「勝手に働いていただけだから残業代は払わない」という会社の主張は正しいか?

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勝手に働いていただけ

未払い残業代の請求に対する会社の主張として

「残業をしろと言ったわけではないのに、勝手に遅くまで働いていただけだから、払う必要などない」

という主張がされる場合があります。

業務量が多くやむを得ずに遅くまで残業をしていた労働者にしてみれば、感情を逆なでされるような主張ですが、よくある主張です。

黙示の指示

しかし、「今日は残業して」と明確に指示が出ていなければ残業代請求権が発生しないというわけではありません。

たとえ残業について明示の指示がされていない場合でも、実態として労働者が残業をして働いている事実あり、それを会社が認識しているのに特段何も言わずにそのままにしていたのであれば、実質的には残業の指示があるのと変わらないということができます。

したがって、このような場合は、残業の「黙示の指示」があったとして残業代請求をすることができます。

例えばタイムカードを押しているのであれば、会社は残業の事実を当然に認識していたことになりますし、日報に残業の記載をして提出していたと言うのであれば、会社は残業の事実を把握していたといえます。

それを後になって、「勝手に働いただけ」と主張することは許されません。

参考となる裁判例①

平成3年4月22日名古屋地裁判決は、建築及び土木の設計、施行等を行う会社で、建築工事現場管理者として雇用されていた従業員が会社に対して未払い残業代の支払いを求めた事案ですが、裁判所は、請求を認めるにあたって、以下のように述べています。

時間外労働といえども、使用者の指示に基づかない場合には割増賃金の対象とならないと解すべきであるが、原告の業務が所定労働時間内に終了し得ず、残業が恒常的となっていたと認められる本件のような場合には、残業について被告の具体的な指示がなくても、黙示の指示があったと解すベきである。

参考となる裁判例②

もう一つ、平成13年6月28日大阪高裁判決をとりあげます。

この事案は、銀行の行員が未払い残業代の支払いなどを求めたケースですが、争点の一つとして、始業時間(午前8時35分)前の金庫の開扉等を行う勤務について、労働時間と評価できるのかが争われました。

この点について裁判所は

①勤務する当該支店においては、男子行員のほとんどが8時過ぎころまでに出勤していたこと

②銀行の業務としては金庫を開きキャビネットを運び出し、それを各部署が受け取り、業務の準備がなされるところ、金庫の開扉は、当初の支店長時代には8時15分以前になされ、その後の支店長時代になってもその時刻ころにはなされていたと推認されること

③このような運用は,被告の支店において特殊なものではなかったこと

④始業に行われる融得会議については、男子行員については事実上出席が義務付けられている性質の会議と理解できること

などを指摘して、

①午前8時15分から始業時刻までの間の勤務については、黙示の指示による労働時間と評価でき、原則として時間外勤務に該当すると認めるべき

②融得会議など会議が開催された日については、それが8時15分以前に開催された場合には、その開始時間以降の勤務はこれを時間外勤務と認めるべき

としました。

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