雇止め理由と成績不良・勤務態度不良

雇止めと「客観的合理的理由」「社会的相当性」

労働契約法19条によって、一定の条件を満たす有期労働契約については、会社が更新を拒絶するには「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要となります。(詳しくはこちら≫雇い止めはどのようなときに許されるか

問題は、どのような場合に、雇止めの「客観的合理的理由」や「社会的相当性」があると言えるのかです。

雇止めの理由としては、大きくいって成績不良や勤務態度不良などの労働者側の事情が問題となる場合と、業績悪化による人員削減などの会社側の事情が問題となる場合に分けられます。

ここでは、前者の、労働者側の事情が問題となる場合について、具体的な事例をもとに、どのような場合に「客観的合理的理由」や「社会的相当性」が認められることになるのかについて見ていきたいと思います。

なお、有期労働契約の雇止めにおいて、どのような場合でも「客観的合理的理由」や「社会的相当性」が必要となるわけではありません。どのような場合にこれらの条件が必要となるのかについては以下をご覧ください。
無期契約と同視できるのはどのような場合か
更新の期待に合理的理由があるのはどのような場合か

客観的合理的理由・社会的相当性が否定された裁判例①勤務態度

まず、ドラッグストアで医薬品・化粧品等の販売業務に従事してきた準社員に対する雇止めの効力が問題となった事案(東京地裁平成28年1月27日判決)を見てみます。

このケースでは、雇止めの理由として、当該労働者が、ある同僚を無視して注意を受けても改まらなかったり、アルバイト従業員に対してパワハラ的言動に及ぶなど勤務態度に問題があったという点が挙げられました。

これに対して、裁判所は、当該労働者の言動が一因となって店舗の同僚との間であつれきが生じ,同僚から不平不満が述べられるなどの問題が生じていたことは認めながらも、

  1. 当初の注意が行われた後には注意・指導が行われていないこと
  2. その後の問題行動として指摘されている「人事権がないのにパート従業員を準社員に昇格させるよう要求した」という点については、意見を述べることまで制限される理由はなく、また、アルバイト従業員の勤務時間を勝手に変更したという点については裏付けがないこと

を指摘した上で、いずれにせよ再度の注意・指導等を経ないまま勤務態度改善の見込みがないとして雇用継続を困難とするに足りる事情があるとはいえないとして、当該雇止めは、客観的に合理的な理由がなく、また、社会通念上相当であると認められないと結論づけました。

このように労働者の勤務態度が問題とされる場合には、改善の見込みがないと言えるのかという観点から、注意指導の過程がどのようなものであったのかが重要な要素になります。

この点については、例えば、直接には期間途中での解雇が問題となったケースですが、あわせて期間終了時の雇止めの可否も問題となった事案(東京地裁平成28年4月15日判決)で、会社が「他の従業員から指導、注意を受けても業務を改善しなかった」ことを問題としたのに対して、裁判所が、

解雇が労働者に与える不利益が大きいことに照らすと、会社としては、当該労働者から個別に事情を聴取して原因を検証し、その内容に応じて、適切な改善策を検討して経過をみたり、理由を詳細に記載した書面による警告や譴責、減給等の懲戒処分を実施して改善の機会を付与するなどの慎重な対応をとるべきであり、このような対応をとることなく意欲や態度が不良であり就業に適しないと即断することは適切なものとはいい難い。

と指摘している点も参考になります。

客観的合理的理由・社会的相当性が否定された裁判例②業務命令違反

業務命令違反が問題とされた例として、バイク便による医薬品の配送納品業務を営む会社で勤務していた契約社員らに対する雇止めが問題となった事例(東京地裁平成28年7月20日判決)を見てみます。

この事案では、会社が土曜日勤務を命じたのにこれに応じなかったことが雇止めの理由として挙げられました。

これに対して、裁判所は、「業務命令として土曜日勤務を命じたにも関わらず、これを拒否した場合には、業務命令違反として客観的に合理的理由があり、社会通念上も相当であると認められる余地がある」としながらも

  1. 土曜日勤務の要請が、あくまでも従業員に対する任意の協力を求めるものにすぎないのか、会社の業務命令であり、これを拒否した場合、明らかな業務命令違反に問われるものであるのか判然としないこと
  2. そのため、原告らも土曜日勤務に応じないことが業務命令違反の状態にあるとの明確な認識を持っていなかったこと

