「会社から不当解雇されました。納得がいかないので、慰謝料請求をしたいのですが、相場はどれくらいですか?」こんな質問をよく受けます。
ここでは、そんな不当解雇と慰謝料の問題について見ていきます。
納得がいかない、でもどうすればいいか分からない・・・そんな時は、専門家に相談することで解決の光が見えてきます。労働トラブルでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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慰謝料とは
まず前提として用語について整理しておきます。
慰謝料とは、精神的な損害、つまり精神的に苦痛を被ったことに対して認められる賠償です。
損害には、大きく言って「財産的な損害」と「精神的な損害」とがあります。
例えば、交通事故にあって怪我をしたような場合を考えると、治療費がかかったり、仕事を休まなければならず給料が減った、というのが「財産的損害」です。これに対して、通院することによって被った苦痛が「精神的な損害」です。
このような財産的な損害と精神的な損害のうち、精神的な損害を慰謝するために支払われるのが慰謝料ということになります。
不当解雇と慰謝料請求
会社から不当な解雇をされた場合、怒りも湧いてくるでしょうし、大変な苦痛や不安を感じることから、「許せない!慰謝料請求だ!」となるのは自然な気持ちだと思います。
もっとも、気をつけなければならないのは、現在の裁判実務では、単に「解雇に理由がなかった」ということだけでは慰謝料請求を認めていないという点です。
不当な解雇、言い換えれば、理由のない解雇については、法律上、無効とされています(労働契約法16条)が、解雇が無効というだけでは慰謝料請求は認められないのです。
慰謝料請求が認められるためには、解雇が無効というだけではなく、解雇がされた経緯や、解雇が無効と判断された事情等を踏まえて、個別具体的に、慰謝料請求が認められるだけの「違法性」があることが必要となります。
不当解雇と給料請求
「解雇が無効というだけでは慰謝料請求は認められない」と聞くと「やられ損じゃないか!」と思うかもしれませんし、その気持ちもよく理解できます。
ただ、そもそも不当解雇をされた場合に、会社への請求としてまず第一に考えることになるのは給料の請求です。
会社が解雇を主張し続けると、労働者は働くことが出来ませんが、このように労働者が働けないのは会社が不当な解雇に固執して労働者が働くことを拒んでいるからです。
そこで、会社が解雇を主張して労働者が働くことを拒んでいる間は、労働者は、たとえ働いていなくても給料を全額請求できるのです。
そのため、不当解雇をされた場合の原則的な請求内容としては「労働者としての地位を認めよ」「給料を全額支払え」ということになります。そして、あまりにもやり方がひどいという場合には、慰謝料請求を付け加えるということになるのです。
不当解雇された方の中には、「こんなひどい会社はもうこりごりだから、労働者としての地位も認めてもらわなくて良いし、給料もいらない。慰謝料だけもらえれば良い」という方もいると思います。
しかし、上で書いたように、慰謝料請求が認められるためには、単に解雇が無効であるというだけにとどまらない違法性が必要となります。そうすると、最初から慰謝料請求だけに絞って請求をしていくというのはあまり得策とは言えません。
不当解雇と慰謝料の相場
たとえば、当初、業績不振を理由とする「整理解雇」として解雇が行われながら、途中から懲戒解雇の主張がされるに至り、その効力が争われた事案(平成22年10月27日東京地方裁判所判決)では、慰謝料として30万円が認められました。
また、健康保険組合で勤務していた原告に対して行われた整理解雇の効力が争われた平成18年11月29日東京地裁判決では、
- 退職金規定の改定等に反対する原告が外部機関に相談することを快く思わず、整理解雇の要件がないのにも関わらず強行された解雇であること
- 原告が整理解雇当時妊娠しており、そのことを被告も知っていたこと
- 整理解雇の撤回を求める原告の要求が拒否されたこと
等の事情が指摘された上で、慰謝料として100万円が認められました。
いずれの事案も解雇の悪質性が著しく、裁判所もその点を厳しく批判して慰謝料まで認めていますが、一方で、認容されている金額は「思ったよりも少ない」というのが一般の方の実感ではないでしょうか。
一般的に、慰謝料の金額は、一般の方が考えておられるほど高いものではないのです。不当解雇に対して何を請求すべきか、どのように行動すべきかについては、こうした点も考慮した上で決める必要があります。
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そんなとき、今後の行動を考える上で、実際の裁判例で解雇の効力についてどのような判断されているのかを知ることは大変役立ちます。
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