解雇通知書を渡されたら?すぐに取るべき行動と注意点を解説

ある日突然会社から解雇通知書を渡されたとき、一体どのように対応すればいいのか、さっぱりわからないのが普通だと思います。

仕事を失うことの怒りや困惑、将来への不安で何も考えられなくなる人もいるかもしれません。しかし、そんな人生の一大事だからこそ、冷静に状況を整理し、今何をするべきかを考える必要があります。

ここでは、解雇通知書を渡されたときにするべきことについて解説していきます。

解雇通知書とは

そもそも解雇通知書とは、会社が雇用契約を一方的に終了させる意思を労働者に対して通知する書面です。

直ちに解雇するという場合もあれば(これを即時解雇といいます)、将来の日付を記載して「○月○日付けをもって解雇します」と解雇を予告する形をとる場合もあります(この場合の書面を解雇予告通知書ともいいます)。

なお、解雇予告の意味については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
解雇予告・解雇予告手当とは?|必要な場面・例外・計算方法・請求手順を弁護士が解説

解雇理由証明書の交付を求める

このような解雇通知書を渡された時、まずは何はともあれすべきなのは、解雇理由証明書の交付請求です。

解雇理由証明書とは解雇の理由を記載した書面で、労働者が請求した場合、使用者はこれを交付することが義務づけられています。(労働基準法22条1項2項)

もっとも、注意すべきなのは「労働者が請求した場合」とされている点です。労働者が請求をしなければ受け取れませんので、解雇を告げられたという場合には、速やかに解雇理由証明書の交付を請求しましょう。

解雇通知書には、ごく簡単に「就業規則の○条○項に該当するため」などと記載されている場合が多いのですが、これだけでは、どのような行為が問題となっているのか分からず、解雇の理由を示していることにはなりません。

そこで、解雇理由証明書によって、具体的にどのような行為が、就業規則のどの条項に該当し、解雇理由となるのかを書面の形ではっきり示してもらうのです。

なお、就業規則の写しが手元になく、「就業規則の○条に該当する」と言われても分からないという場合は、あわせて就業規則の写しの交付も求めましょう。

就業規則の意味や、持ち出し厳禁とされている場合の対応については、次の記事をご覧ください。
就業規則の変更と周知のルールについて

解雇理由証明書の請求方法としては、口頭で「解雇理由証明書をください」と言ってももちろん良いのですが、うやむやにされたりしないように書面やメールなど、後に残る形で請求することが望ましいです。

「○月○日に、解雇通知書を受け取りましたが、解雇理由を具体的に明らかにして頂きたく、解雇理由証明書を交付してください」といった本文と、日付、差出人を記載した書面を会社に出しましょう。その際、提出した書面の写しを手元に残しておくのを忘れないでください。

争いが本格化した後で出される解雇理由証明書は、いわば「後付けの理由」も含めて入念に作成される場合があります。

そのため、本当の解雇理由を明らかにさせるためにも、出来れば解雇直後になるべく速やかに解雇理由証明書の交付を求めるのが良いでしょう。

解雇理由証明書の請求については、こちらの記事で詳しく解説しています。
解雇理由証明書とは?|請求方法ともらえないときの対応を解説

弁護士に相談する

会社に解雇理由証明書を出させ解雇の理由がはっきりしたら、これを持って速やかに弁護士に相談しましょう。

会社は、どのような場合でも労働者を解雇できるわけではありません。解雇が有効となるためには「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要となります。

しかし、「客観的合理的理由があるのかどうか」「社会的相当性があるのかどうか」というのは簡単に判断できるものではありません。

そこで、解雇に「客観的合理的理由」や「社会的相当性」があるのかどうかを専門家の立場から判断してもらうのです。

どのような場合に「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が認められるのかについて、詳しくはこちらをご覧ください。
その解雇、無効かも?許される解雇理由と認められないケースを徹底解説

なお、労働基準監督署に行って相談をするという方法もあります。

しかし、労働基準監督署の相談窓口では、解雇に関する一般的な知識は教えてもらえますが、具体的にあなたの事例で解雇が有効かどうかまで責任をもって判断してくれるわけではありません。

ましてや、会社に対して、解雇を撤回するように働きかけてくれるわけではありませんので、注意が必要です。

相談先については、以下の記事でも解説しています。
不当解雇されたらどこに相談すべき?労基署・弁護士・労組の比較と注意点を解説

弁護士に相談に行くタイミング

時間が経過すればするほど、不利益な事実が積み重なってしまったり、選択肢が狭まってしまう恐れもあります。

そのため、弁護士への相談はなるベく早急に行く方が望ましいと言えます。

なお、解雇理由証明書の交付請求と、弁護士への相談のどちらを優先すべきかですが、解雇の理由がはっきりしないまま弁護士のところに相談に行っても、解雇を争う余地について十分な判断ができない場合があることを考えると、解雇理由証明書を出させた上で相談した方が良いといえます。