を指摘して、業務命令違反の事実自体を認めることができないとしました。

そして、会社としては、雇止めという手段を採る前に、正式に業務命令を発令し、これに違反した場合は、注意・指導を行い、時には懲戒処分に処するなどの手続きを検討するべきであって、このような手続きを経なかった本件雇止めには,客観的合理的理由や社会的相当性は認められないと結論づけました。

業務命令違反の意味や、仮に業務命令違反があった場合に会社がとるべき対応を考える上で参考になります。

なお、業務命令がどの範囲で認められるかについてはこちらも参考にして下さい。
業務命令を拒否することはできるか

客観的合理的理由・社会的相当性が肯定された裁判例

今度は、客観的合理的理由や社会的相当性が肯定された裁判例を見てみます。

まず、雇止め時に退職届の提出を求められたら知っておきたいことでも採り上げた、ガスメーターの嘱託検針員に対する雇止めの効力が争われた例(大阪地裁平成28年12月22日判決)です。

裁判所は

  1. 労働者が、会社から貸与されたバイクを少なくない回数にわたって私的に利用し、その際、私的利用も含めて貸与された給油カードで給油することがあったこと
  2. ドライブレコーダーからSDカードを抜いて隠蔽を図り、長期間にわたって走行カードに事実と異なる記載をしていたこと
  3. 少なくとも1年以上の長期にわたって、勤務時間中に他の事業所で業務を行っていたこと

を認定した上で、これらの行為は、会社との信頼関係を著しく損なうものであって、雇止めは客観的合理的理由や社会的相当性を有すると結論づけました。

故意の非違行為についてはやはり厳しく評価されています。

もう一つ、客観的合理的理由や社会的相当性が肯定された裁判例として、大阪地裁平成27年11月30日判決を見てみます。

これは、電気、空調、プラント、電力等の設備工事全般を営む株式会社の従業員として、インドネシアに設立された会社に勤務していた労働者に対して、「業務遂行が会社の求めるレベルに達していない」ことを理由に行われた雇止めの効力が問題となった事案です。

裁判所は、問題となっている有期契約は、客観的合理的理由や社会的相当性が必要となる、労働契約法19条1号2号の契約には当たらないとしましたが、「仮に2号にあたるとしても」という形で、予備的に客観的合理的理由や社会的相当性の有無についても検討しています。

裁判所は

  1. 海外の工事現場において施工管理するという業務内容に鑑みれば、現地のローカルスタッフと円滑な意思疎通を行うことが必要不可欠であったこと
  2. ところが、原告は、現地のローカルスタッフに工程遅れ等に関して怒鳴るなどし、その結果、現地のローカルスタッフと円滑な意思疎通ができない状態にあったこと
  3. 原告は、上司から注意を受けた際に、自らの行為を顧ることなく、激怒し、職場放棄して帰ってしまうという行動に及んでいるところ、職場放棄するということは到底許されない行為であること
  4. 工事の発注元担当者から、ほかの担当者の同席を求められたこと
  5. 議事録等の誤字脱字が多く、注意を受けても改まらなかったこと
  6. 酔余の上、取引先の担当者に間違い電話をかけ、そのことで上司が謝罪しなければならない事態に至ったこと
  7. を指摘して、「原告の勤務態度には種々の問題があったといわざるを得ない」とし、雇止めには客観的合理的理由や社会的相当性があったと結論づけました。

    最初に紹介したドラッグストアでのケース(客観的合理的理由や社会的相当性が否定された例)と比較すると、同僚との軋轢が業務に差し障りがでるような深刻な事態にまで至っていたかという点の評価や注意指導に対する労働者の反応といった点で大きな差があり、こうした点が結論を分けるポイントの一つになっていると思われます。

    雇止めに対する法規制全般についてはこちらで説明しています。
    雇い止めはどのようなときに許されるか

    「客観的合理的理由」や「社会的相当性」が必要となる場合の具体例については以下の記事をご覧ください。
    無期契約と同視できるのはどのような場合か
    更新の期待に合理的理由があるのはどのような場合か

    有期雇用を無期雇用に転換させる方法があります。
    契約社員が無期雇用になるために何をすべきか

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