不当な内定取り消しと損害賠償請求

不当な内定取り消しに対して何を主張出来るのか

内定取り消しは、会社が自由に行えるものではありません。

内定取り消しの理由とすることができるのは、

  1. 採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できない事実であって
  2. これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるもの

に限られます。この点は、こちらの記事で詳しく説明しました。
内定取り消しとその理由~内定取り消しは許されるか

問題は、このような事由がないにもかかわらず、不当にも内定取り消しがされたという場合に、会社に対して何を請求できるのかという点です。

内定取り消しの無効主張

正当な取り消し事由のない内定取り消しは、法律的には無効ですので、あなたには、依然として労働者としての地位があることになります。

そして、予定された勤務開始日以降も働き始めることができていないのは、あなたが勤務することを会社が拒んでいるからに過ぎません。

そこで、会社に対しては、あなたが労働者としての地位があることを主張するとともに、予定されていた勤務開始日以降の給料を支払うように請求する、というのが原則的な主張内容になります。(加えて、後述する損害賠償請求を一緒に行うことも考えられます)

裁判所があなたの主張を認めて、労働者としての地位の確認や給料の支払いを命ずれば、あなたは、その間の給料を支払ってもらった上で、その会社で働くことが出来るようになります。

なお、内定取り消しの効力を争っている間に他の会社で働き始めた場合に、給与の支払いがどうなるかについては、以下の記事の中で解説していますので参考にしてください。
解雇を争っている間に別の仕事をして良いか

内定取り消しと損害賠償請求

もっとも、内定取り消しの場合には、一度も勤務を開始しないままのトラブルであることから、「こんな会社で働きたくない」という思いを持つ方も少なくないと思います。その場合、労働者としての地位の主張等はせずに損害賠償請求のみを行うことを考える方もいるかもしれません。

通常の解雇の争いの場合でも、このように復職を希望せずに、金銭的な賠償のみを希望するケースがありますが、内定取り消しの場合はなおさらその傾向は強いと思います。

ただし、損害賠償のみを求めるという場合には、問題点が二つあります。

一つは、損害賠償が認められるためには、単に内定取り消しが無効であるというだけではなく、損害賠償が認められるに足る違法性(言い換えれば悪質性)が必要になるという点です。

つまり、内定取り消しが無効かどうかと、これについて損害賠償請求が認められるかどうかは一応別の問題ですので、損害賠償が認められるためには一段高いハードル(悪質性)が求められる可能性があるのです。

これは一般の解雇についても同様です。以下の記事を参考にしてください。
不当解雇の無効主張と損害賠償(慰謝料)請求

不当解雇の無効主張と損害賠償(慰謝料)請求

2012.01.27

また、もう一つの問題は、損害として何を主張できるかという点です。

不当な取り消しによって被った精神的苦痛に対する慰謝料というのが、すぐに思い浮かぶ損害ですが、一般的に裁判所が認める慰謝料の金額は、おそらく多くの人が思うほど高い水準ではありません。

したがって、これらの問題点もよく考えた上で、どのような主張をしていくのかをよく検討する必要があります。

慰謝料額について判断した具体例から

なお、実際の具体例でみると、例えば、内定取り消しとその理由~内定取り消しは許されるかでも採り上げた、生活関連情報誌などを編集出版する会社から採用内定を受け当時の勤務先を退職した原告が、その後に内定を取り消されてしまった事案(平成15年6月30日東京地裁判決)では、内定取り消しの結果7ヶ月間の失業状態におかれた事などから、その間の給与相当額である165万円が慰謝料として認められています。

また、同じく転職の事案で、コンピュータの周辺機器の設計・開発・製造及び販売等を行う会社から内定が出された後、前職の勤務時代に関して良くない噂がある等の理由で内定を取り消されたという事案(平成16年6月23日東京地裁判決)では、慰謝料として100万円が認められていますが、慰謝料の金額を決定するに際して考慮した事情として以下の点が指摘されています。

  1. 内定が出たために、他の就職内定先や就職活動先を断り、また前の会社に退社届を提出して身辺整理を行っていたこと
  2. 採用内定取り消しに伴って再度の就職活動を余儀なくされ、次の会社に就職が決まるまでの2ヶ月間、不安定な立場におかれたこと
  3. 本件訴訟の提起を弁護士に依頼し弁護士費用を要したこと
  4. 不当な内定取り消しにあったときにどのような主張をするかを考える上で、参考にしていただければと思います。

    その他、内定取り消しの問題はこちらをご覧ください。
    内定取り消しとその理由~内定取り消しは許されるか

    内定取り消しとその理由~内定取り消しは許されるか

    2012.03.17

    内定後に生じてくる問題として参考になりそうな記事をピックアップしましたので、こちらもご覧ください。
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    解雇と解雇理由~どんなときに解雇が許されるのか
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