基本情報
1 判決日と裁判所
・平成31年3月25日
・東京地裁
2 判決結果
・解雇有効
3 解雇の種類と解雇理由
・普通解雇
・成績不良・能力不足/勤務態度不良・協調性欠如
成績不良と解雇
成績不良による解雇の有効性を判断する際には、解雇に至るまでに、問題点の改善のためにどのような機会が与えられたかが一つの大きなポイントになります。
教育指導や配置転換、懲戒処分など、他に手段を尽くしても改善が見られないときには、解雇もやむを得ないという判断に傾いていきます。
では、具体的にどのような経緯を経た場合に解雇が有効と判断されるのでしょうか。
ここでは、ある宗教法人で働く労働者に対して行われた、成績不良などを理由とする解雇の有効性が争われた事例について見ていきます。
解雇理由となった行為と解雇に至る経緯
原告は、不動産の購入や売却、賃貸、運用の責任者を務めていた労働者です。
裁判所の認定によると、原告には次のような業務遂行上の問題点がありました。
・所属長らへの報告や相談を怠り、担当業務を外部業者や部下に任せきりにするなど、業務に対する積極性を欠いていた。
・会議をリードしたり、新たな知識や技能を習得する意欲に乏しく、申請業務を長期間放置し、勤怠管理や出張についても内部規定を遵守しないことがあった。
・プレゼンテーション中に悪ふざけをして他人に不快な思いをさせる出来事があった。
これらの問題を理由に、原告は降格および減給処分を受けました。
さらに、降格・減給に伴って行われた異動の3か月後、パフォーマンスを再評価する旨を告知された上で、新たに翻訳業務や年間計画作成補助業務等が命じられました。
しかし、新たな業務でも、以下のような問題点が認められました。
・施設管理マニュアルの翻訳業務では、業務内容自体に不満を述べて、期限内に完了しなかった。
・ファシリティマネージャーに対する監査指摘事項の是正訓練では、原告の言動が原因でファシリティマネージャーとの信頼関係が築けず、訓練が中断して期限内に終了できなかった。
・年間計画作成補助業務では、情報処理や分析を行う能力が欠けていたため、実質的な補助業務を行えなかった
解雇の有効性についての裁判所の判断
裁判所は、上述の経緯を認定した上で、次のように述べ、本件解雇は権利の濫用に当らず有効であると判断しました。
・原告は、被告から業務遂行能力改善のために種々の方策を施されていた。
・それにもかかわらず、異動後の業務についても、勤務成績や業務遂行能力、勤務態度に多くの問題が見られた。また、降格減給や異動をされた理由を真摯に受け止めることなく、むしろ人事部に対する不満を述べていた。
・これらの点に照らすと、解雇前に行われたファシリティマネージャーに対するアンケートで比較的高評価がされていたことを考慮しても、原告を解雇したことはやむを得ないといえる。