懲戒解雇撤回後の出社命令に応じなかったことを理由とする普通解雇が有効と判断された事例

【判決日 】 令和元年5月17日
【裁判所 】 東京地裁
【解雇種類】 普通解雇
【判決結果】 解雇有効
【雇用形態】 正社員
【職  種】 事務・管理
【解雇理由】 欠勤・遅刻・早退

事案の概要

原告は、不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介等を行う株式会社において財政部長として勤務していた。

平成28年10月17日、原告は、勤務時間中に原告ないし原告の配偶者が経営するマッサージ店の業務を行ったことや、被告会社が買い受ける収益物件について税務上の特例措置の適用が受けられるか否かを誠実に調査すべきであったのにこれを怠ったこと等を理由として懲戒解雇された(以下、「本件第一次解雇」)。

原告は、平成29年2月23日、本件第一次解雇は不当であるとして、その撤回と復職を求めたところ、被告会社は、同年3月11日、原告に対して、本件第一次解雇を撤回するとともに同月17日より出社して勤務をするよう通知した。

また、被告会社は、これに併せて、原告の財務部長職を解き、財務部所属の従業員として稼働するよう命じた。

これに対して原告は、その後も出社せず、度々被告会社から出社を求められても出社に応じなかった。

そうしたところ、被告は、同月31日、就業規則の解雇事由である「正当な理由なく無断欠勤を3日以上におよび、出勤の督促に応じないとき」に該当するとして、原告を普通解雇した(以下、「本件第二次解雇」)。

なお、原告は、原告が出勤に応じなかったのは、以下の点について被告会社に適切な対応を求めていたのに、適切な対応がなされなかったためである等と主張した。

・財務部長職を不当に解職されたこと

・平成29年3月分の賃金が未払いで、給与明細書の交付もなかったこと

・雇用契約締結に際して、原告が精神疾患に罹患している妻のケア等を行う必要に迫られた場合には、これを行えるように配慮することが特別条件として合意されていたのに、反故にされたこと

・被告会社は法人税法違反の違法行為やその疑いのある行為を繰り返していたところ、原告が巻き込まれないようにすることの保証がなされなかったこと

裁判所の判断

(1)労務提供が可能であったかについて

  • 確かに、本件第一次解雇以降、原告が負うべき労務提供義務は、被告会社の受領拒絶の下、日々履行不能となっていたといえる。
  • もっとも、被告会社は、本件第一次解雇の意思表示を撤回し、さらに出社命令を発して労務提供を促していたものであるから、被告において受領拒絶の態度を改め、以後労務が提供されれば確実にこれを受領すべき旨を表示したものと評価でき、労務提供義務は客観的に履行可能となったといえる。

(2)財務部長職の解職について

  • 本件解職は、被告の有する人事権に基づきなされた解雇とは別途の措置であり、そのことから直ちに本件第一次解雇にかかる受領拒絶解消措置として欠けることになるものではない。
  • 人事権の行使が無効となるのは裁量権を逸脱するなど権利の濫用にわたる場合に限られるところ、本件解職は信頼関係が途絶してしまった原被告間の当時の関係性に鑑み、財務関係の要職である財務部長からは解職することとしたものであり、業務上の必要性は相応には肯認でき、原告を害するなどの不当目的に出たものとも直ちには認めがたい。
  • むしろ、原告は、融資について銀行担当者と話し合いをした際、状況次第では貸さぬも親切ということもあるだろうと発言したことを認めており、原告の被告における財務部長としての適格性には不審事由があったといえる。
  • 財務部長とはされていたものの直属部下があったわけではなく、被告会社の代表者直属の財務吏員にとどまっていたこと、解職にかかわらず給与条件は従前どおりともしていたことによれば、その不利益性が著しいということもできない。
  • これらを踏まえると、本件解職措置をとることが裁量的判断を逸脱し、権利の濫用にわたるものとは評価できず、原告による労務の不提供が正当化されるものではない。

(3)本件第二次解雇の合理的理由と社会的相当性について

  • 原告は、被告会社から出社するように度々要請を受けても出社に応じなかったものであり、労務提供義務が雇用契約の本質的な義務であることをも踏まえると、原告には就業規則上の解雇事由である「正当な理由なく無断欠勤を3日以上に及び、出勤の督促に応じないとき」に該当する事由があったといえる。
  • 原告が被告において高額な賃金待遇を受けるなど枢要な処遇を受けていたにもかかわらず一切の出社に応じなかったこと、原告がその要求事項が満たされない限りは労務提供をしないとの態度を強めており、たやすくその意向が改善されるともみられなかった経過があったこと等を踏まえると、本件第二次解雇は社会通念上相当なものと認められる。

(4)原告が主張した他の「出勤に応じなかった理由」について

  • (平成29年3月分にかかる賃金の支払いがなかったことや給与明細書の交付がなかったことについて)原告指摘の点の履行がなかったからといって、労務の提供が客観的に履行困難となるものでもない。
  • (原告が主張した「特別条件」について)雇用契約に特別条件があったこと自体認められない。
  • (「被告会社が繰り返していた法人税法違反行為等に原告が巻き込まれないようにすることの保証がなされなかった」との原告主張について)そのような指摘の点があったからといって、何らの労務提供をもしないことが正当化されることになるわけではない。
  • その他、原告が主張した点(①平成29年4月給与が約定どおり支払われるか確認する必要があった②本件解職にあわせて減給処分が行われていないか確認する必要があった③社会保険の被保険者資格を遡及的に回復させる手続がとられていなかった④就業規則の開示を求めたが開示されなかった⑤仮に出勤をしたとしても、早晩退職に追い込まれると予想した)についても、いずれも不就労を正当化するものではない。

(5)解雇有効

  • 以上によれば、本件第二次解雇は、有効と認められる。

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