基本情報
1 判決日と裁判所
・令和元年5月28日
・東京地裁
2 判決結果
・解雇有効
3 解雇の種類と解雇理由
・懲戒解雇
・業務命令違反/欠勤・遅刻・早退
配転命令と解雇
労働者が配転命令に従わないで就労を拒否する場合にも、解雇の問題が生じてきます。
この場合、配転命令自体に効力がなければ、解雇にも効力は認められません。そのため、まず配転命令の有効性が問われます。
使用者は、人事権の一環として労働者の職務内容や勤務地を決定する権限を持っており、配転命令は、この権限に基づいて出されます。
ただし、雇用契約において勤務地や職務内容が限定されているのであれば、これを超えた配転命令を行うことはできません。
また、このような限定がない場合でも、配転命令が嫌がらせ目的であったり、著しい不利益を与えるものであるなど、配転命令権の濫用となる場合には、効力は認められません。
さらに、配転命令に効力が認められる場合でも、解雇の要件を満たすかは別途問題になります。配転命令に応じない理由やその期間の長さなどが考慮されることになります。
ここでは、警備業務などを行う会社で働く労働者が、配転命令に従わず就労拒否を続けたことなどを理由に行われた懲戒解雇の有効性が争われた事例について見ていきます。
事案の概要
当該労働者は警備員として勤務していました。列車内で乗務員を警護する業務に従事していた際、駅構外のセンターに入る際には制服を外から見えるよう着用するよう複数回指示を受けましたが、これに従いませんでした。
その後、当該労働者は、列車内で乗務員を警護する業務から百貨店警備隊に配置転換され、百貨店における警備業務を命じられましたが、3ヶ月にわたって、これに応じず、欠勤したところ、懲戒解雇されるに至りました。
裁判所の判断
配転命令の効力
裁判所はまず、就業場所や業務内容が列車内での乗務員警護業務に限定されるとの合意があったかを検討し、そのような合意は認められないと判断しました。
その上で、以下の点を指摘し、本件配転命令は権限の濫用には当たらず、有効であるとしました。
・原告がセンターに入る際、制服を外から見えるように着用するよう指示されたにもかかわらず、合理的な理由なくこれに反抗していたため、警備業務の注文者との関係を考慮して、他の業務に配転する業務上の必要性があったこと。
・配転命令後の賃金その他の労働条件は、以前の労働条件と比較して客観的に不利益なものではなかったから、本件配転命令が「不当な動機目的をもってなされた」とか、「通常甘受するべき程度を著しく超える不利益を負わせるもの」とは認められないこと
懲戒解雇の効力
裁判所は、懲戒解雇の効力について、原告が服装について受けた被告の指示に複数回違反した行為や、配転命令を拒否して被告から繰り返し命令を受けても就労を拒み続けた行為は、就業規則上の懲戒事由に該当するとした上で、
「原告は、業務上の命令・指示に対する不服従をかたくなに繰り返し、3ヶ月以上の長期にわたり就労拒否を継続したもので、これをやむをえない行為であったと解すべき事情はない」
として、本件懲戒解雇は有効であると結論づけました。