就業規則の競業避止義務規定に効力が認められなかった裁判例

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退職後の競業避止義務が争われた具体例

退職後の競業避止義務について判断された裁判例として平成23年3月4日大阪地裁判決を見てみたいと思います。

これは、各種メッキ加工及び金属表面処理業を営む会社で、メッキの表面処理の仕事についていた従業員が、退職後に、隣接して存在する同業同種の会社に就職したというケースです。

争点の一つとして、退職後の競業避止義務を定める就業規則の規定を根拠に退職金を支払わないことが許されるかという点が問題となりました。

権利の濫用に該当する場合

裁判所は、就業規則で退職後の競業避止義務を定めることについて、「労働者の生計手段の確保に大きな影響を及ぼすことから、その効力については、慎重に判断することが必要」としたうえで

① 競業避止を必要とする使用者の正当な利益の存否
② 競業避止の範囲が合理的な範囲に留まっているか否か
③ 代償措置の有無等

を総合的に勘案し、競業避止義務規定の合理性が認められない場合には、これに基づく使用者の権利行使は権利の濫用として許されないと述べました。

合理性の検討

その上でこのケースでは、

① メッキ加工等の業務内容は,専門的な技術等が必要で、このような業務に従事していた者が他に転職等する場合には,限られた範囲でしか就労の機会を得ることができないと考えられること

② 競業避止義務の期間は1年間と比較的長いこと

③ 退職金は支給されるものの、その額は競業避止義務を課すことに比して十分な額であるか疑問がないとはいえないこと

という点を挙げて、「本件就業規則における競業避止義務規定には合理性があるとはいえない」という判断をしました。

このケースでは、従前働いていた会社と退職後に就職した会社は、単に同業同種だというだけではなく、隣接していて、しかも両社の間には紛争があり訴訟や調停手続きで争っていたという相当シビアな関係にあったようです。

しかし、このような場合でも、労働者が従事していた仕事の内容からすると、競業避止義務を課した場合には、新たな就職が相当制約されてしまい不利益が大きいのに対して、これをカバーするだけの代償措置がないことから、競業避止義務規定の合理性が否定されたといえます。

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