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内定者研修を欠席したらどうなるか




内定者研修の法的な意味

多くの企業で新卒の内定者に対して入社前の研修が実施されます。

入社後の順調な勤務開始に向けて、内定が出されてから入社までの期間を利用して十分な準備を行うという意味では意味のある研修ですが、ときに、この内定者研修を巡ってトラブルとなってしまう場合があります。

内定者からしてみると、内定をもらい入社を控えていることもあって、心理的によりものを言いづらい立場にありますが、そもそもこの内定者研修が法的にはどのような位置づけにあるのかについて、実際に裁判で争われた例(東京地方裁判所平成17年1月28日判決)をもとに見てみたいと思います。

内定者研修への欠席と内定取消

この裁判は、雑誌の出版等を目的とする会社から内定が出された原告(大学院生)が、その後、違法に内定を取り消されたとして損害賠償を請求した事案です。

このような内定取り消しがどのような場合に許されるのかについては、こちらの記事で説明していますので、ご覧ください。
内定取り消しとその理由~内定取り消しは許されるか

内定取り消しとその理由~内定取り消しは許されるか

2012.03.17

事実の経過で大きなポイントとなったのが内定者研修でした。

この会社では内定者に対して、2週間に1回、2~3時間程度の研修が行われており、原告は、内定にあたり、この入社前研修に参加しなければならないとの説明を受けて同意をしていました。

しかし、実際に入社前研修が始まると、研修への参加及び課題の負担が大きく大学院での研究活動(論文作成)との両立が難しくなってきたことから、原告は指導教官を通じて会社に対して研修の免除を申し出た上で、研修を欠席しました。

もっとも、会社から入社直前の研修には参加するように求められ、そうでなければ入社を取りやめ、中途採用試験を再度受験してもらうことになると告げられたため、原告はやむなく直前研修には参加したのです。

ところが、直前研修終了後に、原告は、会社から、研修が遅れていることを理由に、試用期間を6ヶ月に延長するか博士号取得後中途採用試験を受け直すかのいずれかを選択するように再三求められ、これを拒否した原告は、結局入社には至りませんでした。

内定者研修に参加する義務はあるか

本件では、そもそも会社による内定取り消しだったのか、原告が内定を辞退したのかという点から問題となりましたが、裁判所は「内定取り消し」であったとした上で、内定者研修に参加する義務について、以下のように述べました。

  1. 使用者が、内定者に対して、本来は入社後に業務として行われるべき入社日前の研修等を業務命令として命ずる根拠はない
  2. 効力始期付の内定における入社日前の研修等は,あくまで使用者からの要請に対する内定者の任意の同意に基づいて実施されるものである
  3. 使用者は,内定者の生活の本拠が,学生生活等労働関係以外の場所に存している以上,これを尊重し,本来入社以後に行われるべき研修等によって学業等を阻害してはならないというべきである
  4. 入社日前の研修等について同意しなかった内定者に対して、内定取消しはもちろん、不利益な取扱いをすることは許されない
  5. 一旦参加に同意した内定者が、学業への支障などといった合理的な理由に基づき、入社日前の研修等への参加を取りやめる旨申し出たときは、これを免除すべき信義則上の義務を負っている

つまり、内定者研修は、あくまでも任意に行われるもので、これに同意しないことによって不利益な取り扱いをすることは許されないし、仮に同意した場合でも学業への支障などの合理的な理由により参加を取りやめることは許されるべきとしたのです。

内定取り消しの無効

そして、本件では、原告が、入社前研修と課題消化が研究の支障となることを理由に研修の免除を申し出た時点から研修の参加義務はなくなったとしました。

また、会社が原告に対し、直前研修に参加しないのであれば、入社を取りやめ、中途採用試験を再度受験してもらうことになると告げて、直前研修への参加を迫り、原告がやむなくこれに同意した点についても、「公序良俗に反し違法」として、これに対する原告の同意は無効としました。

その上で、原告が、内定者研修に欠席したこと等を理由とする内定取り消しは無効と結論づけたのです。

内定者研修は、有効に行われることによって会社にとっても内定者にとっても有益な助走となりうるものですが、当然のように行われる内定者研修も、突き詰めてその法的な性質を考えていくと、実はこのような問題があるのです。

内定前後に生じるその他の問題について

内定取り消しが許される場合は限定されるため、内定自体が成立しているかどうかもよく争いになります。この点については次の記事をご覧ください。
内定は成立しているか?

内々定の場合どうなるかについては以下の記事を参考にしてください。
内々定の取り消しについて損害賠償を認めた事例

働き始めた後はこんなことが問題になります。
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