわせてご確認ください。
就業規則の競業禁止義務規定に効力が認められなかった裁判例

また、退職金の返還請求が否定された別の裁判例もこちらで紹介しています。
競業避止義務違反による退職金の返還請求が否定された裁判例

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