更新の期待に合理的理由があるのはどのような場合か

雇止めの法理と二つの契約類型

労働契約法19条によって、会社が更新を拒絶するのに「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要となる契約類型としては

  1. 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇い止めが期間の定めのない契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの(1号)
  2. 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるもの(2号)

の二つがあります。(詳しくはこちら≫▼雇い止めはどのようなときに許されるか

ここでは、2号の「契約更新を期待することについて合理的な理由があるものであると認められるもの」について具体例を見ていきたいと思います。(1号についてはこちらをご覧ください≫無期契約と同視できるのはどのような場合か

日立メディコ事件・龍神タクシー事件

まずは、この類型が定められることになった元となっている最高裁の判例(日立メディコ事件・昭和61年12月4日)を見てみます。

この事案は、契約期間を2ヶ月とする雇用契約を5回更新してきた労働者に対する雇止めが問題となったケースでした。

裁判所は、

  1. 季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであったこと
  2. 五回にわたり契約が更新されていたこと

という事実関係を前提に、雇止めにあたって客観的合理的や社会的相当性が必要となるという判断を示しました。

これは契約の反復更新がされていた事例ですが、契約の反復更新がされておらず、初回更新時の雇止めが問題となった事例としては、龍神タクシー事件(大阪高裁平成3年1月16日判決)があります。

この事案では、「臨時雇」のタクシー運転手に対する 1 年間の雇用契約期間満了時の雇止めが問題となりましたが、裁判所は

  1. 臨時雇運転手は、自己都合による退職者を除いて例外なく雇用契約が更新されてきたこと
  2. 更新の際には、改めて契約書が作成されているものの、必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続きをとっていたわけでもないこと(数ヶ月あるいは数日ずれこむこともあったこと)
  3. 本雇運転手に欠員が生じたときは臨時雇運転手の中から登用して補充していたこと

等の事実を指摘した上で、当該雇用契約は、労働者が雇用継続を期待することに合理性があるものというべきと判断しました。

これらの判断を類型化したのが、労働契約法19条2号です。

労契法19条2号に該当するとされた例

では実際に、労働契約法19条2号に該当すると判断された例をいくつか見てみます。

まずは、無期契約と同視できるのはどのような場合かで、1号該当性が否定された例としてとりあげた、航空会社で乗務員として勤務してきた契約社員に対する期間途中の解雇及び雇止めが問題となった事案(大阪地裁平成29年3月6日判決)です。

裁判所は、1号には該当しないとしましたが、2号には該当すると判断しています。

その理由として裁判所が指摘しているのは

  1. 契約が約9年間にわたって、9回更新されてきたこと
  2. 契約書には更新があり得る旨明記されていたこと
  3. 特定の路線における乗務員は基本的に契約社員のみであるなど、契約社員の乗務員が一定の継続的役割を果たしていたこと
  4. 原告よりも勤続年数が長い(多くの更新がされている)契約社員が大半であったこと

等の事情です。

もう一つ、地方公共団体が設置する施設の管理運営を行っている財団法人において勤務していた嘱託職員らに対する雇止めが問題となった事案(平成28年6月1日富山地裁判決)を見てみます。

裁判所は、

  1. 有期契約とされたのは、指定管理者に指定されなかった場合に余剰人員について雇用調整をせざるを得ないことを考慮したものであること
  2. 更新手続きにおいて、勤務継続の意思確認や辞令書等の交付があり、自動的に本件各労働契約が更新されてきたわけではないこと
  3. からすると、1号には該当しないとしながら

  4. 担当していた業務は、施設の指定管理者である限り、恒常的に必要なものであったこと
  5. 本件各労働契約が5回更新され,雇用の通算期間も約6年に及んでいたこと
  6. 更新ごとに新たな労働契約書の作成、面接の実施等がされておらず、更新手続は簡易なものであったこと
  7. 求人票に「定年制あり一律60歳」「1年間の雇用契約を締結しますが、勤務成績により契約更新を行います」と記載されていたり、採用面接時に「警察の世話になったりしない限り,定年まで働ける」旨説明する等、原告らに雇用継続の期待を持たせる言動等があったこと

を指摘して、原告らが更新を期待することについて合理的な理由があったとして、2号に該当すると判断しました。

労契法19条2号に該当しないとされた例

今度は、労働契約法19条2号に該当しないとされた裁判例をいくつか見てみます。

まずは、コーヒー・軽食等の店舗内提供・テイクアウト販売を行う店舗を経営する会社で、3ヶ月の雇用契約を14回及び19回(間に1年4ヶ月間の空白期間あり)更新してアルバイトをしてきた大学院生に対する雇止めが問題となった事案(東京地裁平成27年7月31日判決)です。

裁判所は、原告が店長の指揮命令下で時間帯責任者としての職責を長期間果たしてきた事実は認めながらも、

  1. 契約更新手続は、店長がアルバイトと個別に面談を行い,更新の可否について判断をした上で、契約書を交付し、その作成を指示し契約更新を行っていることから、更新鉄続きが形骸化していたとは言えないこと
  2. 契約更新の実態として、一般的には店長から雇止めされるアルバイトは少ないものの、アルバイトの採用条件が最低で週2日程度、1回あたり4時間以上とされていたところ、原告はこれを下回る勤務頻度が常態化しており、勤務頻度の少なさを理由として雇止めされてもおかしくない立場にあったと客観的には評価されること
  3. を指摘して、原告の雇用継続の期待は主観的な期待にとどまり、2号には該当しないと結論づけました。

    最後に、労働契約法19条2号に該当しないと判断された例として、東京地裁平成28年9月14日判決を見てみます。

    この事案は、1年間の嘱託雇用契約を締結して、中国語の通信添削講座に関する事務等に従事していた労働者に対して、2回の契約更新の後に行われた雇止めが問題となった事案です。

    嘱託契約には、自動更新条項が付されていて、実際、特に新しい雇用契約書を作成することもなく、特段の手続きを経ずに自動更新されてきたという事情がありましたが、裁判所は、

    1. 従事していた業務内容は、臨時的な性格が強いものが含まれていたこと/li>
    2. 本件契約は「嘱託雇用契約」とされ、定年後の継続雇用の場合の他、専門家に対して臨時的に仕事を依頼する場合に通常使われる形式がとられていたこと
    3. 原告の出勤日は原則として週3日と、特別に非常勤のような形がとられていたこと
    4. これまで被告においては同様の雇用を行ったことがなかったこと
    5. 上記からすれば、本件雇用契約が長期間にわたって続くことまで予定されていたとはいえず、本件雇用契約に期間を定めることは自然であるといえること
    6. 雇用契約が更新されたのは2回、雇用継続期間は3年にとどまっており、反復して更新されたとも、契約期間が長期にわたっているともいえないこと
    7. 更新時に新たな雇用契約書こそ作成されていないものの、更新手続が形骸化していたとも認定できず、次年度も当然に更新されると期待できるような状況であったとまでは認められないこと
    8. を指摘して、労働契約法19条2号には該当しないと結論づけました

      2号に該当するかどうかが実際の事例でどのように判断されているかを知る上で参考にして頂ければと思います。

      1号に該当するかについてはこちらを参考にして下さい。
      無期契約と同視できるのはどのような場合か

      2号に該当するとなると、次に、客観的合理的理由や社会的相当性の有無が問題になりますが、この点については、以下の記事をご覧ください。
      雇止め理由と成績不良・勤務態度不良

      雇止めに対する法規制全般についてはこちらで説明しています。
      雇い止めはどのようなときに許されるか

      有期雇用を無期雇用に転換させる方法があります。
      契約社員が無期雇用になるために何をすべきか

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