ただし、自分で会社に対して解雇理由証明書の交付を要求することが難しいという場合もあるでしょうし、また、交付を求めたものの、会社が何だかんだと言って交付してくれないという場合もあるでしょう。

そのような場合は、解雇理由証明書の交付をめぐって無駄に時間を使う意味はありませんので、先に弁護士に相談に行き、弁護士から、会社に対して解雇理由証明書の交付請求をしてもらった方が良いでしょう。

退職を前提とした行動をとらないこと

上で説明した一連の行動をとる際には、退職届の提出や退職金の請求など、自分から積極的に退職を前提とするような行動をとらないように気を付ける必要があります。

「解雇を争う」とは、具体的には解雇が無効であることを主張するということになります。

解雇が無効である以上、従業員としての地位はまだ存在しているということになるのですから、例えば退職金の請求をすることはこれに矛盾する行動になってしまうのです。(なお、不当解雇に対して何が主張できるのかという問題についてはこちらで解説しています⇒不当解雇で慰謝料請求はできる?|相場・裁判例・給料請求との関係を解説

同じように、解雇予告手当の請求についても注意が必要です。

会社は、法律で定められた予告期間をおかずに解雇をする場合には、解雇予告手当を支払わなければいけませんが(⇒解雇予告や解雇予告手当が必要な場合とは?)、会社がこれを支払わない場合に請求して良いかという問題です。

解雇が無効であれば解雇予告手当の支払いを受ける根拠もないことになりますので、解雇の無効を主張しながら解雇予告手当を請求するのは矛盾する行動になってしまいます。

したがって、解雇自体を受け入れるというのであれば構いませんが、解雇を受け入れるかどうかまだ悩んでいるという場合には、解雇予告手当を請求するのは控えた方が良いといえます。

よく労働基準監督署に相談に行かれた方が、解雇自体に納得していないにもかかわらず「解雇予告手当の請求が可能ですよ」ということだけ教えられて解雇予告手当の請求をしてしまう場合があるのですが、解雇自体を受け入れるのかどうかをよく考えた上で、行動することが必要です。

会社が退職金や解雇予告手当を一方的に振り込んできた場合は、そのまま保管した上で、速やかに弁護士のところに相談に行き、弁護士から会社宛に、給料の代わりとして受領する等の通知を出してもらいましょう。

また、他の会社で働き始める時も注意が必要です。

会社に対して、解雇が撤回されればいつでも働く意思があることを明確に告知した上で働かないと、のちに退職を受け入れたことの根拠とされる恐れもあります。

不当解雇を争いながら、別の会社で働くときの注意点については、こちらで解説しています。
解雇を争っている間に別の仕事はできる?|給料・休業手当の扱いを解説

いずれにしても、解雇の効力を争うことを考えているのであれば、不用意な行動はとらずに、出来る限り早急に弁護士のところに相談に行くことが大切です。

解雇された場合の心配ごととしてこんな問題もあります。
解雇・懲戒解雇された場合に失業保険をもらえるか
解雇や懲戒解雇時の退職金はどうなるか

不当な解雇でお困りの方へ

不当な解雇に対してどう対応すべきかは、具体的な事情によっても変わってきます。ご自身の状況に照らして、今何をすべきかを知りたい方は、一人で悩まず弁護士にご相談ください。
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解雇の効力が争われた具体的な事例を知りたい方へ

「解雇されてしまった」「解雇されるかもしれない」

そんなとき、今後の行動を考える上では、実際の裁判例で解雇の効力についてどのような判断されているのかを知ることは大変役立ちます。

近年の解雇裁判例を解雇理由等から検索できるようにしました。ご自分のケースに近いものを探して、参考にして頂ければと思います。
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そんな悩みを抱えてお一人で悩んでいませんか。

身を守るための知識がなく適切な対応ができなかったことで、あとで後悔される方も、残念ながら少なくありません。

こんなときの有効な対策の一つは、専門家である弁護士に相談することです。

問題を法的な角度から整理することで、今どんな選択肢があるのか、何をすべきなのかが分かります。そして、安心して明日への一歩を踏み出せます。

労働トラブルでお困りの方は、是非お気軽にご相談ください。

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学生や新社会人はもちろん、働くことに迷いや苦しさを感じているすべての人へ。

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