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不正競争防止法における営業秘密と情報の有用性




不正競争防止法と営業秘密

退職後の秘密保持義務違反が問われる場面では、会社に提出した秘密保持の誓約書の違反や会社の就業規則の違反が問題となる場合がありますが、これとは別に不正競争防止法違反が問題となる場合もあります。

この場合には、ある情報が不正競争防止法における「営業秘密」に該当するのかということがよく大きな問題になります。

不正競争防止法における営業秘密とは何かでも説明しましたが、ある情報が不正競争防止法における営業秘密に該当するためには

  1. 秘密として管理されていること
  2. 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること
  3. 公然と知られていないこと

であることが必要です(不正競争防止法第2条6項)。

ここでは、このうち「事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること」(②)について採り上げたいと思います。

有用性が肯定された例

事業活動に有用かどうかは、秘密として管理されているかどうか(①)という問題(参考≫営業秘密となる顧客情報とは?)に比べると比較的わかりやすく、事業活動の内容や、当該情報の内容及び事業活動における利用方法等に照らして有用性の判断がされています。

例えば、モデルやタレントのマネジメントをする会社が、同社を退職後同業の会社を立ち上げた元従業員に対して、営業秘密である登録モデルの個人情報を使用したとして損害賠償請求をしたケース(平成26年4月17日東京地裁判決)では、

原告は、モデルやタレントのマネジメント及び管理等を業とする株式会社であり、顧客からモデル募集等の注文があった際に、登録モデル情報を使用すれば、顧客の注文に即した候補モデルを短時間で効率的に選別することができるのは明らかであるから、登録モデル情報は、原告の事業活動に有用な営業上の情報である

として有用性が認められています。

また、人材派遣会社が、元取締役らに対して、営業秘密である派遣スタッフ名簿及び派遣先名簿を競業関係にある会社に開示したとして、名簿の廃棄や損害賠償等を請求した事案(平成15年11月13日東京地裁判決)では

  1. 人材派遣業において派遣スタッフの管理名簿や派遣先の事業所リストは派遣先企業のニーズに合致した人員を派遣するために必要不可欠なものであること
  2. 人材派遣業者は、これらの名簿やリストを通じて必要な情報を管理することにより派遣先企業の求める資質を有する労働者を派遣することが可能となるものであり、それを通じて、派遣先企業からの社会的な信用を得るとともに、利益を得ることができること
  3. これらの名簿やリストを通じての情報の管理が、人材派遣業者間での競争において有利な地位を占める上で大きな役割を果たすこと

を根拠に、有用性が肯定されています。

有用性が否定された例

これに対して、有用性が否定された例(平成11年7月19日東京地裁判決)を見てみます。

この事案は、食品や食品原材料の輸入販売を行う会社が、退職後、競業会社に勤めた元取締役らに対して、営業秘密の開示の差止や損害賠償等を求めたケースですが、会社は

「油炸スイートポテトについて、真実の原価、利益率は秘密にしながら、取引相手にはより低い利益率を示し、企業内で極秘に利益を獲得する営業システム」

が営業秘密であると主張しました。

これに対して、裁判所は、

有用性の有無については、社会通念に照らして判断すべきである

とした上で、極秘に二重に帳簿を作成しておいて、営業に活用するという抽象的な営業システムそれ自体は社会通念上営業秘密としての保護に値する有用な情報と認めることはできないと結論づけています。(このような取引はは原告独自の経営方法と認めることもできないとして公知性も否定されています)

似たような判断は、平成14年2月14日東京地裁判決でも示されています。

この事案は、公共土木工事の積算システムのコンピュータソフトウエアの販売等を行う会社が、退職後に同種の会社を立ち上げた元従業員らに対して、不正に取得した営業秘密を利用して営業活動を行っているとして損害賠償等を求めたケースですが、会社は

「公共土木工事に関する埼玉県庁土木部技術管理課作成の平成11年度4月1日時点の土木工事設計単価に係る単価表の単価等の情報のうち非公開とされているもの」

を営業秘密として主張しました。

これに対して、裁判所は、不正競争防止法において営業秘密として保護されるために有用性が求められる趣旨について

事業者の有する秘密であればどのようなものでも保護されるというのではなく,保護されることに一定の社会的意義と必要性のあるものに保護の対象を限定するということ

とした上で、このような趣旨に照らすと

犯罪の手口や脱税の方法等を教示し、あるいは麻薬・覚せい剤等の禁制品の製造方法や入手方法を示す情報のような公序良俗に反する内容の情報は、法的な保護の対象に値しないものとして、営業秘密としての保護を受けないものと解すべき

としました。

そして、本件情報は,地方公共団体の実施する公共土木工事につき、公正な入札手続を通じて適正な受注価格が形成されることを妨げるものであり、企業間の公正な競争と地方財政の適正な運用という公共の利益に反する性質を有するものと認められるから、営業秘密として保護されるべき要件を欠く、と結論づけています。

つまり、主観的に事業活動に有用であれば全て保護されるというわけではなく、あくまでも社会通念に照らして客観的に保護すべき有用性があることが必要な点に注意が必要です。

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