基本情報
1 判決日と裁判所
・令和元年5月31日
・東京地裁
2 判決結果
・解雇有効
3 解雇の種類と解雇理由
・普通解雇
・成績不良・能力不足
成績不良と解雇
成績不良での解雇が問題となるときに、どのような経緯及び趣旨で雇用されるに至ったのかは一つのポイントとなります。例えば、即戦力としての役割を期待されて雇用された場合と、そのような前提がない場合とでは、求められる能力の水準や、それに達しない場合に求められる指導のあり方にも当然に違いが生じてきます。
ここでは、即戦力のプレイングマネージャーとしてシステム開発部署で雇用された労働者に対する普通解雇の効力が問題となった事例について見てみます。
事案の概要
本件で解雇の対象となった原告は、弁護士法人でシステム開発業務に従事していた労働者です。
当該法人は、業務の根幹となるコンピューターシステムを新しいシステムに移行するために、専任のシステム開発責任者を雇用することとし、原告を採用しました。
本件労働契約上、原告には、即戦力たるプレイングマネージャーとして、マネージング能力、プログラミング能力及び教育指導能力が求められていました。
ところが、裁判所の認定によると、原告には、次のような問題がありました。
・スキルチェックの課題について成果物を完成させることができず、また、課題において求められている目的や内容を正しく理解していないと思われる対応をとるなど、本件労働契約で求められる能力のうち、プログラミング能力を欠いていた。
・開発グループ長に就任した当日、職員に対し、担当業務の報告を同日中に行うように求めるという必要性、相当性を欠く業務命令を行い、これに苦言を呈した職員を非難する報告を週報に記載するなどした。
・このような業務態度や、従業員らへのアンケート結果によると、原告は、本件労働契約で求められるマネージメント能力を欠いていた。
裁判所の判断
裁判所は、以下のような点を指摘して、本件解雇には客観的合理性があり、社会通念上も相当と評価できるから、本件解雇は有効であると判断しました。
・本件労働契約契約で求められた即戦力としての各種能力は、短期間の教育訓練等によって一朝一夕に期待された水準を身につけることができるという性質ものではないこと。
・法律事務所という業態の特殊性からすれば、他部署での雇用継続も事実状困難であること。
・被告は、マネージングに関する業務の改善を示唆したり、複数回にわたり合意退職による退職の勧奨を行うなど、可能な範囲での配慮を行っていること。