パワハラ・セクハラを理由に教員に対して行われた懲戒解雇及び普通解雇が無効と判断された事例

【判決日 】 平成31年2月5日
【裁判所 】 大阪地裁
【解雇種類】 懲戒解雇/普通解雇
【判決結果】 解雇無効
【雇用形態】 正社員
【職種  】 教育・保育・その他
【解雇理由】 セクハラ・パワハラ

事案の概要

原告は、高等学校において教員(進路指導部長、理科主任教員、普通科クラス担任)として勤務していたが、他の教員に対するパワハラ行為及び生徒に対するセクハラ行為があったとして、懲戒解雇された。

解雇の理由として被告から主張されたパワハラ行為及びセクハラ行為の概要は以下のとおり。

①オープンキャンパスにおいて、ミュージカルコースの模擬授業が体育館で行われた際、 模擬授業の終了が遅れたたところ、原告(模擬授業の後には合気道部のクラブ見学が予定されており、原告は合気道部の顧問であった)は、体育館に入ってきて、ビデオ撮影をしていた他の教員に対して「遅れるなら、遅れていると言ってもらわないと困る」と大声で叫び、また、その後入試広報室の担当者に対しても同様のことを叫んだ。(以下、「パワハラ行為1」)

②「基礎力診断テスト実施にあたり、ONEWEEKトライアルの利用についてメモ書きで良いので提出してほしい」旨の原告の要請に応じて、国語科主任教員が、国語科教員内で使用していた連絡票を提出した際、原告が「教科会議を行って話し合った上で書いて欲しいという意味だ」と述べたため、同教員が話し合う内容について依頼を書面で出して欲しい旨要望したところ、原告は、「何で俺が書いたもん出さんとあかんのか」「国語科の主任として仕事をしていない」「失格だ」などと興奮し大声で怒鳴りつけた。(以下、「パワハラ行為2」)

③原告は合気道部の顧問であったところ、部員であった女子生徒に対して、臀部を触る、20センチ以内に顔を近づける、「彼氏はおるん?」「彼氏とどこまでした?」等の発言をする等合計7項目にわたるセクハラ行為をした。(以下、「セクハラ行為」)

なお、被告(学園)は、予備的に、生徒に対する上記セクハラ行為及び傷害行為(合気道の部活動中に新技をかけて、右肩から上腕部に腱板損傷の傷害を負わせた行為)があったことを理由に普通解雇も行い、その効力を主張したため、普通解雇の効力も争点となった。

裁判所の判断

(1)懲戒解雇の効力

  • (パワハラ行為1及び2が、就業規則に定められた懲戒解雇事由である「詐欺・窃盗・暴行・脅迫その他これに準ずる行為」に該当する旨の被告主張に対して)原告は、他の教諭らに、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知していないから、原告の言動が「脅迫」に当たるとはいえない。
  • (パワハラ行為1及び2のように)大声で怒鳴る行為が、「詐欺」「窃盗」「暴行」「脅迫」といった刑法犯に準ずる行為と認めることもできない。
  • したがって、パワハラ行為1及び2は、懲戒解雇事由である「詐欺・窃盗・暴行・脅迫その他これに準ずる行為」に該当しない。
  • (被告がセクハラ行為に対する懲戒処分の根拠として主張した)セクハラ防止規程は、「処分の内容については、事象に応じ理事長が判断する」と定めているところ、就業規則では、懲戒処分について懲罰委員会の意見を聞いて理事会でこれを行う旨規定しているから、セクハラ防止規程の「処分」に懲戒解雇処分が含まれていると解することはできず、セクハラ防止規程を懲戒解雇の根拠規定とみることは出来ない。
  • (セクハラ行為が、就業規則に定められた懲戒解雇事由である「私生活上の違法行為・・・であって、学園の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為」に該当する旨の被告主張に対して)被告が主張するセクハラ行為は、学校において生徒に対して行ったとされているものであるから、「私生活上の違法行為」には該当しない。
  • 就業規則においては、解雇の懲戒処分該当者に対しては文書による弁明の機会を与える旨規定されているが、原告に対して文書による弁明の機会は与えられていないから、就業規則上の手続きを履践せずに行われた瑕疵がある。
  • 以上より、本件懲戒解雇は無効である。

(2)普通解雇の効力

  • (セクハラ行為の被害を受けたとする女子生徒の証言について)①転科を認めさせ留年を回避すべく虚偽の供述を行う動機がないとはいえないこと、②被害内容を記載したというLINEのメモが実際に存在する的確な証拠がないこと③法廷において、セクハラ行為の時期や状況についてすぐに答えられず、質問者の誘導に従って回答している場面も見受けられたこと等を踏まえると、全幅の信用を認めることは困難である。
  • (傷害行為について)女子生徒の負傷が原告から新技を掛けられたためではあるとは認めがたく、仮にそうであるとしても、「傷害」すなわち、故意に暴行を加えて負傷させたとは評価できないし、これによって文化祭の演武への参加に支障が生じたともいえない。
  • (主張されたセクハラ行為の多くについて、そのような事実があったとは認められないか、セクハラ行為とは評価できないとし)後ろ回り受け身の練習をしたある1日に、生徒の補助を行うに際して臀部を触ったという限度では認められるが、あくまでも補助を行う際の出来事で故意に性的意図をもって触ったとまで認めることはできない。
  • 「彼氏はおるん?」「彼氏とどこまでした?」「ちゅーした?」「今日調子悪いけど生理か?」「女の子は子宮に気をつけなあかん」との発言が仮にあったとすれば、女子生徒が不快に感じたであろうことは想像に難くないが、かかる発言と上記2件(負傷の件と、受け身練習の際に臀部を触ったという件)の事実があることをもって、労働者としての地位を失わせる以外の何らかの処分をもって自戒の機会を与えることなく、直ちに解雇にまで踏み切ることは、原告が教師という立場にあることを踏まえても、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。
  • よって、本件普通解雇は無効である。

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