試用期間と解雇~どのような場合に本採用の拒否が許されるのか

「本採用はしません」!?

新しい職場で働き始めたAさん。

最初の2カ月は試用社員ということで、気持ちも新たに働き始めたものの、しばらくすると「あなたにこの仕事は向いていない。本採用はしない」と言われ、大ショック。

仕事はほかの人と同じようにきちんとやっているし、どう考えても、性格的にそりが少し合わないなと思った上司から嫌われただけとしか思えない。

でも、まだ試用期間中で、正式な社員になっているわけではないのだから仕方がないのかも・・・。

こんなケースについて考えてみたいと思います。


本採用の拒否と解雇

「試用社員」という言葉からすると、あたかもまだ仮の段階で、本採用するかどうかは会社が広く裁量で決められそうな気がするかもしれません。

しかし、試用期間であっても、最初から期間の定めのない通常の雇用契約が成立しており、ただ採用時には十分に判断できない労働者の適格性を判断するために解約権が会社に留保されているのだ、と考えられています。

重要なのは、雇用契約は採用時にすでに成立しているという点です。

したがって、本採用するかどうかという問題は、すでに成立した雇用契約を終了させることができるかどうか、つまり解雇が許されるかどうかという問題なのです。

(なお、試用期間という言葉を用いていなくても、試用期間と評価される場合がある点も注意が必要です→適性判断のために、まずは短い雇用期間で雇います!?~1年の雇用期間と契約の終了~

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解約権の行使ができる場合

では、どのような場合に、留保された解約権に基づく解約が許されるのでしょうか。

裁判例では、本採用の拒否が許される場合とは

「会社が採用決定後における調査の結果により、または使用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に相当であると認められる場合」

としています。

(大変わかりづらい表現ですが、落ち着いて何回かゆっくり読むと分かります・・・)

本採用の拒否は、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ」許されるのです。

客観的合理的理由や社会通念上の相当性の有無については、通常の解雇の場合よりも緩やかに判断されるとされますが、あくまでも解約権が留保された趣旨・目的に照らした合理性、相当性が要求される点に注意が必要です。

(試用期間中の解雇の有効性が問題となった具体例はこちら
試用期間途中に適正欠如をなされた解雇が無効と判断された裁判例
試用期間終了前の解雇~適格性がないことを理由とする解雇~

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本採用の拒否と予告

最後に、本採用を拒否する場合についての予告について少し触れます。

突然解雇がされるということになると、働いている人は大きなダメージを受けることになります。

そこで、解雇するには少なくとも30日前に予告をするか、あるいは30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられています。(詳しくはこちら→解雇と解雇予告手当

しかし、試用期間中については、最初の14日間に限り解雇予告は不要とされています(労働基準法21条4号)。

ただし、あくまでも最初の14日間の間に本採用を拒否する場合に解雇予告が不要とされているだけですので、15日目以降に本採用を拒否する場合には、少なくとも30日前の予告あるいは解雇予告手当の支払いが必要となります。

したがって、15日目以降に解雇予告や解雇予告手当ての支払いがなく本採用を拒否されたという場合、その本採用拒否(解雇)自体については争わないという場合も、予告手当の支払いを求めることができます。

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shita




併せて知っておきたい

試用期間途中に適正欠如をなされた解雇が無効と判断された裁判例

試用期間終了前の解雇~適格性がないことを理由とする解雇~

試用期間の延長~まだまだ本採用はできません!?~

不当な解雇の無効主張と損害賠償請求~解雇は争いたいけれど、職場には戻りたくない!?

解雇を争うための手続きを考える~労働審判という選択~

解雇通知書を渡されたときにまずしなければいけないこと

解雇と解雇予告手当


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