基本情報
1 判決日と裁判所
・平成31年3月15日
・東京地裁
2 判決結果
・解雇有効
3 解雇の種類と解雇理由
・普通解雇
・虚偽報告・不当請求
4 当事者に関する事情
【事業内容】
保育園・託児所の企画・運営及び運営受託
【雇用形態】
正社員
【職 種】
事務・管理
【職務内容等】
開発部(保育施設の開設営業及び開園までの契約締結から開園準備等のサポート等を行う部署)において新規開園のための借入業務等を担当
問題とされた労働者の行為等
・原告は、保育園の新規開園のための借入業務のうち、借入の申請を行い受理票を取得する業務を担当していた。
・原告は、4月開園予定の保育園について、借入申請のために必要となる自治体への意見書発行依頼や、借入先に対する借入申込書の提出を何ら行っていなかった。
・担当部署では、8ヶ月間にわたり、合計12回の定例会議を開催し、新規開園業務の進捗確認を行っていたが、原告は、借入業務の進行が遅れているとか、進行できない事情があるといった報告・相談等を一切行っていなかった。
・なお、被告においては、担当職員に対し、実施した業務についての報告を行うほか、外部の関係機関とのメールのやりとりを共有するように平素より指導しており、4月開園予定の新規保育園についても、進捗確認のために柔軟に定例会議を開催することや、外部とのメールの共有について、指示指導を行っていた。
・開園予定の3ヶ月前に必要な手続が何らなされていないことが発覚し、他の金融機関の借入に奔走すること等が必要となった。
裁判所の評価・判断
(1)客観的合理的理由について
・原告は、担当業務である受理票取得に関し、自治体への意見書発行申請の手続すら行っておらず、他の機関に対する問い合わせも行っていないと認められ、就業規則上の解雇事由である「職務怠慢」に該当する。
・定例会議における進捗に問題がない旨の報告や、事実確認のヒアリングにおける説明内容は虚偽の報告であったと認められ、「職務怠慢」「上長の指示を守れない」に該当する。
・上長からの状況報告の指示に対して報告を怠り職務が進んでいないことを隠す報告を繰り返し行っている行為態様からすれば、「早期に改善の見込みがない」と言える他、誠実に職務にあたることそのものができていないから「職員としての適格性がない」にも該当する。
・以上より、解雇の客観的合理的理由がある。
(2)社会的相当性について
・原告の行為によって、保育園の開園が不可能になりうる重大な支障を生じさせ、他の職員に大きな混乱を生じさせた。
・原告の職務懈怠及び虚偽報告の態様は悪質であり、かつ、生じさせた結果は重大である。
・当該案件が進行していないという強い疑いが生じた後のヒアリングにおいても虚偽の説明を継続し、関係機関からの回答による調査結果が出揃った後も虚偽の報告に終始した原告の対応は、上長その他の職員との適切な報告や連絡を前提とした信頼関係のもとで業務を遂行すべき被告職員としての地位に照らし大きな問題であって、業務上の信頼性を失わせるものであるから、解雇を選択するのもやむを得ない。
・被告は、原告に対して複数回にわたってヒアリングを実施し、その聴取内容に基づいて対外的調査を実施するなどの調査を実施の上、経営会議において原告の言い分を聞く機会を設けており、本件解雇の判断を慎重に行った。
・以上によれば、解雇にすることが著しく不合理で社会通念上も相当と是認することが出来ないとは言えず、解雇は有効である。