退職勧奨を断ったら、配置転換を命じられた・・・・

辞めるつもりはないと言ったら・・・

退職勧奨を断り続けていたら、配転命令が下されるという場合があります。
辞めさせたいための嫌がらせで配転命令を出したのではないかと思えるようなケースです。

配転命令については、

・そもそも雇用契約の内容として、勤務地や仕事内容が限定されているのではないか

といった観点からの検討や、

・仮に会社に配転命令権があっても、その濫用にあたらないか

といった観点からの検討が必要です。(→配転命令を拒否できる場合、できない場合

ここでは、退職勧奨を拒否したところ、営業部課長の職を解かれ、倉庫での業務を命じられた労働者が、配転命令の効力を争った裁判例をご紹介したいと思います(大阪高裁平成25年4月25日判決)。

営業課長の職から倉庫業務に

この事案で、原告は、医薬品やプラスチック等の化学工業製品を中心に取り扱う専門商社に入社後、10年にわたって営業職に従事し、配転命令当時には営業課長の職にありました。

ところが、2ヶ月ほどの期間に3度にわたって退職勧奨を受け(その間、営業の担当業務から外される措置をとられました)これを拒否したところ、営業課長の職を解かれ、倉庫業務(商品運搬業務)への異動を命じられたのです。

異動にともない、基本給が減額となり各種手当も減った結果、給与が半分以下に減額されるという事態になりました。

裁判所の認定によれば、このような退職勧奨の背景には、退職勧奨が始まる直前に新しく社長に就任した代表者と原告との間の折り合いがもともと悪かった等の事情もあったようです。

配転命令は無制約に出来るわけではない

裁判所は、まず、使用者の配転命令権は無制約に行使できるものではなくこれを濫用することはできないとした上で

1 業務上の必要性がない場合
2 業務上の必要性がする場合であっても
 2-1 当該配転命令が他の不当な動機や目的をもってなされたものであるとき
 2-2 労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等

の特別の事情があれば濫用になるが、そうでない限りは濫用にならないという一般論を述べた上で、この「特別の事情」の有無について次のように判断しました。

業務上の必要性について

1 適性及び能力

会社からは、原告は、営業担当の総合職としての適性及び能力を欠いていたという主張がされていました。

しかし、裁判所は、原告が十分な営業成績をあげられていないのは、割り当てられた業務が他の営業部員と異なり新規開拓業務だったことによるものであるから、原告に営業担当の総合職としての適性及び能力が欠けていたとはいえないとしました。

2 倉庫業務への配置の適否

裁判所は、

①倉庫業務は新たに人を配置するほどの業務量はなかったこと
②原告は車の運転をすることができないため本来倉庫業務に不可欠な商品の運搬業務に従事していなかったこと
③大卒の学歴を有するものを運搬職に採用した例はなかったこと

等を指摘した上で、倉庫業務に配置する必要性は乏しかったとしました。

3 業務上の必要性はなかった

そして、裁判所は、1,2に照らすと、原告を倉庫業務に配置転換すべき業務上の必要性は乏しかったと結論づけました。

不当な動機・目的について

裁判所は

①原告は営業担当の総合職としての適性を欠いておらず,従前も営業成績を特段問題視していなかったのに突然退職勧奨がされたこと
②その後2ヶ月にわたる退職勧奨を拒否したために配転命令がなされたこと
③配置転換先には配置転換すべきほどの業務量はないこと
④賃金を大幅に低下させるものであること

を指摘した上で、会社は、原告が退職勧奨を拒否したことに対する報復として退職に追い込むため,又は合理性に乏しい大幅な賃金の減額を正当化するために配転命令をしたのであって、本件配転命令は業務上の必要性とは別個の不当な動機及び目的によるものであるとしました。

通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無

裁判所は、原告は営業担当の総合職としての適性を欠いていなかったのに、配転命令によって賃金を2分の1以下に大幅に減額されたことを指摘して、「社会通念上,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもの」としました。

配転命令は無効

裁判所は、以上を踏まえると、本件配転命令は権限を濫用したものとして「無効」と結論づけています。

なお、本件では、営業課長の職を解く降格人事であることから、降格処分の効力についても争われましたが、これも人事上の裁量権を逸脱濫用したものとして無効とされています。

配置転換をちらつかされたときの参考に

この事案は、裁判所も指摘しているとおり、配置転換先において原告がやるべき業務がほとんどないこと(原告は目の持病等で車の運転ができないといった事情もありました)や給与が半分以下にされるなど、「なんと乱暴な・・・」と思ってしまう配転命令で、退職勧奨の後にこうした配転命令が出された経緯を踏まえて、裁判所が権利の濫用と結論づけたのも当たり前という気がします。

配転命令については、会社が裁量を持つ部分がどうしてもあるため、たとえば退職勧奨の際に配置転換をちらつかされたりすると、どう対応すべきか悩む方もおられると思いますが、そのような退職勧奨後の配置転換が無効となった例として参考にしていただければと思います。

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併せて知っておきたい

配転命令を拒否できる場合、できない場合

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退職勧奨が違法となるとき~退職届けを出す前に知っておきたいこと

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