基本情報
1 判決日と裁判所
・令和元年12月20日
・東京地裁
2 判決結果
・解雇有効
3 解雇の種類と解雇理由の分類
・本採用拒否
・勤務態度不良・協調性欠如/業務命令違反
協調性の欠如/業務命令違反と本採用拒否
試用期間における解雇(本採用拒否)は、試用期間が設けられた趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合に有効となる、というのが確立された判例です。
問題は、どのような場合に、「試用期間が設けられた趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる」かですが、ここでは、協調性の欠如や業務命令違反などが問題とされた事例についてみてみます。
事案の概要
本件で問題となったのは、キャンピングカーの製造販売などを行う会社で採用された労働者(以下「原告」)に対して試用期間中に行われた解雇の効力です。
原告は、入社後、製造作業に従事していましたが、
・社有車を運転中に物損事故を起こしたにも関わらず、その場をそのまま立ち去り、会社の報告も行わなかった
・作業日報の作成について指示に従わずおざなりな日報の作成をしていた
などとして、試用期間中に解雇されるに至りました。
裁判所の判断
裁判所は、次のような事実に照らせば、「原告に協調性がないと判断したことはやむを得ないと言える」としました。
・原告が、作業日報の記載方法や記載内容について説明を受けていたにも関わらず、これとは異なる方法で作業日報を作成し、上司等からの指示、指導がなされても改めなかったこと
・被告代表者に対して、会社が社員教育の手法として取り入れていた「原田メソッド」の紹介を辞めるように求め、意見の聞き入れなければ訴える等と告げたこと
また、次のような事実に照らせば、「原告が「報告・連絡・相談」を適切に行うことができないと評価するのもやむを得ないといえる」としました。
・原告が社有車を運転中に物損事故を起こしたにもかかわらず、警察への連絡も、会社への連絡、報告、相談を行わなかったこと
・社有車の損傷が明らかになった後も、会社からの要請があって初めて事故状況の報告を行ったり、現場の調査を行うなど不十分な対応しかとっていないこと
その上で、裁判所は、次の点を指摘して、本採用拒否には客観的合理的理由があり、社会通念上も相当であって有効であると結論付けました。
・業務内容が複数の工程を限られた従業員(9名)で分担して行うものであること
・作業内容が技術的事項にわたるものであって、OJTによる習熟を前提としていること
・したがって、協調性や、適切な報告・連絡・相談の実施は、被告の従業員として求められる適性であること