会社の車で事故を起こした場合修理費用を全額負担すべきなのか?




会社からの損害賠償請求

会社と従業員との間でトラブルが生じたときに、会社が従業員の行為によって損害を被ったとして損害賠償請求を持ち出してくることというのはよくあります。

もっとも、会社が従業員の行為によって損害を被ったという場合も、当然にその全額を賠償請求出来るというわけではありません。

信義則上相当な限度

この点については、最高裁の判例で、以下のような判断が定式化されています。

使用者が,その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、被用者に対し,損害の賠償を請求することができるにとどまる

少し長くて分かりづらいかもしれませんが、要する、会社が賠償請求出来るのは、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当な限度」に限られるのです。

交通事故による車の損傷

もっとも、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当な限度」というのは具体的にはどれくらいなのかというのが問題です。

その一つの例として、平成12年11月21日京都地裁判決と、その控訴審である平成13年4月11日大阪高裁判決を紹介します。

この事案は、トラックの運転手をしていた従業員が、業務中にスリップ事故を起こし、会社の4トントラックを損傷させたとして、会社が従業員に対して、修理費用等を請求した事案です。

5%の負担

京都地裁判決は、会社が請求出来るのは「損害の公平な分担という見地から信義則上相当な限度に限られる」としたうえで、

① 会社は、車両保険等に加入することにより車両損害を分散させる手だてをとっていなかったこと

② 原告の従業員が交通事故を起こすことが日常茶飯事であったということは、原告における労働条件や従業員に対する安全指導、車両整備等にも原因があったものと推認されること

③ 原告に従業員が長く定着しないことからも、原告における労働条件に問題があったことが推認されること

④ 本件事故の発生について、従業員に重大な過失があったとは言えないこと

などを指摘して、会社が従業員に対して請求出来るのは、損害額(修理費用)の5%の限度にとどまる、と結論づけました。

会社がこれを不服として控訴した大阪高裁でも、同じ結論が維持されています。

特に会社が、「1審判決が、車両保険に加入していなかったことや労働条件に問題があったことを重視しているのは不当である」と主張したのに対して、大阪高裁判決は、本件では、会社の車両保険加人の有無や、労働条件、勤務態度等の諸事情を総合的に考慮して判断すべきであると改めて述べています。

こういった交通事故の例に限らず、不注意で会社の機会や備品を破損してしまったりすることは、よくあることです。また、取引関係が複雑化する中では、従業員のちょっとした不注意によって思わぬ大きな損害が生じることもありえます。

そんな時、会社が、当然に損害の全額を従業員に対して賠償請求出来るかのようにふるまうことがありますが、決してそうではないことをよく覚えておく必要があります。

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