無期契約と同視できるのはどのような場合か

労働契約法19条によって、一定の条件を満たす有期労働契約については、会社が更新を拒絶するには「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要となります。

「一定の条件を満たす有期労働契約」とは、具体的には、次の二つの類型が定められています。

  1. 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇い止めが期間の定めのない契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの(1号)
  2. 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるもの(2号)

問題は、どのような場合に、この二つの類型に該当することになるのか、です。

ここでは、1号の「過去に反復更新された有期労働契約で、その雇い止めが期間の定めのない契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの」について具体例を見ていきたいと思います。(2号についてはこちらをご覧ください。更新の期待に合理的理由があるのはどのような場合か

東芝柳町工場事件

まずは、この類型が定められることになった元となっている最高裁の判例(東芝柳町工場事件・昭和49年7月22日)を見てみます。

この事案は、契約期間を2ヶ月とする基幹臨時工として雇用され、5回ないし23回にわたって更新された労働者らに対する雇止めが問題となったケースでした。

裁判所は

  1. 従事する仕事の種類、内容の点において本工(正規従業員)と差異がなかった
  2. 基幹臨時工は総工員数の平均30パーセントを占めていた
  3. 基幹臨時工が二か月の期間満了によつて雇止めされた事例はなく、自ら希望して退職するものの外、そのほとんどが長期間にわたつて継続雇用されていた
  4. 採用に際して、会社側に、長期継続雇用、本工への登用を期待させるような言動があった
  5. 契約は、5回ないし23回にわたつて更新を重ねた
  6. 必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続がとられていたわけではなかった

という事実関係を前提にして、本件各労働契約は、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたとの判断を示しました。

この判断を類型化したのが、労働契約法19条1号です。

労契法19条1号に該当するとされた例

では実際に、労働契約法19条1号に該当すると判断された例をいくつか見てみます。

まずは、レンタカー及びカラオケ店を営む会社において、当初は6ヶ月ごと、後に2ヶ月ごとに契約更新がされ、合計22年以上勤務してきたアルバイト従業員に対する雇止めが問題となった事案(津地裁平成28年10月25日判決)です。

裁判所は

  1. 22年以上の間、6ヶ月ごとまたは2ヶ月ごとに契約更新を繰り返したこと
  2. 業務内容は、6か月あるいは2か月で終了するような期限が決められた業務ではなく、勤務時間帯が夜間であるというだけで、正社員とそれほど変わらない業務内容であったこと
  3. 原告が雇用されていた間、意に反して雇止めにされた従業員はいなかったこと
  4. 更新手続は形骸化しており、雇用期間満了後に更新手続が行われることもあったこと

を指摘した上で、当該有期労働契約は、期間の定めのない労働契約とほぼ同視でき、労働契約法19条1号に該当すると判断しました。

この判断は、控訴審である名古屋高裁(平成29年5月18日判決)でも維持されています。

もう一つ、NTTのグループ会社からコールセンター業務を受託した会社において、15年7ヶ月にわたって、期間1年または3ヶ月の雇用契約を約17回更新し、電話番号案内業務に従事してきたパートタイム社員に対する雇止めが問題となった例(横浜地裁平成27年10月15日判決)をみてみます。

裁判所は

  1. 従事してきた電話番号案内業務は、会社の受託業務の中でも長く受託されてきた業務であり、恒常的・基幹的業務であること
  2. 有期雇用社員が社員全体の約9割を占めていること
  3. 所定労働時間は8時間で、一般の常用労働者とほぼ変わらない勤務条件で勤務していたこと
  4. 約17回の更新を経て勤続年数が15年7ヶ月に及んでいること
  5. 更新手続は、契約期間終了前後にロッカーに配付されるパートタイマー雇用契約書に署名押印し、これを提出するというごく形式的なものであったこと

を指摘した上で、当該雇用契約は労働契約法19条1号に該当すると判断しています。

労契法19条1号に該当しないとされた例

これに対して、労働契約法19条1号に該当しないとされた例も見てみます。

まずは、航空会社において、約9年間にわたって9回の契約更新を繰り返し、乗務員として勤務してきた契約社員に対する期間途中の解雇及び雇止めが問題となった事案(大阪地裁平成29年3月6日判決)です。

裁判所は

  1. 契約更新の際に契約内容が一部変更されることがあったこと
  2. 契約更新の際には、新たな契約書を交付し、契約内容に変更があれば、その内容について告知した上、署名を求めるという方法で契約更新の意思を確認していたこと
  3. 契約期間の開始日までに原告に契約書が提示されなかったことがあるものの、その回数は1回のみであったこと
  4. (以上からすると)更新手続が形骸化していたとまでは認められないこと
  5. 正社員である乗務員と比較すると、人事体系や賃金体系が異なっており,乗務する便も分けられていこと

を指摘した上で、労働契約法19条1号には該当しないと判断しています。(ただし、2号については該当すると判断しています。この点はこちら≫更新の期待に合理的理由があるのはどのような場合か

もう一つ、5年半にわたって5回の更新を繰り返し、ドラッグストアで医薬品・化粧品等の販売業務に従事してきた準社員に対する雇止めの効力が問題となった事案(東京地裁平成28年1月27日判決)を見てみると、裁判所は、

  1. (契約書に「契約更新 満了1ヶ月前までに協議」等と記載されるなど)更新時に双方が異議をとどめる余地も残されており、更新が5回,継続期間が5年半に及ぶことや,他の準社員につき雇止めとされた例が少ないとしても,それだけでは更新手続が形骸化しているとまではいえないこと
  2. 業務内容についても、期間を定めて雇用される準社員は、人事労務等の管理権限を有していないなど、期間を定めないで雇用される正社員と差異がないということもできないこと

を指摘して、労働契約法19条1号には該当しないと判断しています。(ただし、更新が5回、継続期間が5年半に及んでいること等から労働契約法19条2号には該当すると判断しています)

以上で見たとおり、1号と2号を比較すると、1号に該当するためのハードルの方が高く「1号には該当しないが、2号には該当する」といえる場合も多いためが、1号に該当しない理由の説明については比較的あっさりしたものが多い印象を受けます。

ご自分の契約が労働契約法19条1号で保護されるものかどうかを考える上で参考にして頂ければと思います。

2号についてはこちらを参考にしてください。
更新の期待に合理的理由があるのはどのような場合か

1号に該当するとなると、次に、客観的合理的理由や社会的相当性の有無が問題になりますが、この点については、以下の記事をご覧ください。
雇止め理由と成績不良・勤務態度不良

雇止めに対する法規制全般についてはこちらで説明しています。
雇い止めはどのようなときに許されるか

有期雇用を無期雇用に転換させる方法があります。
契約社員が無期雇用になるために何をすべきか

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