労働審判~解雇を争うための手続きを考える・手続きの特徴から実際の流れまで

紛争解決機関を使った解決

解雇の効力を争う際、弁護士が入った交渉で話がつけばいいのですが、話がつかない場合には、裁判所などの紛争解決機関を使って解決を図ることになります。

解雇を巡って紛争になっている場面というのは、往々にして相当対立が激しくなっており、交渉で話がつくことはあまり見込めない場合が少なくありません。

そのような場合は交渉で時間をかけるよりは早く裁判所に持ち込んだ方が話が早いと言えます。

裁判所を使う手続きとしては、大きく言って

① 通常の裁判で決着をつける方法(本訴)
② 本訴前に仮に結論を出すことを求める仮処分手続き
③ 労働審判手続き

という3つの方法があります。

①の本訴は、いわゆる「民事裁判」ということで皆さんがイメージするようなものです。(詳しくはこちら→あなたの「裁判」のイメージ、正確ですか?

近年、民事裁判で結論が出るまでに要する期間は相当短縮されてきているようですが、それでも解決までには一定の期間を要します。

そこで、本訴前に仮に結論を出すことを求める手続きが②仮処分手続きです。

解雇が無効であることを主張して、従業員としての地位があることを仮に確認することを求めるとともに、本訴で結論が出るまでの生活のために、暫定的に給料を支払うように求めることになります。

この仮処分手続きは、③の労働審判制度が平成18年4月1日に始まって以降、申立件数が大きく減っており、スピード解決を求める時にとる手続きとしては労働審判手続きの比重が明らかに高まっているようです。

③労働審判手続きとは、個々の従業員と会社との間で生じた労働紛争を解決するために作られた手続きです。原則として3回以内の期日で結論を出すことになっており、通常裁判と比べて解決までのスピードが速いのが大きな特徴です。


労働審判手続きの判断者と場所

労働審判手続きは、裁判官1名と民間から選ばれた審判員2名の合計3名によって審理判断がされます。(労働審判員について詳しくはこちら→労働審判員

審理判断を行う場所は、法廷ではなく、ラウンドテーブルといって大きな机が置いてある部屋が使われ、審判体の3名と申立人側出席者、相手方出席者が一つのラウンドテーブルを囲みます。

期日には、代理人として弁護士を付けている場合でも、本人が必ず出頭します。

よく「相手方である会社の社長や関係者と出来れば顔を合わせたくない」とおっしゃる方がおられますが、期日においては、どうしても同じテーブルを囲む形で、会社の関係者の方とも顔を合わせることになります。

ただ、同じテーブルを囲むと言っても、基本的には、当事者同士がその場で直接話合ったり、言い合ったりというような場面があるわけではありませんので、過度に心配する必要はありません。

労働審判手続きの実際

実際の労働審判手続きの進められ方は、審判体の裁量にゆだねられている側面が強く主に裁判官の性格や考え方で大きく異なるのが実情ですが、大まかなイメージとしては以下のような進行になります。

期日は1回当たりおおよそ2時間程度が使われます。

第1回の期日では、まず、それまでに申立側から出された申立書及び証拠、相手方から出された答弁書及び証拠を前提にして、審判体(主に裁判官)から主に当事者に対してさらに詳しく事情を聴く質問がなされていきます。

事実関係については当事者自身の口から答えることが求められる場合が多いです。

この時にポイントとなるのは、裁判官から聞かれたことには「端的に」答えていくことです。

解雇退職をめぐる事件では、いろいろな背景事情も絡んだ複雑な対立がある場合が多く、裁判官から質問をされると、どうしても言いたいことがたくさん出てきてしまいます。

しかし、審判体としては、短時間の間にポイントを確認し解決に向けた落とし所を探る必要があるため、書面に書かれていることを前提にしながら、法的にあるいは紛争の解決にとって重要な点に絞ってさらに質問をしていきます。

質問されたことに直接答えずに長々と話すと、話が分からない人だと思われて無駄に損をするばかりか、場合によっては、端的に話したくない事情があってごまかそうとしているのではないかと思われてしまう可能性もあります。

したがって、あれもこれもと話すのではなく、まず何を聞かれているのかを落ち着いて良く考え、端的に答えていくことが大切です。

話し合いと審判

こうした質問による聴き取りを通じて、審判体は、当該事案をどのような線で解決すべきかという見通しを形成していきます。

その上で、審判体としての考え方を一定示しながら、話し合いによる解決を探る段階になります。この場面では、双方が交互に入室し、審判体と話をするなどの形で話し合いが行われます。

話し合いがまとまれば、その内容を調書にして確認し、終了となりますが、第2回、第3回と期日を重ねても話し合いがまとまらない場合は、最終的には、審判体が「審判」という形で解決方法を示すことになります。

これを両者が受け入れ、異議を述べなければそのまま終結しますが、一方でもこれに不満があるとして異議を述べると、通常訴訟(本訴)に移行することになります。

労働審判を選ぶか本訴を選ぶか

労働審判は解決までのスピードが速い半面、どうしても話し合いによる解決の要素が強くなるため、あまりに複雑な事件、徹底的に双方の主張が対立し妥協の余地がないような事案には向いていないと言われます。

そのような案件の場合、仮に労働審判を選択しても、審判が出された後に異議が出されれば通常の訴訟に移行してしまいますので、それならば最初から通常の裁判を選択した方が話が早いとも言えます。

もっとも、労働審判の審理は口頭での質疑応答などが活発に行われるため、訴訟の場で行われる証人尋問手続きのような「構えた」手続きでは出てこないような事実が、ポロっと出てきてしまうということもあります。

そういった意味で、訴訟に移行する可能性が高いという場合も、いったん労働審判で前哨戦をやっておくことに意味がある場合もありうるでしょう。

したがって、決して単純に言えるわけではありませんが、ごくおおざっぱにいってしまえば、スピードを重視するか(労働審判)、徹底的にやりあうことを重視するか(本訴)というような判断枠組みになります。

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