残業代請求「管理職だから払わなくてもいい」という会社の主張は正しいか?

管理職だから・・・

未払い残業代の請求に対して良く出される会社側の主張の一つに「管理職だから残業代は払う必要はない」というものがあります。

平成20年に、「管理職である」ということで残業代が支払われていなかったマクドナルドの直営店店長について残業代の支払いを命じた判決が出た際には、マスコミでも大きく取り上げられ、このような「名ばかり管理職」の問題が世間に知られるようになりましたが、いまだに管理職と残業代の関係について誤った理解に基づいて運用されている例をたくさん見かけます。

「管理監督者」に払わなくても良い理由

確かに、法律上「管理監督者」については、労働時間等に関する規制は及ばず、その結果、残業代も支払う必要はないことになっています。

なぜなら、「管理監督者」については、取り扱う仕事の内容からして、一般の労働者と同じような時間規制をすることはなじまない側面があります。

また、一般の労働者と違って出退社についてある程度自由に決められるため、労働時間に関する規制をしなくても問題はないと考えられるからです。

管理監督者に該当するのかどうか

ただし、問題は、どのような場合にこの「管理監督者」にあたるのかどうかです。

上に書いたような、管理監督者について労働時間等に関する規制が及ばない理由からすると、管理職の肩書さえつけば、あるいは役職手当が支払われてさえいれば、当然に管理監督者として残業代を支払わなくてもいいということにはなりません。

「管理監督者」にあたるかどうかは、

① 実際の職務内容や与えられた権限
② 出退社等についての自由度
③ 賃金面での待遇

などに照らして、労働時間に関する規制をしなくても問題はないと言えるだけの実態があるかどうかという観点から判断されます。

その結果「管理監督者」と言えないのであれば、たとえ管理職の肩書が付いていたとしても、労働時間の規制は及ぶため、残業代も支払われなければいけないのです。

予備校の校長と管理監督者

管理監督者に街頭するかどうかについて判断した近年の裁判例として、横浜地裁平成21年7月23日を見てみたいと思います。

この事案は、小学生、中学生、高校生を対象とする受験予備校を経営する会社で働き、最終的に校長及び校長代理を務めた原告らが未払い残業代の支払いを求めて提訴したケースです。

会社が、原告らは管理監督者の地位にあったため残業代を支払う必要はないと主張したため、原告らが管理監督者の地位にあったかどうかという点が争点の一つになりました。

管理監督者の判断基準

裁判所は、管理監督者とは「労働条件の決定その他労務管理につき雇用主と一体的な立場にあるものをいう」とした上で、これに該当するかどうかは

① 雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を有するか

② 自己の出退勤について、自ら決定しうる権限を有するか

③ 管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において時間外手当及び休日手当が支給されないことを十分に補っているか

などを実態に即して判断すべきと述べました。

一般論としては特段目新しいものではありませんが、この基準に従って、このケースで具体的にどのような判断がされたかを見てみます。

管理監督者該当性の否定

裁判所は、校長を務めていた原告については

① 校長会議及び責任職会議への出席,時間割作成,配属された職員に対する第一次的査定等を行っていたものの

② 校長としての定事項は,すべて会社代表者が決裁して決定し,校長会議及び責任職会議では,役員会議,経営会議等で決定された経営方針,活動計画を伝達されるだけであり,校長が被告代表者の決裁なしに当該予備校としての方針を決めたり,費用を出捐したり,職員の採用,昇格,昇給,異動を決定することはなかったこと

③ 他の職員と同様,出退勤時間が定められ,勤務記録表により出退勤時間を被告に管理されていたこと

④ 年収が400万円代前半から半ばで残業代の支払いを受けている講師の中には、これに匹敵する年収を得ていたものもいること

から、管理監督者には当たらないとの判断をしました。

また、校長代理を務めいていた原告についても、ほぼ同様の点を指摘して管理監督者の地位に当たらないとの判断をしています。

監理監督者に該当するかどうかについて、ポストの名称や形式的な権限によってではなく「実態に照らして判断する」ということの具体例として参考になる裁判例です。

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