基本情報
1 判決日と裁判所
・平成31年2月27日
・東京地裁
2 判決結果
・解雇無効
3 解雇の種類と解雇理由
・整理解雇
・経営上の必要性による解雇
事業縮小と解雇
会社がある事業を縮小することに伴って、解雇が行われる場合があります。
これは整理解雇の一種です。労働者側の事情ではなく、会社側の事情に基づく解雇であるため、このような場合には解雇の有効性が厳しく判断されます。
具体的には、次の要件に基づいて、その有効性が判断されます。
・人員削減の必要性があるかどうか
・解雇を回避するための努力が尽くされているかどうか
・解雇対象者の選定基準および選定が合理的であるかどうか
・事前に十分な説明や協議が行われたかどうか
ここでは、勤務場所となっていた駐車場経営からの撤退を理由に、駐車場管理業務に従事する社員に対して行われた解雇が争われたケースについて見ていきます。
事案の概要
原告は、コイン式時間貸駐車場の運営や管理を行う会社で、1年間の有期契約社員として、駐車場警備の業務に従事していました。
しかし、会社がその駐車場の経営から撤退することを理由に、就労開始後約8ヶ月の時点で解雇されてしまいました。
このため、原告は違法な解雇による損害賠償を求めて提訴しました。
裁判所の判断
(1)本件駐車場の経営からの撤退について
裁判所は、まず本件駐車場の経営から撤退することの合理性について、次のように述べ、その合理性を認めました。
・被告の本件駐車場による収入は毎月50万円程度であったのに対し、人件費を含む固定費は毎月130万円を超え、月間粗利はマイナス80万円から90万円であったこと
・駐車料金の値下げ等の経営努力をしても赤字を改善できなかったこと
・これらの点を考慮すると、被告が本件駐車場の経営を断念したことは、経営判断として合理的なものであったということができる。
(2)解雇回避努力義務について
本件において、会社は解雇に先立ち、原告に対して他の駐車場の管理業務の紹介をしていました。
しかし、原告が夜勤に難色を示したため、話合いをしないまま解雇に至りました。
この点について、裁判所は、次のように述べ、会社の対応を批判しています。
夜勤に難色を示した原告との間で、研修の有無や夜勤シフトの回数等について調整をすることのないまま、原告が紹介を断ったものと扱ったことは、性急な判断であったと言わざるを得ない。
また、会社は、他の駐車場の集金やメンテナンス、清掃業務について、年齢や経験を不問とする新たな求人を行っていました。
しかし、この業務を原告に紹介したり、原告に適性があるかどうかの検討も行っていませんでした。
この点についても、裁判所は指摘し、期間途中の解雇を回避する努力としては不十分であったとしました。
結論として、裁判所は、本件解雇にやむを得ない事由があるとは認められず、本件解雇は無効であると判断しました。
部門の縮小や廃止に伴って解雇が行われる際、当該部門で勤務する従業員の解雇があたかも当然であるかのように進められるケースがあります。
しかし、この事例からも分かるように、部門の縮小や廃止に合理性がある場合でも、当該部門の従業員を他の業務に配置できないかどうかは、慎重に検討される必要があります。