医療法人の人事課職員に対してなされた勤務態度・勤務成績の不良を理由とする普通解雇が有効と判断された事例

【判決日 】 平成31年3月26日
【裁判所 】 東京地裁
【解雇種類】 普通解雇
【判決結果】 解雇有効
【雇用形態】 正社員
【職種  】 事務・管理
【解雇理由】 成績不良・能力不足/勤務態度不良・協調性欠如

事案の概要

原告は、病院経営等を行う社会医療法人社団において、平成15年5月から期間の定めのない社員として勤務を開始し、総務課、後に人事課に所属していた。(なお、平成21年11月には課長に昇進したが、平成22年12月に課長代理に降格となり、平成26年9月には一般職に降格となった)

ところが、平成29年10月、勤務態度または勤務成績が不良であるとして普通解雇されたため、解雇の効力を争って提訴した。

裁判所の判断

(1)客観的合理的理由及び社会的相当性の有無

  • 原告は、平成29年3月頃までに、人事課において月初の優先業務とされていた給与計算業務をほとんど行わなくなり、原告の従事する業務量が著しく少なくなっていたばかりか、上司から指示された業務に従事することを断るなど、仕事に誠実に取り組もうとする姿勢や意欲が欠如していた。
  • 原告は、勤務時間中に、私物の新聞・雑誌等の閲読、インターネットの利用、居眠り、コンビニへの外出などの業務とは無関係の私的な行為を平然と行うことが常態化していた。
  • 原告は、事務部長等から、上記のような勤務態度について、面談を通じて繰り返し注意・指導を受けていたが、新聞・雑誌の閲読については、業務に関係している情報を収集しているなどと弁解したり、給与計算業務等については自分の担当業務ではなく、担当業務の割り振りの問題であるなどと述べるなど、これを真摯に受け止めようとする姿勢に乏しく、その勤務態度を改めなかった。
  • 以上のような状況において、被告の他の職員の不満も蓄積していた。
  • これらの事実関係に照らせば、原告について
    ・「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、職員としての職責を果たし得ないと認められたとき」
    ・「協調性に著しく欠け,注意指導しても改善の見込みがないと認められるとき」
    ・「軽微な懲戒事由又は服務規律違反を繰り返し,改悛の情が見られず改善の見込みがないと認められるとき」
    のいずれにも該当していたといえ、本件解雇については、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であったと認めることができるから、有効である。
  • (勤務地や職種の変更等の措置を試みるべきであったという原告の主張に対して)原告において、仕事に誠実に取り組もうとする姿勢や意欲が欠如しており、すでに降格の措置が執られていたことや、本件解雇の時点で原告の年齢が59歳であったことに鑑みれば、被告において、原告の勤務地や職種の変更等の措置を試みることなく本件解雇に至ったことが、解雇権の濫用に該当するとは認め難い。

【参考】被告が証拠として提出した動画の証拠能力について

  • 民事訴訟法は、自由心証主義を採用し、一般に証拠能力を制限する規定を設けていないから、違法収集証拠であっても、それだけで直ちに証拠能力が否定されることはないというべきであるが、当該証拠を採用することが訴訟上の信義則に反するといえる場合には、当該証拠の証拠能力が例外的に否定されると解される。
  • (7ヶ月もの間、出社から退社までの全ての時間にわたり、原告のみに焦点をあてて鮮明な動画を撮影したもので、原告に対する人格権(プライバシー権)侵害の程度が著しく高いから、証拠能力を否定されるべきであるという原告の主張に対して)本件動画は、執務室における原告の勤務状況や面談の場面を客観的に記録することを目的に撮影されたものであるし、その撮影対象は、原告が被告に対して秘匿していたものでもなく、本件動画を撮影した方法が著しく反社会的な手段によるものであった認めることもできないから、これを証拠として採用することが訴訟上の信義則に反するとはいえず、その証拠能力は否定されない。

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