退職後の団体交渉に応じる義務を認めた裁判例

退職後の団体交渉

退職後の労災申請事例として、これまでたびたびアスベストによる労災の問題を取り上げてきましたが、粉じんに曝されてから非常に長期間が経過してから発症するというアスベスト関連疾患(肺がん、中皮腫など)の特徴に着目して出されたとても興味深い判断として、平成21年12月22日大阪高裁判決があります。

この事案では、会社を退職した元従業員2名と、死亡した元従業員の妻1名が、会社に対してアスベストの使用実態を明らかにさせることなどを求めて、労働組合に加入して団体交渉を求めました。

ところが、会社は退職者であるから「使用者が雇用する労働者」には該当しないとして団体交渉を拒否し、さらにこのような会社の対応の是正を求めて申し立てられた救済申立手続きでも、労働委員会が同じ理由で申立を却下したため、決定の取消しを求めて裁判が起こされたというものです。

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団体交渉に応じる義務

1審の神戸地方裁判所も、2審の大阪高等裁判所も、労働組合の請求を認めて決定を取り消す判断をしました。

大阪高裁は、その理由の中で

①元従業員が、アスベストに曝される可能性のある業務に従事していたこと

②したがって、会社でのかつての業務が原因で健康被害が発生している可能性があること

などからすると、会社としては、石綿の使用実態を明らかにしたり、健康被害の診断,被害発生時の対応等の措置をとることが可能であり、かつ、それが社会的にも期待されるという指摘をしています。

また、アスベスト関連疾患は非常に長い潜伏期間があり、長期間経過した後に症状が発生することや経緯等を踏まえると、退職から長期間(短い元従業員でも6年)が経過していることを元従業員の責任とするのは酷であるとして、会社は団体交渉に応じる義務があるとの判断をしました。

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