業務遂行上の問題点(成績不良等)を理由に降格及び減給処分が行われた後になされた解雇について有効と判断された事例

【判決日 】 平成31年3月25日
【裁判所 】 東京地裁
【解雇種類】 普通解雇
【判決結果】 解雇有効
【雇用形態】 正社員
【職種  】 事務・管理
【解雇理由】 成績不良・能力不足/勤務態度不良・協調性欠如

事案の概要

原告は、日本を含む全世界に信者のいる宗教法人(被告)において、施設や不動産の管理を行う施設部に所属し、日本、韓国、グアム、ミクロネシア連邦における不動産購入、売却、賃貸、運用の責任者の地位に就いていた。

平成26年12月、原告は、プロジェクト管理やチーム管理の課題を指摘されてスキル改善のための訓練を受けることとなり、その後の「観察期間」も終了したが、平成28年12月、業務遂行上の問題点を理由に降格及び減給処分を受けた。

平成29年6月、原告は、被告から、合意退職をしない場合には解雇する旨を通知され、これに対して考慮期間の延長を求めたが、受け入れられず、以下の就業規則の解雇事由に該当するとして普通解雇されるに至ったため、降格減給処分の無効及び解雇の無効を主張して提訴した。

・勤務成績または職務遂行能力が不良であるとき、就業に適しないと認められたとき。
・勤務態度が不良で注意しても改善しないとき
・職員が協調性を欠いていると教会がみとめたとき、または他の従業員の業務思考に悪影響を及ぼしていると教会が認めたとき
・その他教会の職員として適格性がないと教会が認めたとき

裁判所の判断

(1)降格減給の効力について

  • 原告の人事評価は平成24年までは概ね良好であったが、平成25年6月頃から勤務成績や業務遂行能力、勤務態度の問題が顕在化するようになり、原告が責任者を務めていた不動産課のプロジェクト達成率は低水準で推移し、韓国における大規模マスタープランプロジェクトも進行が停滞するようになった上、同プロジェクトの進捗状況等に関する情報共有の場でもある会議にもほとんど出席しておらず、また、部下との間でも信頼関係を築くことができず、各種プロジェクトの進行に支障が生じていた。
  • このような状況の下、被告は、原告に対して業務遂行上の課題を指摘し、スキル改善の訓練を行ったところ、同訓練における原告の成績及び態度は比較的良好であり、その後の観察期間も終了した。
  • しかし、かかる勤務状況は長続きせず、原告は、所属長らへの報告や相談を懈怠したり、担当業務を外部業者や部下に任せ入りにするなど業務に対する積極性を欠いていた上、会議をリードしたり、新たな知識や技能を習得する意欲に乏しいばかりか、申請業務を長期間放置し、勤怠管理や出張についても内部規定を遵守しないことがあり、プレゼンテーションで悪ふざけをして他人に不快な思いをさせるなど、およそマネージャーとしての責務を果たしていない状態であった。
  • このような原告の問題が被告の業務に支障を生じさせていることは外部業者からも看取できるほどであり、原告の平成25年以降の人事評価は極めて低評価であった。
  • 本件降格減給は、約1割の減給に留めるものであって、原告の上記問題性に鑑みると、人事権の行使としてやむを得ず行われたものと評価することができる。
  • 本件降格減給は、原告の勤務成績や業務遂行能力、勤務態度の問題を理由に、業務遂行能力改善のため種々の方策を施した上で行われたもので、原告を退職させようとする不当な目的に基づくものと認めることはできない。
  • 本件降格減給及びこれに伴う本件異動には組織上及び業務上の必要性が認められ、また、原告がマネージャーとしての能力や適性を備えていているとは認めがたい。
  • 以上によれば、本件降格減給は、人事権の行使としてやむを得ず行われたものであり、人事権の濫用には当たらないから、有効である。

(2)解雇の効力について

  • 原告は、降格減給に伴って行われた異動の3か月後にパフォーマンスを再評価する旨を告知された上で、①施設管理マニュアルの翻訳業務や、②ファシリティマネージャーに対する監査指摘事項の是正訓練、③2018年間計画作成補助業務を命ぜられた。
  • しかし、①については業務内容自体に不平不満を述べて期限内に完了せず、②については、原告の言動が原因でファシリティマネージャーとの信頼関係が築けず訓練が中断するなどして期限内に終了できず、③については、情報処理や分析を行う能力が欠けていたため、実質的な補助業務を行うことができなかった。
  • 原告は、被告から業務遂行能力改善等のための種々の方策を施されていたにもかかわらず、異動後の業務についても、勤務成績や業務遂行能力、勤務態度に問題が多く、降格減給や異動をされた理由を真摯に受け止めることなく、むしろ人事部が違法なアプローチをしているなどと主張していたことに照らすと、解雇前に行われたファシリティマネージャーに対するアンケートで比較的高評価がされていたことを考慮しても、原告を解雇したことはやむを得ないといえる。
  • 本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとはいえず、権利の濫用に当たらないから有効である。

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