郵便局に勤める営業インストラクターに対して出張旅費の不正請求を理由に行われた懲戒解雇が有効と認められた事例

基本情報

1 判決日と裁判所
 ・令和2年1月23日
 ・札幌地裁

2 判決結果
 ・解雇有効

3 解雇の種類と解雇理由の分類
 ・懲戒解雇
 ・虚偽報告・不当請求

事案の概要

本件では、郵便局において営業インストラクターとして勤務していた労働者が、約1年半の間に、100回にわたり不正な出張旅費の請求を行い、会社から金員を詐取したとして、懲戒解雇が行われました。

不正な請求とは、具体的には、出張旅費の請求にあたり、「社用車を運転して、会社の給油カードを使ってガソリンを給油したにもかかわらず、公共交通期間を利用したものとして旅費を請求した」、あるいは「クオカード代金が宿泊費に上乗せされた宿泊プランを利用して宿泊し、クオカードを受領していたが、このことを告げずに旅費を請求した」というものです。

請求の中には、「駐車場料金を含めた金額で領収書の発行を受け、旅費を請求したケース」もありました。

旅費等の総額は194万9014円、そのうち不正に受給した金額は52万1400円、不正に受給したクオカードは2万1000円でした。

裁判所の判断

裁判所は、労働者による請求は「会社の金品を詐取したものと評価できる」などとした上で、「法令または会社規定に違反したとき」「業務取扱に関し不正があったとき」という懲戒事由に該当することを認めました。

その上で、懲戒解雇について、次の点を指摘して、これを有効なものと認めました。

・本件非違行為は、使用者との信頼関係を大きく損ねる重大なもので、原告は従業員の地位を継続しえないものとみるほかないこと。

・本件非違行為は、故意に旅行手段や宿泊料金を偽り、容易に判明しえないようになっている点で悪質が高いこと。

・約1年6ヶ月に、100回にわたって繰り返し行われて折り常習性があること。

・不正受給の額も50万円を超え、看過できない規模に及んでいること。

・原告は不正を認めて返納をしたが、行為の悪質性に照らすと、処分を軽減すべきとはただちにいえないこと。

・原告はこれまで懲戒処分歴がなく極めて優秀な業務実績を上げてきたという事情があるが、これによる職務上の地位は、他の職員らに範を示すべきものといえるから、こうした事情を重くみて処分を軽減するのは相当ではないこと。

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