業務上のミスを理由に会社から損害賠償請求をされたときに知っておきたいこと

在職中のミスを理由とする損害賠償

退職の場面でトラブルが生じたとき、あるいは、何らかのトラブルがあって退職するというときに、関連してよく出てくる問題として、在職中のミスを理由とする会社の従業員に対する損害賠償請求の問題があります。

「あなたのミスで会社はこれだけの損害を被ったのだから、その分を賠償してもらう」というような話が、話し合いの中で牽制材料として出てきたり、あるいは実際に請求されたりします。

相談を受けていると、常識的に考えてもあり得ないような高額の請求をちらつかされているようなケースもあります。

過失の存在

まず、そもそも会社の従業員に対する損害賠償請求が成り立つためには、当然のことながら従業員に過失がなければいけません。

ご相談をお受けしていると、過失があるとは到底言えないようなものについてまで、会社が損害賠償を口にしているケースをたくさんみます。

通常起こりうるようなミス

また、たとえ過失があるとしても、それが業務を行っていれば通常起こりうるような些細な過失である場合は、会社としては、いわば業務の中に折り込みずみのものとして考えるべきものですので、あらためて従業員に対する賠償請求をすることは出来ないというべきです。

損害はあるのか

さらに、たとえ従業員に、上記のような「通常起こりうるような些細な過失」を上回るような過失があるという場合も、会社が損害賠償請求できる範囲には一定の限界があります。

まず、当然のことながら、会社が賠償請求をするためには、会社に「損害」が発生していなければいけません。

しかも、会社が賠償請求しうるのは「過失から通常発生するといえる損害」に限られます。

異常ともいえるような高額な請求がされている相談ケースの多くは、そもそも過失行為から発生した損害とはいえないようなものまで「損害」に含めて請求していたりします。

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「相当な限度」という制約

さらに、「過失行為から通常発生する」といえる損害についても、会社は、当然にその全額を従業員に対して賠償請求出来るというわけではありません。

会社は、普段、一方では従業員の働きによって利益を得ているのですから、ひとたび従業員にミスがあって損害が発生した場合に、その負担を従業員が全て負わなければならないというのでは不公平です。

そこで、会社が従業員に対して請求出来るのは、従業員の過失の程度や、会社の関与、過失を防止するための会社の対策として何がとられていたか等、様々な事情を考慮して「相当な限度」に限られます。

事前に賠償額について取り決めておくこと

なお、事前に、従業員のミスがあった場合の損害賠償額について取り決めをしておくことは労働基準法上禁止されており(労働基準法16条)、仮にこのような契約があった場合でも無効となります。

給料全額払いの原則

また、たとえ会社から従業員に対する損害賠償が許される場合でも、給料は全額支払わなければならないという「全額払いの原則」が法律上定められていますので、賃金から一方的に天引きすることは許されません(労働基準法24条、17条)。

会社から一方的な天引きがされる、あるいはされそうという場合は、後々会社から「従業員の同意のもとで相殺をした」と主張されないように、明確にNOの意思を伝え、全額の支払いを求めることが大切です。
・具体例を見てみる
居眠りが原因で機械が壊れた!~会社から従業員に対する損賠賠償請求とその結末~

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shita




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